「レーダー照射事件」は安倍のねつ造 排外主義あおり改憲・戦争狙う

週刊『前進』02頁(3003号02面01)(2019/01/17)


「レーダー照射事件」は安倍のねつ造
 排外主義あおり改憲・戦争狙う


 昨年12月20日、日本の排他的経済水域(EEZ)内とされる海域で海上自衛隊のP1哨戒機が韓国海軍艦艇から火器管制レーダーの照射を受けたとして、安倍政権は即座に「きわめて危険な行為」「異常事態」などと猛反発し、28日には、危険性はないと主張する韓国側に反論する形で「事件」の動画を公開した。この「事件」を徹底的に利用して安倍は今、激しい排外主義キャンペーンを繰り広げている。

安倍・官邸の主導で動画の公開を強行

 第一にはっきりさせなければならないことは、今回の「レーダー照射事件」なるものは、安倍政権が韓国に対する敵意と憎悪をあおり立てることを狙い、きわめて意図的・政治的にねつ造したものだということである。
 こうした「事件」は世界で日常的に起きていることで、それ自体では何の危険性もない。せいぜい防衛当局者同士で協議する程度のことである。この点については、安倍に劣らぬ極右・排外主義者であるはずの元航空幕僚長・田母神俊雄ですら「全く危険ではない」「今回ぐらいのことは世界中の軍が日常的にやっている」とコメント。自衛隊も民間航空機などに同様のレーダー照射を行っており、こんなことで騒いでいたら自衛隊の訓練もできなくなる、と嘆いている。
 ところが安倍は、「渋る防衛省、安倍首相が押し切る」(12月28日付時事通信)と報じられたように、防衛省や自衛隊幹部ですら否定的だった事件当日の動画の公開を官邸主導で強行し、韓国に対する憎悪に満ちた一大キャンペーンを開始した。もっともこの動画の内容は、危険性はなかったとする韓国側の主張を覆すようなものではない。それにもかかわらず安倍は、あたかも自衛隊が韓国軍から激しい挑発を受けたかのように世論をあおるために、この動画をセンセーショナルに繰り返しマスコミに放送させているのだ。

150㍍の低空で異常接近くり返す

 この間の日本政府の主張やマスコミ報道などで隠されている今一つの核心問題は、照射されたレーダーの種類である。韓国側は、照射したのは広範囲探索に用いる3次元レーダー(MW08)であり、攻撃のために標的の位置を捉える追跡レーダー(STIR)の照射は行っていない、と一貫して説明している。
 ところが日本政府は、照射されたのはどちらのタイプのレーダーだったかを今に至るまで明言せず、「火器管制レーダー」という総称でごまかし続けている。だが、もしも後者(危険な追跡レーダー)が用いられたのであれば、照射後もP1が何一つ回避行動をとらず、相手との通信を試みた上で何度も接近することなどありえない。
 第二に、「事件」当日の当該海域で実際に危険な戦争挑発を行ったのは自衛隊の方だということである。
 これまで明らかにされたところによれば、その日、韓国海軍の駆逐艦が、遭難した北朝鮮船舶を捜索するSAR(サーチ・アンド・レスキュー)活動を行っていたところに、海自のP1が高度150㍍の低空飛行で飛来し500㍍の距離まで接近した。そのため韓国海軍が捜索に使用していたレーダーがP1に当たった。P1はその後もSAR活動中の韓国軍に対して異常接近を繰り返した。
 このような経緯を見るだけでも、相手に脅威を与える挑発行為を行ったのが海自側であることは明白だ。

「ジャパン・ネイビー」名乗った海自

 第三に、以上のことからして、マスコミを総動員した日帝・安倍政権の排外主義的なデマキャンペーンはあまりにも異常であり、その背景には改憲・戦争に向けた安倍の激しい衝動があるということだ。
 重大なことは、日本政府が公開した動画の中で、海自隊員が「ジャパン・ネイビー」(日本海軍)を名乗っていることである。海自の英称は公式には「ジャパン・マリン・セルフディフェンス・フォース(JMSDF)」とされ、いわゆる海軍ではないという体裁をとっているが、現場では他国軍に対して公然と戦前同様の「日本海軍」を名乗って行動しているのだ。許しがたい暴挙であり、そもそも自衛隊が憲法9条違反の「戦力」にほかならないことを自ら暴露するものだ。
 安倍政権は昨年12月の新防衛大綱で大軍拡を打ち出し、改憲への動きと並行して実際の戦争準備・戦争挑発を急ピッチで進めている。そのもとで自衛隊は、朝鮮半島から中国への「列島防衛線」と称する海域でかつてない規模と頻度で訓練を激化させている。もはや安倍には、排外主義をあおり、戦争に突き進む以外に延命の道がなくなっているのだ。
 他方で米軍は中国の海上展開に対抗する初の対艦ミサイル訓練を今年中に沖縄で開始しようとしている。自衛隊との共同訓練も進める構えだ。米中対立が軍事衝突にまで発展することが不可避となる中で、安倍は帝国主義としての存亡をかけて改憲と参戦国化に踏み切ろうとしているのだ。そのためにも米軍辺野古新基地建設を強行し、沖縄をますます軍事基地化しようとしている。
 改憲・戦争阻止!大行進を大発展させ、安倍打倒の19年決戦に勝利しよう。

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