コンビニ労働者、命の叫び

週刊『前進』02頁(3039号02面01)(2019/05/30)


コンビニ労働者、命の叫び

(写真 コンビニ関連ユニオン準備会が記者会見【5月23日 東京・千代田区】)


 コンビニ労働者の命をかけた闘いが始まっています。セブンイレブン株主総会とその後の記者会見で、セブンイレブンでほぼ毎日一人で深夜勤務するオーナーAさん、店舗従業員Bさん、本部社員の河野正史さんが24時間営業義務化廃止などを訴えました。発言の要旨を紹介します。(編集局)

「働けど働けど赤字」限界
 加盟店オーナー・Aさん

 私は実家が酒屋だったので、Aタイプ(土地・建物を自分で準備する形の契約)として2001年に開業しました。セブンイレブンの創業理念は「既存中小の小売店との共存共栄」。しかし酒販免許の規制緩和以降、既存中小の小売店舗がなくなっていく状況が生まれました。私の場合は創業の理念はうそだったじゃないかと怒っています。
 私はイトーヨーカドー出身だったので、セブンイレブンの利益構造がおかしいことにすぐに気がつきました。セブンイレブンの場合は加盟店の営業費(人件費、食品廃棄、電気代など)のことを考えないで、加盟店と本部が分かち合う売上総利益つまり荒利だけのことを考えています。だから「働けど働けど赤字」みたいな話になってしまう。このビジネスモデルの限界を悟って、私はポイント還元、見切り販売、時短営業などを本部に提案しましたが、すべて断られ、やむなく訴訟や公正取引委員会に訴え続けています。
 私が訴えていた見切り販売の排除命令の結果、本部が廃棄を15%負担することになりました。本部は私にドミナント(特定地域内で集中した店舗開発を行うこと)を仕掛け、つぶしにかかってきました。生命の危機を感じた私は契約不履行を訴えるために株主総会にのりこみました。
 不履行の一つがオーナーヘルプ制度です。本部は4月にオーナーの負担を減らすためにこの制度を拡充すると言っておきながら、私が東京旅行と株主総会出席のために制度を使わせてくれと言ったら、本部は旅行には適用できなくなったという。契約締結の資料には病気、冠婚葬祭や旅行の時に使えると明記されていた。それがなんの通知もなしに勝手に変えられていたんです。何が対等な契約ですか。そもそも加盟店オーナーが1万5千人ぐらいいるのに現場の本部社員は約2千500人。もともと機能していないのです。

私の父は過労で殺された
 店舗従業員・Bさん

 私は今、体が悪くてほとんど車椅子ですが、セブンイレブンから依頼があればオーナーさんに替わって夜勤などに入っています。
 私の父はセブンイレブンでフランチャイズ店のオーナーをやっていました。私もお店を手伝っていました。東日本大震災の津波で店舗も被害を受けました。父は奴隷に近い働き方をさせられ、店舗で倒れ、救急車で運ばれた後、亡くなりました。過労死です。そのため、家族も何もかもバラバラになりました。
 でも私は、セブンイレブンは父が生きた証しだから大好きです。いろいろな店長さんやオーナーさん、仲間たち、もしかしたら気持ちを傾けてくれる本社の社員もいるけれど、取締役による一方的な経営で軍隊のような、特高警察的な会社になってしまっている。
 24時間営業のせいでいったいどれだけの人間が亡くなったか。豪雪地帯のオーナーは、一緒に勤務していた妻がお店で倒れて救急車で運ばれた時も、「本部の許可が出ないから」と、店を閉めて同乗することもできなかった。現社長の永松や前社長の古屋は謝罪するどころか、役員のことばかり優先している。本社は現場で謝罪して下さい。人間の心を取り戻して下さい。

店を回しているのは私達
 本部社員・河野正史さん

(写真 本社前で訴える河野さん)

 コンビニは「近くて便利」と言われています。しかし、先日、茨城のセブンイレブンのパン工場でフィリピン人の青年労働者が機械に挟まれて亡くなりました。配送ドライバーも14時間、15時間の勤務は当たり前。配送時間が1分でも遅れたら罰金ということもあります。そして店舗の従業員さんはダブルジョブ、トリプルジョブやシングルマザーの方も多い。さらにオーナーさんが夜中に倒れて血を吐いている姿を私は見てきました。本当に24時間営業をやる意味があるのか。人間が人間らしく生きられることが大切ではないか。しかし「8時間は労働を、8時間は睡眠を、8時間は自分の時間を」とはほど遠い。オーナーさんも夜電話がかかってくるかもしれないから枕元に電話を置いている。24時間365日、頭は休まりません。
 本部社員も板挟みです。オーナーさんのために頑張って仕事をしているのに、本部からは前年比を超えろ、発注をもっと入れろと数字をつくるための仕事をさせられる。私もオーナーさん個人個人と信頼関係をつくりながら家族のような関係を築いてきましたが、本部はよく思わない。毎週の会議では、売り上げが伸びない下位の社員が立たされて責められる。それが嫌で自爆営業をやる。こうしたパワハラでどんどん精神的に病んでいってしまう。私の仲間だったOFCは山奥で練炭自殺をしました。しかしパワハラの張本人が出世をする会社です。
 2008年のリーマン・ショックの時にセブンは1万店。それがこの10年で2万店になりました。もう矛盾は行き着くところまで行っています。私たちはコンビニ全体の体質を根本的に変えていきたい。上の言うことは絶対に従わなければならないという優越的地位は、社員に対してもオーナーさんに対しても、工場や配送の労働者にも行われています。しかし、お店を回しているのは労働者です。敵は一つです。腐り切った、ごく一握りにすぎない経営陣どもを倒すだけで社会は変えられます。
 私たちが結成するコンビニ関連ユニオンは工場、配送、店舗従業員、オーナー、本部社員などコンビニにかかわるすべての人が入れる労働組合として結成します。6月9日午前に結成大会を開き、7月11日「セブンイレブンの日」に全国一斉の時短ストライキの実現へ向かって闘います。

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コンビニ基礎知識
■コンビニ店舗数 5万7956店
■全国の従業員数 約81万4000人(うち外国人約5万5300人)
■加盟店オーナー コンビニ本社とフランチャイズ契約を結び、店舗を経営。実態は「奴隷契約」。オーナーも店舗で働かないと利益がでない。オーナーも労働者だ。「店長」は店舗の現場責任者、オーナーとは違う
■店舗従業員 店舗で接客・販売などを行っている。非正規雇用
■本部社員 コンビニ本社の社員。その大半が店舗の経営指導にあたる。セブンでは「OFC」という
■ドミナント 一地域に集中的に出店する戦略。近隣への出店で加盟店の利益は下がるが本部の利益は上がる
■契約更新 加盟店契約には10年、15年といった期間があるが、更新基準は不透明。加盟店は本部の支配下に

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