ボーイング機の連続墜落は資本と国家による大量殺人

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週刊『前進』04頁(3034号02面05)(2019/05/13)


ボーイング機の連続墜落は資本と国家による大量殺人

飛ばしてはいけない機体だった

 4月29日、ボーイング社の株主総会が開かれた。わずか4カ月の間に2度も墜落し、346人を殺したことで運航停止中の737MAXについて、経営陣は「ソフトウエアを更新したので安全は確保できる」と運航再開に意欲を示し、「米連邦航空局(FAA)がソフトウエア修正を確認する試験飛行を来週末までに実施する見込みで、5月23日に行われるFAAと国際規制当局関係者との会合後にソフトウエア修正が認証されるだろう」と発言した。ボーイングは航空会社には夏のシーズン前の運航再開を示唆し、FAAには認証を強く求めた。
 昨年10月29日のインドネシアのライオン・エア機の墜落事故の犠牲者は189人、今年3月10日のエチオピア航空機の犠牲者は157人。両機とも離陸直後に墜落し乗客・乗員全員が死亡した。
 737MAXには機首が上がりすぎたら失速しないように自動で機首下げを行う姿勢制御システム(MCAS)が搭載されている。燃費向上のためのエンジン大型化で機体後部が重く、機首が上がりやすい特性をカバーする機能だ。しかし多数のパイロットが問題を指摘していた。離陸後に機首が下がって操縦不能となり、MCASを切って手動に切り替えたという報告が数多くある。昨年11月にはサウスウエスト航空とアメリカン航空の操縦士労組が、MCASのリスクと対処方法がマニュアルや訓練で説明されていないと指摘していた。飛ばしてはいけない機体だった。
 エチオピア航空機はMCASによる不要な機首下げで加速し、パイロットは最後まで格闘したが、時速約925㌔で地面に激突し、激しく炎上した。死の直前の恐怖はいかばかりか! これは事故ではない、大資本と国家による大量殺人だ。労働組合が「危険な航空機は運航停止! 安全が確認されるまで乗務拒否!」と闘っていたら、空港労働者が「整備拒否! 給油拒否!」と国境を越えた団結で闘っていたら、命を守れたはずだ。

技術者の声潰し受注競争を強行

 ボーイングは既存の737型からの設計変更を最小限にするために、無理で危険な設計を強行した。旅客機は型式ごとに操縦ライセンスが必要だが、737型と同様ならば追加訓練で済む。ライセンスが共通なら航空会社は「パイロットの使い回し」ができ、訓練費用と人件費を大幅に削減できる。ボーイングはエアバスとの競争に勝つために、「大型エンジン搭載には機体の設計変更が必要だ」という技術労働者の意見を握り潰し、安全を犠牲にして大量注文を獲得した。
 エアバスはフランス・ドイツ・スペイン・イギリスがボーイングと対抗するために資本投入した企業で、両社の市場争いは米帝とEU(欧州連合)の代理戦争だ。「航空」とは、軍事と経済で世界中を侵略、占領する手段に他ならない。形を変えた戦争で労働者民衆の命が奪われ続けている。
 今、米・サウスカロライナ州の工場で、ボーイングの労働者たちが「品質より効率」の危険でずさんな生産管理体制と闘っている。金属片の混入や欠陥部品など安全上の問題を指摘した労働者は嫌がらせを受けたり、解雇されている。

スト・組合破壊と闘う工場労働者

 この工場設立のきっかけは2008年9月のワシントン州エバレット工場のストライキだ。資本は組合つぶしのために、労働組合の権利を破壊する「働く権利法」を制定し労組組織率が2・6%と全米で最も低いサウスカロライナ州に新工場を設立した。
 ボーイングの技術労働者を組織する国際機械工労組(IAM)は新工場で労組結成を目指したが、17年2月の従業員投票では74%の反対で否決された。だが18年5月、労組結成に向けた労使交渉を求める投票が整備部門で行われ、従業員169人中104人の賛成で可決された。資本はフェイスブックやツイッターで反組合キャンペーンを展開したが、ついに労働者が勝利した。
 本当の闘いはこれからだ。労働者自身の狭い利益ではなく労働者階級全体の利益のために、航空の安全は階級的労働運動の誕生にかかっている。動労千葉労働運動を世界に拡げよう! NO FIGHT NO SAFETY!(闘いなくして安全なし) 国際連帯で闘おう!
(なんぶユニオン・大野八千代)
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