〝70歳超まで働き保険料払え〟 厚労省・年金財政検証の反人民性

週刊『前進』04頁(3066号04面01)(2019/09/09)


〝70歳超まで働き保険料払え〟
 厚労省・年金財政検証の反人民性


 厚生労働省は8月27日、公的年金制度の財政検証結果を公表した。「老後のためには年金以外に2千万円の蓄えが必要」と「自助努力」を迫った6月の金融庁報告書の立場をあくまでも押し通そうとするものだ。その内容をあばく。

若い世代ほど削減幅が大

 年金制度の財政検証は公的年金の給付水準や財政状況を社会・経済情勢の変化に伴う様々な要素を踏まえて、5年ごとに厚労省が検証するものだ。モデルは、夫が厚生年金に60歳まで40年間加入し、妻が専業主婦の世帯。給付水準は、現役世代の手取り収入に対する年金額の割合である「所得代替率」という物差しで示される。
 今回の検証では、所得代替率が現在の61・7%からどう変化していくかを、経済状況に応じた六つのケースで示した。
 そのうち実質経済成長率を0%に想定した「ケース5」では、今年65歳の世帯の所得代替率は61・7%から45・3%に下がり、35歳の世帯では47・5%から37・6%まで下がる。若い世代ほど公的年金だけで老後を支えることが困難であることを示している。
 検証は、何歳まで働き何歳から受け取れば、60歳まで働いて65歳で年金を受給する今の高齢者と同水準の年金を受け取れるのかも示した。
 それによると、現在20歳は68歳9カ月まで働いて保険料を納め、年金の開始年齢も同様に遅らせる必要がある。同じように現在の30歳は68歳4カ月、40歳なら67歳2カ月まで働いて、ようやく今の65歳と同水準の年金を受け取ることができるという結果だった。
 公的年金の受給開始年齢は65歳が基準で、60〜70歳の間で選べる。開始年齢を1カ月遅らせると毎月の年金額は0・7%増える(1年で8・4%、5年で42%増)ことも織り込んでいる。
 年金保険料について1970年と現在を比べると、国民年金が月額450円から1万6410円に、厚生年金保険料率は6・2%から18・3%に上がってきた。若い世代ほど保険料を多く負担していながら、受け取る年金が減らされるのだ。こんな理不尽はない。

厚生年金拡大、パート直撃

 現在の年金制度では所得代替率が50%を下回らないように「調整」することが定められている。この「50%維持」を盾に厚労省は、もっと働かせて、もっと保険料を払わせるために、今回の財政検証で四つの「改革」を実施した場合の所得代替率の変化も示した。
 四つとは、現在20〜60歳まで40年間となっている基礎年金(国民年金)の加入期間を45年に延長すること、年金を受給できる人が60歳以降も働くと年金が減る在職老齢年金制度を見直すこと、上限が70歳になっている厚生年金の加入年齢を70歳以上に引き上げること、厚生年金の加入対象者を拡大することだ。
 基礎年金の加入期間を65歳までにするとは、65歳まで働くことを前提とし、保険料を払えということだ。厚生年金の加入年齢の引き上げも同じだ。安倍政権は高齢労働者に就労を強いるだけでなく、保険料までむしり取ろうとしている。
 厚生年金の加入対象者は、長らく週30時間以上働く労働者に適用されてきたが、16年10月からは従業員501人以上の会社で週20時間以上就労、月額賃金8万8000円以上に拡大した。17年4月からは500人以下の事業所でも労使が合意すれば厚生年金を適用できるようにした。さらに今回、時間の条件をなくして、月収5万8000円以上はすべて対象にすることが画策されている。
 厚生年金が適用されれば健康保険も適用される。わずかな月収からこれらの保険料が引かれたら手元にいくら残るのか。引かれる以上に稼ごうとすれば、生活も家族との関係も一変させざるをえない。雇用主が保険料の負担分をひねりだすために賃下げ、合理化に動くことも明らかだ。
 年金財政検証への怒りを束ねて安倍を倒そう。
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