山手線「無人運転」化で安全を破壊するJR東

週刊『前進』02頁(3007号01面03)(2019/01/31)


山手線「無人運転」化で安全を破壊するJR東


 JR東日本は昨年末から今年始にかけて、山手線電車の自動運転の実証実験を行った。JRはいずれは運転士も廃止する大合理化に踏み切ったのだ。これは、鉄道の安全を根本から破壊する暴挙だ。

 昨年7月、JR東日本は「グループ経営ビジョン『変革2027』」を策定し、「ドライバレス(無人)運転の実現」を掲げた。そこでは、運転士や車掌はもはや乗務員としては位置づけられず、資格もいらない「輸送スタッフ」になるとされている。
 この計画が打ち出されてからわずか半年後に、JRはその実証実験を強行した。JRによる攻撃のテンポは、かつてなく速いものになっている。

大事故は不可避

 実証実験に使われた山手線の新型車両E235系は、2015年11月に営業投入された初日に事故を繰り返し、いったん運用停止になった経緯がある。この車両には、ブレーキ操作も機械に任せるデジタルATC(自動列車制御装置)と呼ばれるシステムが搭載されている。それを基礎に、今回はATO(自動列車運転装置)が試験的に導入された。だが、その安全性はなんら確証されていない。
 1月7日に報道陣に公開された実証実験でも、2周目の目黒駅で車両がホーム手前で停止し、運転士が手動で正しい位置に戻さなければならなくなるトラブルが起きた。
 文字通りの無人運転の実現には、まだ高いハードルがある。今回の実験でも、発車時には運転士がボタンを押している。運行を完全に自動化するためには、発車のタイミングも機械が判断しなければならない。だが、1日に530万人が乗車し大混雑する山手線で、それは可能なのか。大勢の乗客の乗降が完了し、安全に電車を発車できる状態になったかどうかの確認は、車掌や駅のホーム要員がいて初めて成り立つ。
 運転士や車掌が乗務している今でも、代々木駅ホームドア破損事故などの事故が絶えない。無人運転は安全破壊のきわみだ。
 さらに、当初から自動運転を前提に建設され、全区間が高架になっている「ゆりかもめ」などとは異なり、山手線は地上を走り、踏切もある。機械が緊急事態に対応することは、およそ不可能だ。
 にもかかわらずJRは、「2027年には無人運転を実現する」として、大事故が必ず起きるような施策を強行しつつある。

ダイ改阻止へ!

 この背後にあるのは、国鉄分割・民営化以来の新自由主義が生み出した、労働力人口の減少という事態だ。そこに国鉄時代に採用された労働者の大量退職期が重なる中で、JRは労働者をIT、AIに置き換えることで人員減を乗り切る絶望的な道に踏み切ったのだ。事実JRは、全職種にわたり「これまでどおりの採用数は維持できない」と公言している。
 3月ダイヤ改定で導入されようとしている乗務員勤務制度の改悪で、JRは従来の乗務員とは別枠で支社課員らを短時間行路に乗務させようとしている。これも、乗務員という制度自体を廃止し、無人運転に踏み込むための布石だ。
 他方でJRは、東労組の解体を手始めに「労働組合のない会社」をつくり出し、労働者を資本の施策に一切抵抗できない状態に追い込もうとたくらんでいる。だが、こんな思惑は絶対に通用しない。
 3月ダイヤ改定をめぐる攻防と19春闘は、労働者と乗客の命を守るための決戦になったのだ。

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代々木駅ホームドア破損事故 昨年11月14日午後4時46分、山手線代々木駅で、電車のドアに挟まっていた乗客の荷物がホームドアと接触し、破損したホームドアの部品がホームにいた乗客の足に当たった。電車のドアに荷物が挟まったのは、ひとつ手前の新宿駅14番ホームだった。同ホームは大きくカーブしていて、十分なホーム要員がいなければ安全確認は難しい。しかも、同駅のホーム要員は、かつての4人体制から2人体制に減らされている。にもかかわらずJRは「ホーム上のカメラで安全は確認できる」と居直っている。新宿駅南口にバスタ新宿が開業して以来、同駅ホームは混雑が増し、駆け込み乗車も絶えなくなった。この事故は、ホームドアのような機械に依存して安全要員を削減することの危険性を示している。

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