千葉大停電は国家犯罪 送電網の老朽化を放置 修繕費・人員カットで深刻化

週刊『前進』04頁(3070号03面01)(2019/09/23)


千葉大停電は国家犯罪
 送電網の老朽化を放置
 修繕費・人員カットで深刻化






 千葉県のほぼ全域(地図参照)で今も停電と断水が続く。復旧が遅れ高齢者をはじめ住民の生活と生業の危機が日ごとに深まっている。地域の崩壊をもたらした長期大停電は国と東電による「人災」、国家犯罪だ。被災地住民、被災しながら不眠不休で業務にあたる現場職員から激しい怒りの声が上がっている。

住民・職員「もう限界だ」と怒り

 9月8~9日、関東を襲った台風15号で首都圏などで93万5千戸が停電した。千葉県内では今も停電と断水が続く。東京電力ホールディングスの子会社、東京電力パワーグリッドは17日、「27日までにおおむね復旧する見込み」とする一方、山間部などではさらに「遅れる地域もある」と明らかにした。
 強風による飛来物、倒木などで不通となったJRの外房線、内房線(写真上)の復旧は13日までかかった。久留里線の木更津~上総亀山駅間(写真下)は18日現在でもまだ不通だ。住宅被害は自治体職員が不足し調査もできていないが、2万戸を超える見通しだ。
 停電がライフライン全体の危機を生んだ。固定電話・携帯電話やインターネットがつながらず、スマートフォンの電源も確保できなくなった。熱中症が激増し犠牲者が何人も出ている。救急搬送は500人に達した。病院・介護施設は非常時電源や限られた電源車の運用でかろうじてしのぐ重大な危機が続く。入浴もままならない。
 冷房が止まり、多くの牛や豚が死んだ。大量の牛乳や鶏卵、水揚げされた魚介類は廃棄せざるをえなくなっている。住宅の損壊とともに、これ以上生活も生業も続けていけない危機が房総半島全域をおおっている。
 「こんな時に内閣改造、ふざけるな」「復旧が何度も延期され腹が立つ」「体力もお金も限界」。困難な生活を続ける被災者の国と東電への怒りが高まっている。懸命の復旧作業を続ける東電・下請け会社の労働者、自治体職員などは疲労が限界に達している。

東電が設備費を7千億円も圧縮

 送電線の鉄塔2基が倒壊し、送電線の損傷、電柱の倒壊は直後の集計で数百カ所、さらに増えている。原因は飛来物、倒木だけではない。1991年に送配電設備に9千億円を投じていた東電は2015年には2千億円に減らした。老朽化の放置と人員削減が被害を拡大。経験を積んだ要員が極端に不足している。
 東電は16年に発電と送配電、小売を分社化。送配電部門のパワーグリッドは福島第一原発事故の経費をも口実に、保全業務合理化による収益拡大を掲げる。17年度の収益300億円を19年度に400億円、26年度には1千億円にする目標を立て、巡視をカメラ・センサーによる遠隔監視に替え点検・補修期間の延伸で修繕費を圧縮してきた。
 14年に東電は10年間で総額4兆8215億円の経費削減を発表。すでに経常利益は3・11前の水準に戻っている。「原発事故の賠償・廃炉に巨額の出費が見込まれた」などというのは言い訳にもならない。
 昨年9月4日、台風で近畿の168万戸が停電。続く6日、地震で北海道全域が停電(ブラックアウト)となったことから経済産業省の有識者会議は全国の送配電設備を緊急点検。しかしすべて「基準に照らして問題ない」と確認した。国として太鼓判を押したということだ。東電はこれに基づいて合理化・人員削減を加速した。その結果がこれだ。福島原発事故と同様に「想定外」とすることは絶対許されない。

地方切り捨てを許さず11・3へ

 ことの本質は「命よりカネ」の地方切り捨てだ。軍備のためなら際限なく予算をつぎ込む安倍の改憲・戦争の攻撃と一体である。
 JRも地方破壊を進めてきた。01年に保線・電力・信号通信などを丸投げ外注化。10保線区+18保線管理室体制を6つの保線技術センターに統合した。線路を熟知した労働者の経験と蓄積が破壊された。閑散線区の災害警備は外注化され、線路がどんな状態かわからず復旧の要員も足りない。動労千葉はローカル線切り捨てに反対する沿線住民と共に全力で闘っている。
 昨年7月の西日本豪雨災害で被災した自治労倉敷・百本敏昭副委員長は「地方切り捨てによる市町村合併と人員削減、非正規職化・民営化により住民の生命財産を守ることすらできない状況に追いやられています。労働者がこのような社会のあり方を根本的に変革する先頭に立とう」と訴えている。労働組合が怒りの結集軸となって闘おう。不屈に闘う三里塚芝山連合空港反対同盟と連帯し、11・3全国労働者集会に大結集しよう。

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