自民党改憲案4項目を斬る①「自衛隊明記」=9条破壊 改憲は絶対に許さない 9条破壊し「戦争する国」へ転換 無制限の軍拡、徴兵制に道開く

週刊『前進』02頁(3051号02面01)(2019/07/11)


自民党改憲案4項目を斬る
①「自衛隊明記」=9条破壊
 改憲は絶対に許さない
 9条破壊し「戦争する国」へ転換
 無制限の軍拡、徴兵制に道開く

(写真 2004年3月、イラク・サマワ近郊で、戦車が列をなして移動する中、銃を構えて周囲を警戒する自衛隊員ら)


 自民党は先月7日に発表した選挙公約で、18年3月の党大会で決定した改憲4項目の「早期の実現」を掲げた。①「9条の2」を新設し「自衛隊を保持する」と明記、②緊急事態条項の新設、③「教育環境の整備」の明記、④参院選「合区」解消を名目とする自治体改革の4項目(表上)である。自民党が党としての公式の改憲条文案を示して国政選挙に臨むのは、今回の参院選が初となる。さらに安倍は参院選後、ただちに野党を巻き込んだ改憲論議や手続きを加速させる意向を示している。今夏〜今秋が改憲阻止決戦の正念場となることは確実だ。これを踏まえ、本紙では改憲4項目の各項目の批判をシリーズで行う。

現行憲法の規定を空文化

 安倍・自民党改憲案の最大の眼目は、言うまでもなく「9条の2」の新設であり、これによって「戦争放棄」「戦力不保持」「交戦権否認」を規定した現行憲法9条を完全に無効化・空文化することにある。
 表下に示した通り、自民党改憲案は、現行の9条1項2項に手をつけず、「9条の2」で「前条の規定は......自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として......自衛隊を保持する」と明記する。すなわち、9条1項2項をあえて残した上で、その法的効力を「9条の2」で即座に打ち消すというきわめてペテン的な手口を用いているのである。
 そして肝心なのは、「自衛の措置をとるための実力組織」として自衛隊を明記するという点である。単なる「自衛隊明記」ではなく、「自衛の措置」という現行憲法には存在しない新たな概念を導入しているところに肝があるのだ。これによって、現行憲法下では「武力による威嚇又は武力の行使」に当たるとして違憲とされてきたあらゆる形態の武力行使が、「自衛の措置」の名ですべて合憲化される。どんな兵器を持とうが、いかなる戦争行為を行おうが、一切「妨げられない」ことになるのだ。
 加えて重大なことは、このような「自衛の措置」をとるための「実力組織」とは、従来の自衛隊とはまったく様変わりした本格的な侵略軍隊になるということだ。これまで自衛隊は、憲法9条によって装備や活動内容を制約され、例えば戦略爆撃機や大陸間弾道ミサイル、空母、海兵隊機能をもった部隊の設置などを長い間阻まれてきた。海外派兵時の任務や日常的な訓練、隊内教育のあり方なども同様に制約されてきた。これに対し今回の改憲案では、すでに安倍政権のもとでなし崩し的に進められている自衛隊の侵略軍隊化の一切が合憲化されるだけでなく、そのような「実力組織」の維持・増強が憲法上の義務とされるのである。
 政府が「必要な自衛の実力をつけるためだ」と言えば、軍事予算は青天井となる。そして、今でさえ不足が嘆かれる自衛隊の兵員を「必要な実力」の分だけ確保するために、自治体や学校に自衛官募集が義務付けられ、企業は自衛官・予備自衛官の確保を強制され、貧困に乗じた隊員勧誘や本格的な徴兵制の導入が不可避となるのである。

戦後的力関係の転覆狙う

 そもそも9条を含む現行の日本国憲法とは、第2次大戦終結直後に全世界で一斉に爆発した戦後革命の闘いが、米日帝国主義に対して強制した「譲歩と妥協」の産物にほかならない。そこには、日本と世界の労働者人民の嵐のような闘いが、鉄の力で支配階級に強制した階級的力関係が深々と刻印されている。
 特に、戦争や武力行使を「永久に放棄する」とし、「戦力不保持」「交戦権否認」まで規定した9条は、帝国主義国家の憲法としては本来ありえない条項である。終戦直後の日本支配階級(特にその最も中枢にいた昭和天皇)は、これほど徹底した「戦争放棄」をひとまず表明する以外に、日帝の侵略戦争に対する全世界人民の怒りと断罪から逃れるすべがなかったのだ。
 その後、歴代日本政府は日米安保体制のもとで憲法9条をなし崩し的に踏み破り、世界最大・最強の戦争国家であるアメリカの侵略戦争に一貫して加担しつつ、自らも自衛隊の創設と軍備拡張を推し進めてきた。戦後日本は断じて「平和国家」などではない。
 だが他方では、憲法9条が厳然と存在することによって、自衛隊の装備や活動内容に対して常に憲法違反の疑義が唱えられ、戦後日本の安保・軍事政策が厳しく制約されてきたことも事実である。イラクなどへの海外派兵時にも本格的な武力行使はできず、激戦地への部隊投入も見送られた。イラク戦争で米軍とともに地上戦に投入されたイギリス軍が人民虐殺に手を染め、自軍にも179人もの死者と無数の負傷者を出したことを考えれば、9条がいかに大きな制約を自衛隊に課してきたかは明白だ。
 安倍が改憲にかける狙いは、このような制約と緊張関係から自衛隊を全面的に「解放」し、無制限の軍事行動を可能とする「実力組織」へと変貌(へんぼう)させることにある。米中貿易戦争が激化し、イラン・中東で新たな戦争の危機が切迫する中で、安倍政権は本格的な参戦国化を狙い、帝国主義国家としての延命をかけて9条破壊=「戦争する国」への転換を図ろうとしているのだ。
 今こそ闘う労働組合を中心に改憲・戦争阻止の闘いを巻き起こそう。戦争で一握りの軍需産業や大企業が法外な利益を上げる一方、誰よりも未来を奪われ、人生を台無しにされるのは青年世代である。青年・学生を先頭に7・20銀座デモをかちとろう。

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自民党の改憲4項目
①自衛隊の明記
「戦争放棄」「戦力不保持」を定めた現行の9条1項、2項を残した上で、「9条の2」を新設。「必要な自衛の措置」のための「実力組織として自衛隊を保持する」と明記
②緊急事態条項
「64条の2」「73条の2」を新設し、政府が国会決議を経ずに法律と同等の「政令」を制定できることに③教育環境の整備
 26条の「3項」を追加し、「教育環境の整備」などを明記
④自治体改革
 47条、92条に追記。参院選の合区解消とからめて「広域の地方公共団体」という新たな規定を導入

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現行憲法9条

9条 ①日本国民は......国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
②前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

自民党改憲案「9条の2」

9条の2 ①前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として......自衛隊を保持する。
② 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

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