米、沖縄の核基地化を計画 新型中距離ミサイルを大量配備

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週刊『前進』02頁(3077号01面02)(2019/10/17)


米、沖縄の核基地化を計画
 新型中距離ミサイルを大量配備



(写真 労働者、学生、市民が米軍キャンプシュワブ・ゲート前に座り込み辺野古新基地建設資材の搬入を阻む【5月20日】)


 「沖縄に新中距離弾配備」「米計画、2年以内にも」----米トランプ政権が今後2年以内に沖縄など日本全土に新型中距離弾道ミサイルを大量配備する計画があることを、沖縄の地方紙・琉球新報が10月3日付朝刊で衝撃的に報道した。すでにトランプ政権は、ロシアとの間で結ばれていた中距離核戦力(INF)全廃条約が8月2日に失効したため、ただちに核弾頭搭載可能な新型中距離ミサイルの開発を再開、アジア太平洋地域に展開する米軍基地に同ミサイルを大量配備することを宣言していた。琉球新報が暴露した今回の計画はその具体化であり、日米安保を文字通り「核戦争同盟」へと全面的に転換するものだ。

核戦争を現実化する暴挙

 米国防総省は10月5日、中距離ミサイルの配備計画について「現在はミサイルの在庫がないため沖縄に配備する計画はない」とし、日本政府も「そのような事実はない」(茂木敏充外相)と述べ、計画の存在を否定した。
 だが、トランプ政権はINF全廃条約が失効した翌8月3日には、早くも新型中距離ミサイルのアジア太平洋地域への大量配備について「米国としては数カ月以内にやりたいが、同盟国と協議して数年以内に実現したい」(エスパー国防長官)と強い意欲を示しており、琉球新報の報じた内容はこうしたトランプ政権の意向と完全に合致する。ニューヨーク・タイムズなどの複数の大手メディアも、中距離ミサイルの配備先について「日本が最有力」「トランプ政権と最も近い同盟国・日本が最適だ」といった軍事専門家や国防省OBのコメントを多数紹介している。日本とりわけ沖縄についてのこのような軍事戦略上の認識は、米政府・軍部に共通する考え方といっていい。
 中距離弾道ミサイルの射程距離は500〜5500㌔で、沖縄に配備されれば中国全土とロシアのかなりの部分を射程範囲内に含むことになる(図)。高度数百㌔に達してから数十分かけて目標に到達する従来の大陸間弾道ミサイルとは異なり、新型の中距離弾道ミサイルはわずか数分で目標に到達するため、迎撃は困難を極める。純然たる核先制攻撃のための兵器であり、ロシアと中国は当然にも激しく反発している。
 計画が強行されれば、東アジアの軍事的緊張の著しい激化、果てしない核軍拡競争、そして新たな核戦争の危機が急切迫することは不可避だ。すでに中国は10月1日の建国70周年記念軍事パレードで、新たに開発した極超音速滑空ミサイル「東風17」を初めて公開し、INF条約失効を契機に新型ミサイル開発を進めようとする米トランプ政権への対抗意識をあらわにした。
 貿易戦争で火花を散らす米中が本格的に核軍拡競争に突入する中で、真っ先に踏みにじられるのは労働者民衆の命と生活だ。ミサイルが配備される地域は核弾頭の貯蔵庫とされ、日常的に核戦争の脅威にさらされる。ひとたび戦争が始まれば、相手からの攻撃を真っ先に受けることは不可避だ。もはや「基地負担の増加」といった次元をはるかに超え、壊滅的な惨禍にたたきこまれることになるのである。絶対に許すことはできない。

日米安保の歴史的大転換

 トランプ政権は2017年12月に発表した「国家安全保障戦略(NSS)」で、核の先制使用をも想定した大軍拡戦略を推し進めることを宣言した。続いて18年2月に発表した「核戦略見直し(NPR)」で、「核攻撃の抑止や反撃に限定せず、通常兵器の脅威に対しても核で反撃することを検討する」として、先制核攻撃をも辞さない新たな核戦略を具体化させた。
 重要なことは、このようなトランプ政権のもとでの軍事戦略の転換が、何よりも日米安保同盟の全面的な転換をもたらすということである。たとえば米軍が艦上発射型の巡航核ミサイルの運用を本格的に開始すれば、横須賀などが補給港として極めて重要な役割を果たすことになり、短・中距離核ミサイルを搭載した米軍艦船や潜水艦が頻繁に寄港するようになる。核弾頭の貯蔵・管理や積み込み作業も日常的に行われることになる。
 また、秋田市と山口県萩市に配備されようとしている陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」も、さしあたりは「迎撃」を目的としたものと説明されているが、その発射基に新型ミサイルを搭載すればいつでも攻撃兵器として運用できる。つまり米軍の戦略次第でいつでも核ミサイル発射装置へと一変するということだ。
 こうした米トランプ政権の核戦争準備と歩調を合わせ、改憲と軍事大国化に突き進んでいるのが日本の安倍政権だ。安倍政権が建設工事を強行している辺野古新基地には巨大な弾薬庫や軍港も新たに整備される予定であり、トランプが進める新たな核戦略のもとで世界最大の核ミサイル拠点にされようとしている。さらに今月7日には宮古島で、来年3月に配備される予定の陸上自衛隊地対艦・地対空ミサイル部隊のための弾薬庫の建設が、地元住民の激しい反対の声を踏みにじって着工された。
 だが、日米政府が一体で進める日米安保の「核戦争同盟」化に対し、沖縄の怒りと闘いがさらに爆発することは不可避だ。1972年の本土復帰を前後して激しく闘われた70年安保・沖縄闘争では、「基地撤去・安保粉砕」と並んで「沖縄の永久核基地化阻止」が最も重要かつ大衆的なスローガンとなった。この闘いの歴史を継承し、米軍基地撤去・日米安保粉砕の新たな闘いを本土と沖縄で巻き起こそう。
 新たな核戦争―世界戦争をもたらすトランプと安倍の核ミサイル配備計画を絶対に阻止しよう。

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