米帝の対中貿易戦争激化は侵略戦争・世界戦争の道だ 安倍の改憲=大軍拡阻止しよう

週刊『前進』08頁(3001号08面01)(2019/01/01)


米帝の対中貿易戦争激化は侵略戦争・世界戦争の道だ
 安倍の改憲=大軍拡阻止しよう

(写真 黄色いベストを着用して「マクロン退陣!」を叫び、怒りのデモに立つフランスの労働者人民【12月15日 パリ】)

リーマン・ショック10年新たな危機爆発が現実に

 2008年9月15日のリーマン・ショック=世界大恐慌の爆発からすでに10年が過ぎた。
 歴史を振り返ると、1929年大恐慌の場合は30年代危機を経てちょうど10年後の39年9・1のナチス・ドイツのポーランド侵攻をもって第2次世界大戦が勃発した。日帝はすでに1930年代から31年9・18柳条湖事件、37年7・7盧溝橋事件などを強行し中国侵略戦争を激化させてきており、41年12・8の真珠湾奇襲により大戦はアジア・太平洋戦争へも拡大した。
 第2次大戦は、経済的・政治的には、帝国主義国間の為替戦争(通貨安競争)と貿易戦争(関税引き上げ競争)の激化から、世界経済の分裂化・ブロック化に一気に進み、経済の軍事化と大軍拡競争の激しい進行をもって不可避となった。同時に階級闘争的には、スターリン主義の戦略的な誤りと裏切り、スペインなどでの武装反革命を決定的契機として、独仏米をはじめとする世界革命の波が敗北させられ、世界戦争を阻止できなかった。
 「米国第一」を叫び保護主義と貿易戦争を真っ向から振りかざす、2016年11月の米帝トランプの登場は、今次大恐慌下の世界情勢を一変させた。それは中国スターリン主義を最大のターゲットとする形での帝国主義間・大国間の争闘戦への本格的突入であり、これをもって世界は事実上、新たな帝国主義侵略戦争・世界戦争の歴史的過程についに踏み込んだと言える。
 米帝による中国と日欧帝国主義への貿易戦争は、「勝者」もなく、経済的には「共倒れ」が不可避なような破滅的行為だ。しかも中国への貿易赤字問題や「技術移転強要」「知的財産侵害」など、さまざまな理由をつけた貿易戦争は、すでに単なる経済的な争闘戦ではない。

米副大統領ペンス演説が中国に衝撃

 トランプの貿易戦争は安保=軍事と一体である。現実に米帝は、中国の基軸的国策である「中国製造2025」や「一帯一路」構想、南中国海の軍事拠点化なども、すべて問題だとしている。その典型的な表れこそ、18年10月4日の米副大統領ペンスの演説だ。ペンスは貿易=経済のみならず中国の軍事、外交、人権、海洋、領土問題などすべてを容赦なく全面批判し、「断固たる対応をとる」と宣言した。これは中国にとって大衝撃となり、ある外交関係者は「もはや経済問題ではない。体制と体制の衝突だ」と危機感をつのらせている。
 基軸帝国主義として没落にあえぎ、すでに世界支配もままならなくなった米帝は、自動車やIT関連をはじめ巨大な中国市場をめぐる経済的な分割戦=争闘戦を激化させる一方で、中国スターリン主義がさらに巨大化し、いずれ世界支配をめぐる「覇権」を米帝と争うことは絶対許さないと、事実上の対中戦争を開始しているのだ。
 17年12月の「米国家安全保障戦略」は中国をロシアとともに「修正主義勢力」「現状変更勢力」と規定し、事実上の主敵=打倒対象と宣言した。トランプが発動する米中貿易戦争は、これに完全に対応しており、米帝は今後さらに経済の軍事化や大軍拡にも突進していく。

未曽有の恐慌対策展開も大恐慌から「脱出」できず

 12月1日、中国の通信機器最大手で中国最大の輸出企業=ファーウェイ(華為技術)の最高幹部、孟副会長が、米帝の要請を受けカナダで逮捕された。ファーウェイは「中国製造2025」の中核企業で、中国ハイテクの本丸であり、米日欧のIT企業との関係も非常に深い。今や米帝は中国IT関連大企業の排除と締め出しを、戦争的な争闘戦として強めており、すでにこれに英、オーストラリア、ニュージーランドや日帝が追随して動いている。
 米帝トランプは基軸国でありながら、今や「米国第一」という保護主義、帝国主義的国益論を振りかざし、G7、G20やAPEC(アジア太平洋経済協力会議)など国際会議や国際的な取り決めを次々ぶち壊し、帝国主義侵略戦争・世界戦争への道にのめり込んでいるのだ。
 リーマン・ショックは21世紀初頭の米ITバブル崩壊に続く、典型的な資産バブル=住宅バブルの崩壊だった。その基底には過剰資本・過剰生産力の問題が存在した。米住宅バブルの崩壊は、信用度の低いサブプライムローンと「金融工学」を駆使してのその「証券化商品」の全世界的な膨張と拡散の破裂だった。

大規模な恐慌対策下で超低成長続く

 特に米欧の金融機関は全面危機に陥り、次々に国有化され、バブルを主導した米5大投資銀行はベアー・スターンズとメリルリンチが他の米大銀行に買収・合併され、リーマンは「救済」されず破綻した。実体経済も米製造業の象徴であるGMが国有化されたのをはじめ、世界的に生産や輸出入が「7割経済」へと転落していった。
 これに対し米欧日帝国主義と中国スターリン主義は恐慌対策として、まず天文学的な財政投入を行った。例えば米は政府が7870億㌦、FRB(米連邦準備制度理事会)が8000億㌦、中国は4兆元の公的資金を注ぎ込んだ。さらにこれに続けて米欧日の中央銀行が、未曽有の規模の国債購入など超金融緩和に踏み切り、前代未聞のゼロ金利・マイナス金利政策にも訴えた。
 その上でこの間、米欧日の政府やブルジョア学者たちは、もはや世界経済は危機を脱し「戦後最長の回復過程だ」などと浮かれている。しかしこれだけ未曽有の恐慌対策をしても、経済は歴史的な超低成長状態である。
 例えばOECD(経済協力開発機構)35カ国の実質成長率は、13〜17年平均で1・5〜2・4%の間であり、経済の実力を表すという潜在成長率は1%〜1%台半ばで低迷する。実質賃金の伸び率も平均でわずか0〜0・5%と超低水準だ。物価も日欧などは「2%」の目標に届かない。
 この現実は、未曽有の恐慌対策や、極限的な金融依存とIT経済へののめり込みによっても、過剰資本・過剰生産力問題は何も解決していないことを示す。その上で今や、一方では米中貿易戦争で世界経済にはより深刻な大不況化が迫り、他方では米帝を先頭にリーマン・ショック前をも超えるような大バブルが生み出され、その破裂の危機が切迫しているのである。

貿易戦争の激化でさらに「大不況化」

 トランプ主導の貿易戦争の激化で、すでに米中経済や世界経済に景気のさらなる減速化が進み、イギリスの「合意なきEU離脱」の危機もそれを加速する。米帝の足元では、トランプの圧力をはねのけ自動車最大手のGMが、「景気後退への備え」として北米5工場(世界7工場)での生産停止、15%もの人員整理という大リストラを発表した。高関税による素材や部品の値上がり、製品輸入コストの上昇が、米製造業などの重圧と化し、中国も政策を「景気優先」へと切り替え始めた。
 危機感を強めるOECDは、貿易戦争リスクを織り込んだ今後の世界経済見通しとして、20年の成長率を世界全体は2・9%、米1・2%、中国4・9%、日本0・3%と発表した。同じくIMF(国際通貨基金)は世界全体が3・0%、米1・0%、中国5・2%、日本マイナス0・4%としている。ここでは特に帝国主義の「最弱の環」である日帝の低迷は深刻である。
 その上で、世界経済危機として、新興国経済の問題がある。特にトルコ、アルゼンチン、ブラジルなど経常収支赤字やドル債務が大きく、外貨準備高の脆弱(ぜいじゃく)な国は、ドル高や米金利上昇でこの間、マネー流出、通貨下落、インフレ爆発や、デフォルト(債務不履行)の危機に直撃されている。

リーマンも超えるバブル崩壊の危機

 さらに今一つ、世界経済の足元の大問題は、リーマン・ショックを超える新たな大バブルと、その崩壊の切迫だ。すでに世界のかなりの重要人物たちが「次の危機が近づいている」と警告している。しかしバブルはその一番の当事者たちには、実際に破裂するまでバブルと認識できない。
 幾つかのデータを見よう。①世界的な金融セクターの再膨張と過剰債務(政府、企業、金融機関、家計の債務総額は18年3月末で247兆㌦、危機前から43%増加し、GDP比で375%)。②世界の株式時価総額は約85兆㌦、09年9月末比で2・9倍化。③特にNY市場のダウ平均は09年から4倍を超えて最高値を更新(だがすでに18年2月以降は急落と乱高下を繰り返す)。④IT関連が中心のナスダック総合指数も最高値圏だ。
 ⑤不動産の時価総額も17年末の時点で株価をも超える281兆㌦。⑥米家計が抱える株式、不動産などの純資産額は可処分所得の7倍に膨張(これが6倍を超えた時点でITバブル、住宅バブルは崩壊した)。⑦さらに世界で流通するドル(ワールドダラー)はこの10年で3・4倍、通貨供給量は76%も増加している。
 米金融危機調査委員会のアンヘリデス委員長でさえ、今や「金融界は過ちに学ばない。ウォール街でいま起きていることは危機前に起きていたことと一緒だ」と懸念を表明している。リーマンを超える新たなバブルとその崩壊、大恐慌再爆発はまさに今切迫する現実そのものなのだ。

空母保有やF35で日帝は「敵基地攻撃能力」を持つ

 この中で、日帝は「出口」も見えない超金融緩和が示すように、まさに「最弱の環」だ。それゆえにこそ安倍は、日米争闘戦の激化におびえつつトランプの「懐」に飛び込み、米帝の武器購入要求などにも全面的に応え、改憲と「専守防衛」などをはるかに超える大軍拡へ突き進んでいる。安倍は、残る政権期間で何としても改憲をやり遂げようと躍起になっている。
 改憲とは戦争だ。安倍の改憲=戦争にかける執念は具体的には激しく進行する大軍拡にも示されている。この間の日帝の軍備増強はすさまじい。何よりも防衛費だ。次期「中期防」の予算総額は5年間で27兆円を超え、これに軍人恩給やPKO分担金などを加えればさらに10兆円以上も膨張し、NATO基準でGDP比1・2%となる。従来のGDPの「1%枠」は一気に取り払われる。その上で具体的な防衛装備の大エスカレートである。
 ①まず「ヘリ空母」の護衛艦「いずも」が、本格的な「攻撃型空母」に改修される。②最新鋭のステルス戦闘機F35を1兆円で最大105機追加購入する(全体では147機体制)。③早期警戒機E2Dを3000億円で最大9機追加購入する。④さらに射程900㌔の巡航ミサイル、羽根付きの高速滑空弾、短距離離陸垂直着陸機(STOVL)などの導入。自衛隊が今や「敵基地攻撃能力」を持つのだ。
 安倍は改憲やこの防衛力大増強を、中国や北朝鮮の動向などを「脅威」としてあげつらい「正当化」しようとしている。だがこれまですべての戦争は外敵からの「脅威」への「防衛」を掲げ強行されてきた。
 レーニンは第1次大戦は「双方の側からの帝国主義的な戦争」だと言い切って闘った。日本共産党を含めすべての野党勢力も自国が「脅威」にさらされると言われれば、改憲にも戦争にも本気で闘えない。切迫する世界戦争の危機に立ち向かい、「国際連帯」と「自国帝国主義打倒」を断固貫いて、改憲阻止闘争に総決起しよう。

ロシア革命の勝利甦らせ反帝・反スタ世界革命へ

 現代革命ライブラリー第2巻『ロシア革命 現代世界の起点』は、反帝・反スターリン主義の立場から21世紀の現代プロレタリア世界革命を切り開くために書かれた、類書を寄せつけない画期的なロシア革命史だ。
 大恐慌と世界戦争が現実化している今の情勢、しかも韓国や米、英、独、仏をはじめ全世界的に戦後の政治的枠組みと体制が崩壊し、革命的情勢が生まれつつある中で、ロシア革命を現代に継承しプロレタリア世界革命を切り開くことは、労働者階級の人類史的課題だ。
 第1次世界大戦のただ中で、労働者と軍服を着た農民である兵士たちの反乱と蜂起によって1917年のロシア2月革命は起こり、労働者の革命権力機関であるソビエトが誕生した。だがメンシェビキやエスエルなどその指導部は、ブルジョアジーの臨時政府に実質的な権力を譲り渡して、「二重権力」状態が生まれた。
 スイスに亡命中のレーニンはこの情勢に、二段階革命論としての「労農民主独裁論」からプロレタリア革命論への発展である「4月テーゼ」を引っさげて帰国し、「帝国主義戦争を内乱へ」「全権力をソビエトへ」などのスローガンの実現に向けて、労働者とソビエトの中で少数派から多数派になる闘いを猛然と開始した。
 何よりも首都ペトログラードでの労働者の組織化、多数派への闘いこそが決定的であり、それはブルジョアジーや小ブル民主主義派や軍部反動派との息詰まるような熾烈(しれつ)な闘いだった。だが「7月弾圧」などものりこえ、ボリシェビキの地区・職場と兵営内の組織は拡大し、10月蜂起=労働者権力樹立へと進撃していった。
 この過程ではトロツキーのグループ約4千人もボリシェビキに合流し、ボリシェビキはレーニンとトロツキーを総指揮者に、胸躍る闘いを展開し勝利した。
 資本主義・帝国主義からプロレタリア世界革命への過渡期の時代、すなわち現代史を切り開いたロシア革命は、レーニンの早すぎる死やトロツキーの組織的日和見主義なども重要契機にスターリンの「勝利」を許し、世界革命を裏切るスターリン主義反革命へと変質した。だがそれは断じて歴史の「必然」だったのではない。
 大恐慌と世界戦争の新たな切迫の時代に、『ロシア革命 現代世界の起点』を、特に「党と労働組合の一体的建設」の現在的観点から学び、ロシア革命を現代に甦(よみがえ)らせ、反帝・反スターリン主義世界革命へ闘おう。
〔城戸通隆〕
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