65年日韓条約の反動的正体 植民地支配への賠償を拒否し、軍事独裁政権を全面的に支援

週刊『前進』04頁(3058号01面03)(2019/08/05)


65年日韓条約の反動的正体
 植民地支配への賠償を拒否し、軍事独裁政権を全面的に支援


 昨年来、安倍政権による韓国への露骨な敵視政策が続いている。7月に開始した韓国への輸出規制は、韓国大法院(最高裁)が元徴用工への賠償を日本企業に命じたことに対する報復措置にほかならない。裁判所の判断を不服として「経済制裁」を発動し屈服を迫るという、外交史上かつてない異常な手段に訴えたのである。韓国を「敵国」のように扱うことで排外主義・国家主義をあおり立て、改憲へ持ち込もうと必死になっているのだ。
 とりわけ安倍は、徴用工への賠償は1965年の日韓請求権協定で「完全かつ最終的に解決している」と繰り返し、「国際法に照らしてあり得ない判決だ」と韓国側を激しく非難する。だが、そもそも個人の損害賠償請求権を国家間の協定によって消滅させることができないことは、今日では国際法上の常識である。日本政府も「日韓請求権協定の意味するところは、日韓両国が国家として持つ外交保護権を相互に放棄したということであり、個人の請求権そのものを国内法的な意味で消滅させたものではない」(91年8月27日、外務省・柳井俊二条約局長の国会答弁)と認めてきた。日本のマスメディアはこのようなごく単純な事実すらほとんど報道せず、安倍・官邸の尻馬に乗って韓国バッシングの大合唱を繰り広げているのだ。あまりにも異常というほかない。
 その上で最も重大なことは、65年の日韓基本条約の締結時、日本政府が韓国併合を「合法かつ正当」と主張し、これに対する一切の謝罪・賠償を拒否したこと、したがって賠償問題そのものが全く「解決」などしていないことである。

日韓の労働者・学生が条約反対で決起

 戦後の日韓会談は、朝鮮戦争の真っただ中の51年10月にアメリカの後押しで始まった。南北分断体制を固定化し、反共軍事国家としての韓国を日米共同で支援することが目的だった。日本はこれに加え、自国資本が再び朝鮮半島へ進出する水路を開くことを狙った。61年のクーデターでパクチョンヒ(元日本軍将校で親日派)が韓国の政権を握ると、難航していた日韓交渉は一気に加速された。
 韓国民衆は、パク軍事独裁政権による「賠償なき国交回復」に怒り、過酷な弾圧の中で条約反対闘争に決起した。64年3月にはソウル市で学生を中心に6万人がデモに立ち、日韓会談を中止に追い込んだ。パク政権は非常戒厳令や衛戍(えいじゅ)令を発令し、軍隊を出動させてデモ隊を弾圧、特に闘争の中心を担ったソウル大学の学生らを大量逮捕した。65年8月の国会批准の時点で、逮捕者は3千人を超えた。
 日本でも、韓国民衆の不屈の決起に多くの青年労働者・学生が共感し、日韓条約粉砕闘争に決起した。65年11〜12月の国会批准阻止闘争では連日数万人の国会デモや労組の統一ストが闘われた。この闘争の中で労組青年部を主体とする反戦青年委員会も結成された。
 結局、自民党は野党欠席のまま単独で条約批准を強行採決した。これに先立つ国会審議で椎名悦三郎外相は、韓国に提供する有償無償5億㌦はあくまで「独立祝い金」だと答弁し、また「(5億㌦は)賠償でもなければ請求権の肩代わりでもなく、明らかなる経済協力であると思うがどうか」という自民党議員からの質問にも「ご指摘の通り」と答えている。

「経済協力」と称し日系企業が再侵略

 こうして日韓条約は、日韓両国の民衆の激しい反対の声を踏みにじって締結された。「経済協力資金」のほとんどは、日本政府が日本企業から買い上げた現物を韓国政府に渡す形で提供され、韓国政府はそれを民間に売り払って軍事政権の資金とした。パク政権はこれを使って工業化を進め、慶尚南道・馬山などに「輸出自由地域」と呼ばれる工業特区を建設し、外国企業を誘致した。馬山では76年時点で日系企業が9割を占め、▼法人税の5年間全額免除、次の3年間も半額免除▼労働組合・労働争議の全面禁止▼土地、工場、施設、電力、用水などの無料提供▼利潤の本国送金の容認など、植民地さながらの特恵待遇を受けた。
 韓国の労働者は飢餓水準の賃金と無権利状態で長時間労働を強いられ、特に女性や未成年が1日16時間も酷使された。こうした中で70年11月13日、青年労働者チョンテイルが縫製工場の女子労働者の待遇改善を要求して焼身自殺し、この事件を契機に今日の民主労総の闘いに継承される民主労組運動が始まった。
 日韓条約以来の日本企業の韓国進出と労働者に対する悪逆無道な搾取は今も変わらず続いている。戦前以来の「戦犯企業」は299社が現在も韓国に入っているといわれる。AGC(旧旭硝子)もその一つだ。これに対し、AGCの不当解雇と闘う民主労総金属労組・旭非正規職支会のチャホノ支会長は、動労千葉と共にAGC本社への遠征闘争を闘った経験を語り、「安倍政権に対して日本の労働者民衆も立ち向かっている。その人たちと共に手をとり、闘わなければならない」と訴えている。
 日本の労働組合の闘いが今ほど求められている時はない。韓国労働者と団結して共に安倍政権を倒そう。
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