香港で170万人が終日デモ 当局の不許可うち破り実力決起

週刊『前進』02頁(3063号01面01)(2019/08/29)


香港で170万人が終日デモ
 当局の不許可うち破り実力決起

(写真 「反送中【中国への移送反対】」【中央】「学生は暴動などしていない」【左脇】「銃撃の責任を追及する 起訴を撤回しろ」【右脇】などのプラカードを掲げてデモ【8月18日 香港】)

(写真 警察の暴力を行使した弾圧に抗議し「学生を守れ」と教育労働者らがデモ【8月17日 香港】)


 香港で、政治犯などを中国に送還する「逃亡犯条例」に反対して、1997年の中国への主権返還以降、最大規模の実力闘争が2カ月以上にわたって巻き起こっている。闘いを根底で支えているのが労働組合の決起だ。170万人が参加した8月18日の大デモがいかに組織されたかの報告です。(編集局)

労組の支援隊が先導・防衛

 8月18日、「逃亡犯条例」に反対し、警察のデモ隊への暴力に抗議して170万人が参加した大デモが、香港民間人権戦線の主催で行われた。デモ隊の中からは「われらの時代の革命を! 香港解放!」とのシュプレヒコールも上がり、ビクトリア公園から香港の中心街を埋め尽くす大デモを終日行った。
 現在の香港のデモや闘争は「流水方式」と呼ばれている。これは香港の名優・故ブルース・リーの「友よ、水になれ。水のように形をなくせ。水は静かに流れることもできるし、物を砕いたり壊したりもする」という言葉から生まれたといわれ、変幻自在に進み、あるいは退きながら、しかし絶えることなく形を変えて流れ続ける水のような闘い方である。
 18日も、この流水方式が採られた。香港当局は、ビクトリア公園以外の集会を禁止し、さらにデモは認めなかった。しかし10万人しか収容できないビクトリア公園に170万人が集まれば、当然にも人があふれだし、道路を埋める。集会主催者は、「参加者を流す」として、そのままデモにしていく。膨大な民衆は、解散点に着くと再び出発点のビクトリア公園へと向かい、さらにデモ隊は二手に分かれていく。こうして「無限に循環する多方面のデモ」が終日行われたのである。
 だが、この流れる水のように自由なデモは、自然発生的に実現しているのではない。そこには香港職工会連盟を中心とした労働組合の存在がある。なぜなら労働者こそ一番街を知っており、この労働者を組織しているのが労働組合だからである。
 「逃亡犯条例」に反対する初期の行動が始まった6月9日のデモの時、デモを支援する何の組織もなかった。香港政庁に押しかける大闘争を闘うには、警察との激突の危惧があった。そこで「労働者は各職場で、自発的なデモの支援隊を組織しろ! 2〜3日の内にそれをやれ!」との大号令が発せられ、各職場での6時間にもわたる「マラソン討論」が始まり、労働者は空いている時間に次々と討論に加わり、支援隊が組織されていった。
 この支援隊は、デモ隊を先導するとともに、警察とぶつかれば抗議し交渉してデモ隊を守る。ある隊は、警察の配備を事前に見に行く偵察隊だ。医療隊は負傷者を救助・救援する。不当逮捕者を救援する隊もある。あるいはデモの際の水や食料を準備する隊もいる。
 労働者が先頭でデモを闘うとともに、膨大な民衆のデモを実現し、それを守るための組織を、それぞれの労働組合がその職種も生かしながらつくりだしている。これが、学生や青年労働者の先鋭な闘いを守り、保障する柱となっている。労働組合が170万人の決起を促し守り、その発展を保障しているのである。
 ある労働者は「これらの前線の人たちの判断力を信頼している」「民衆は相互に指摘しあい、学びあい、水のように進み、退いている」と語っている。

14年雨傘革命を乗り越え

 重要なことはこうした闘いが、5年前の雨傘革命の時の「実力行動」と「非暴力主義」の対立と分裂を乗り越えつつあるということである。
 18日のデモは「和(平和)理(理性)非(非暴力)」であったという。だが、2014年の雨傘革命の時に「非暴力主義」であった労働者は「運動の中で考えが変わった」とし、「6月12日のデモの時、警察は催涙弾を撃ちこんできて、ある人が『勇者は俺と一緒に前面に出ろ! 非暴力を唱える者たちを守れ!』と言ったのを聞いて、感動した」と語る。そして「やり方はいろいろあるかもしれないが、この数年間、各自が自分たちの運動での役割や立場をはっきりさせるようになり、それが相互に補う関係になった」と述懐している。
 そもそも18日のデモは無許可デモであり、これ自身が巨大な実力闘争そのものだ。また、今回の運動のイメージカラーであるブラックは、「反政府、直接行動」を意味している。
 集会、デモ、議会突入、空港占拠......、まさに水のように、香港の労働者民衆は労働組合の組織を背景にして変幻自在に形を変え、さまざまな手法で運動を発展させ、闘っているのである。
 そしてこの労働組合と民衆の大デモ、組織化の関係は、1917年のロシア革命に至る過程での運動と組織化にも通じるものがある。1925年の香港・広州大ストライキの時にも、香港の労働組合は同じような役割を果たしている。香港の闘いは、そういう「革命」という要素も本質的にはらみつつ今進んでいる。
 2047年7月1日、香港が中国に飲み込まれる日が近づきつつある。それに必死で抵抗する香港の労働者民衆、とりわけ学生・青年労働者。香港の労働組合は、中国スターリン主義による武力鎮圧を粉砕し、勝利する道は、労働者の国際的団結の中にしかないことを必死で訴えている。香港の労働者民衆が解放される道は、中国スターリン主義の打倒も含めたアジアの革命、世界革命にしかないのだ。日本も含めた全世界の労働者の国際連帯が、今ほど求められている時はない。
 香港の労働者民衆と団結しよう! 香港の闘いと連帯して、日帝打倒、世界革命へ突き進もう!
(河原善之)

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