非正規だけの社会にさせない ②労働時間規制の撤廃 8時間労働制を全面解体し 過労死強いる「働き方改革」

週刊『前進』02頁(3039号01面02)(2019/05/30)


非正規だけの社会にさせない
②労働時間規制の撤廃
 8時間労働制を全面解体し
 過労死強いる「働き方改革」

遺族の悲痛な叫びに応え

 「これ以上過労死を増やしたくない! 私たちと同じ地獄の苦しみを味わう遺族を増やしたくない!」
 5月1日に銀座で行われたメーデー集会で、東京過労死を考える家族の会はこのように報告した。
 「労働災害は80時間時間外労働をしたら過労死ラインと言われています。さらにその上の100時間というのは、脳・心臓疾患で労災認定されている方の53%の方たちが100時間以内で罹災(りさい)している」「長時間労働で毎年毎年医者が死んでいます。......こんな働き方が許されるでしょうか!」
 この叫びは、まさに今、安倍政権が進める「働き方改革」攻撃に対する命をかけた弾劾の訴えだ。
 労働破壊と労働時間をめぐる現場攻防は、「働き方改革」攻撃との重大な対決点だ。すでに多くの職場で8時間労働制の解体、殺人的な長時間労働が蔓延(まんえん)している。4月に施行された「働き方改革」法はこの8時間労働制の解体攻撃そのものである。
 そもそも労働者の決死の反撃がなければ、労働者の命まで奪う際限のない強搾取を行うのが資本の本性である。これに対して全世界の労働者階級は、血みどろの闘いやストライキを通して8時間労働制を闘いとってきた。
 だが、反撃の闘いは開始されている。「私たちは命まで差し出してはいない! 過労死させるな!」という叫びがいたるところから発せられている。この命がけの声が全労働者の心をとらえ、労働運動を再生する時が来ている。

倒れるか大事故が起こる

 JR資本の攻撃こそ安倍「働き方改革」のモデルそのものである。JR東日本は「変革2027」に基づき、運転士・車掌という職種そのものを廃止し、鉄道業務の全てを別会社化し、労働者を転籍させ総非正規職化するすさまじい攻撃をしかけている。これと一体で運転士にとんでもない過重労働を強いている。
 今年3月16日のダイヤ改定から、千葉支社では泊まり勤務で津田沼―中野間を4往復する長時間行路が新たに設定された。これに反対してストライキに立ち上がった動労千葉の習志野運輸区の本線運転士は、ストライキ集会で「生身の人間のやる労働ではなくなっている」「このままでは乗務中に倒れるか、重大事故が起きる!」と弾劾した。
 水戸支社で新たに導入された行路では、1回の勤務中に6本、9時間37分も運転する。乗務と乗務の間の休憩は1時間しかなく、その中で乗務報告や乗務前の準備もしなければならないため、食事とトイレに行く時間しかない。朝7時51分に勤務開始し、その日の最後の乗務が終わるのは夜中の11時45分。たった4時間の仮眠の後、翌朝5時45分からまた乗務させられる。「若い人でも体がもたない」と運輸区内の青年たちにも怒りが広がっている。
 運転士が十分な休息もなく長時間乗務を強いられる中、4月13日には常磐線柏駅で停車位置を240㍍超えるオーバーラン、続いて5月21日にも同じく柏駅で約2㌔のオーバーランが発生した。JRは鉄道会社としての責任すら投げ捨て、労働者の命・安全、誇りも奪って総非正規職化し、「労働組合のない社会」をつくる先兵となっている。
 運輸、医療に従事する労働者の長時間労働はますます過酷なものとなっている。厚生労働省の「医師の働き方改革に関する有識者検討会」は3月28日、一部医師の残業時間の上限を「年1860時間」とする報告書をまとめた。過労死ラインの2倍の残業まで容認するものである。
 さらに、コンビニ加盟店オーナーなど「個人事業主」とされる労働者は初めから労働時間規制が適用されない。本部が強制する24時間営業のための過労死、あるいは過労で脳・心臓疾患を発症する労働者が後を絶たない。
 政府は「フリーランス」「副業・兼業」などを「多様で柔軟な働き方」と称して奨励し、促進している。その真の狙いは、会社が労働者の労働時間を把握・管理する責任すらなくしてしまうことだ。たとえ過労死や病気になっても「自己責任」とされ、会社は労働者の雇用、最低賃金、労働時間管理、社会保険加入など雇用主としての全ての責任を免除される。断じて許してはならない。

五輪で終電延長許せるか

 安倍政権と一体で東京都の小池百合子知事が、2020年東京オリンピック大会を振りかざしたすさまじい労働破壊、長時間労働強制の攻撃に出てきている。
 3月23日の東交(東京交通労組)電車部大会では、五輪・パラリンピック期間中の「午前2時過ぎまで終電延長」に代議員の怒りが噴出し、「東京2020大会への協力など、到底不可能である」という決議が上がった。
 小池と大会組織委員会は3月、大会が開催される7月24日から8月9日までの17日間、JR山手線、都営地下鉄、東京メトロは終電時間を午前2時過ぎまで、その他は午前1〜2時まで延長する方針でJR、私鉄各社(19社)と今年3月に合意したと発表。都営バスは大幅増便する。
 都営地下鉄はすでに2年連続で年度初めから欠員状態にある中で、現在の人員の超勤で午前2時過ぎまで終電延長する計画だ。運転士、車掌、駅務員の限度を超える労働強化である。都内8カ所の会場で午後11時過ぎに競技が終わり、朝は午前5時半から競技が開始される。始発からのラッシュは不可避だ。終電後に行う保守・点検や故障・事故に対応する時間もない。これに対し、現場には絶対反対で闘う機運がある。
 さらに小池は4月12日に、本庁職員の約半数(約5千人)が五輪・パラリンピックの期間中に時差出勤・テレワーク等を実施することを含む「都庁2020アクションプラン」を打ち出した。それを1年前倒しして実施するという。職場ではないところで労働させる「テレワーク」は、労働時間規制をなくし過労死するまで働かせる攻撃だ。小池はこれを全労働者に拡大しようとしている。
 安倍や小池の「働き方改革」は、雇用も労働も賃金も破壊する労働者階級への歴史的攻撃である。だが、あまりにも労働者をみくびり命まで奪う攻撃に、必ず反撃の火の手が上がる。
 「非正規だけの社会にするな!」を掲げて開かれる6・9国鉄集会への大結集運動は、動労千葉・動労水戸―動労総連合を先頭に、「働き方改革」攻撃と現場から本気で立ち向かう新たな団結と闘いを職場につくり出す。ここに階級的労働運動再生の道がある。

このエントリーをはてなブックマークに追加