米帝による軍事侵攻許すな ベネズエラで反革命クーデターが切迫

週刊『前進』04頁(3018号03面02)(2019/03/11)


米帝による軍事侵攻許すな
 ベネズエラで反革命クーデターが切迫

(写真 「アメリカはベネズエラから手を引け!」全世界で米帝への抗議行動が巻き起こっている【2月23日 ニューヨーク】)


■天然資源の略奪と市場開放狙う
 南米ベネズエラで1月23日、フアン・グアイド国会議長がニコラス・マドゥロ大統領に反旗を翻し「暫定大統領」就任を宣言した。数分後には米大統領トランプが「グアイド議長をベネズエラの暫定大統領と公式に認める」との声明を発表。英仏独をはじめ50カ国以上の政府もグアイドを暫定大統領として承認し、米政府の呼びかけに応えてグアイド支持を表明するベネズエラ軍の幹部も現れた。
 トランプはその後、ベネズエラの国営石油企業などを対象とする経済制裁を発表。4月末からは原油代金の支払先をグアイド側に切り替えるとしている。さらにグアイドは公務員労組の幹部と会談し、公共部門のストライキを要請した。
 「人道上の危機」を口実に軍事介入を計画する米帝の狙いは、サウジアラビアをも上回る世界最多の石油資源をはじめ、金や鉄鉱石などの豊富な天然資源だ。ボルトン国家安全保障担当補佐官は「ベネズエラの膨大な未開発の石油埋蔵量のため、ワシントン(米政府)はカラカス(ベネズエラの首都)での政治的成果に大きな投資をしている」と言い放ち、石油資源国有化でベネズエラから締め出されてきた米石油メジャーを再上陸させる意図を隠そうともしていない。米帝はこれまでイラクやリビアに対して行ってきたことを繰り返そうとしているのだ。
 ボルトンが記者会見の際に持っていたメモに「コロンビアに5千人規模の米軍」と書かれていたことも明らかになっている。米軍による「人道支援物資」の搬入をめぐってコロンビアやブラジルとの国境では衝突が発生し、住民に死傷者が出る中、グアイドは軍事介入の要請も示唆した。
 米帝は中南米・カリブ海周辺地域を長きにわたって「裏庭」とし、その資源や権益を独占することで帝国主義としての自己を形成してきた。米帝が打倒したラテンアメリカの指導者は計67人にも及ぶ。中でもチリでは1973年にピノチェト将軍を使ってクーデターを行い、文字通り「新自由主義の実験場」とした。
 そして今、米帝と戦後世界体制の危機が極限的に深まる中で、グアイドを通じた介入という形でのクーデターを試みているのだ。
■真のプロレタリア革命が必要だ
 ベネズエラでは現在、170万%近いハイパーインフレ、失業率35%、GDP(国内総生産)成長率マイナス18%という現実のもと、食料品や医薬品の不足で多くの人々が命を落としている。2015年以降に国外へ脱出した人々は人口の約1割=300万人に上り、19年中に500万人を超えるとされる。
 制裁でベネズエラ経済を破壊し人民に苦難を強制してきたのは、他でもない米帝自身だ。
 前大統領ウゴ・チャベスは、帝国主義と一体の独裁体制を打倒して民主化し、労働者人民の自主的な組織化・自治を推進するとともに、貧困との闘いを進めて支配階級を恐怖にたたきこんだ。だが、ランク・アンド・ファイルの労働者と農民による工場や農地の実力接収、生産管理へと踏み込み始めた時、それを押しとどめ、資本家の延命を許した。結局、労働者を「上から」救済しようとすることに逆戻りし、貧困の根を絶つことはできなかった。
 べネズエラの主要な工業、流通を今も握っている資本家はマドゥロ体制の転覆を狙った米帝と結託し、意図的に物資不足をつくりだしてきた。さらに、近年の原油価格の下落が外貨収入の96%を石油に依存する経済構造を直撃している。
 米帝の軍事介入は人民の苦しみを解決するものではなく侵略だ。ベネズエラの労働者人民の解放はマドゥロ支持の先にもクーデターの先にもない。必要なのは、ベネズエラの労働者階級自身による真のプロレタリア革命と、これと連帯した米帝打倒の闘いだ。

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