マイナンバーカード拒否を 監視国家化・職員半減が狙い

週刊『前進』04頁(3080号02面04)(2019/10/28)


マイナンバーカード拒否を
 監視国家化・職員半減が狙い


 安倍政権は公務員全員に今年度中にマイナンバーカードを取得するよう圧力を強めている。公務員を水路に、全住民のカード取得と常時携帯を実質義務化するためだ。
 マイナンバーカードは顔写真と氏名、住所、生年月日が載ったICカードだ。すでに15年10月導入のマイナンバー制度で全住民・法人に番号が付けられた。国家が全てを監理しようとする「国民総背番号制」だ。カードの普及は「利便性の向上」が目的ではない。カードは膨大な個人情報とリンクされる。顔認証技術などで国家による24時間常時監視を可能にする。監視国家化は戦争国家化の柱だ。同時に「デジタル自治体」化による自治体職員の半減、民営化・総非正規職化の土台作りと位置づけられている。

公務員を水路に総義務化を画策

 普及率はいまだ14%。大多数の住民が「情報流失が不安」「必要ない」と思っているからだ。政府はあの手この手を使って、2022年3月末にはほぼ全住民に取得させる策を打ち出した(表)。
 憲法・法律上、強制はできない。だからまず公務員全員に圧力をかけて今年度中に持たせることを狙う。総務省は7月、全自治体に職員の取得の進行状況を逐一報告させる通知を出した。新規採用職員も採用時に取得済みとすることをめざす。共済組合にも、カードが健康保険証として使えるようになるからとして加入者・被扶養者全員のカード取得を求めた。すべてが取得強制の圧力だ。
 さらに「便利・お得」という触れ込みで、個人情報とのリンクを拡大する。コンビニでの住民票交付や税の確定申告時の利用、保険証の次は診察券やお薬手帳、図書館カードなどに広げる。カードを持てば買い物時に「ポイント」が付く特典まで用意。カードなしには生活が不利となるところまでもっていく。事実上の義務化だ。

IT使い全個人情報を国が掌握

 国は初期費用に2700億円、システム維持と補助金、宣伝費などに毎年300億円という膨大な予算をかけている。数兆円と言われる巨大利権だ。しかし利権だけの問題ではない。全住民がカードを持たなければ、戦争のできる監視国家、独裁的な治安国家としては不十分であり、権力者は不安だからだ。
 カード普及で全住民の顔写真を集め、監視カメラとAI(人工知能)を使った顔認証などによる常時監視と身上掌握に利用しようとしている。
 すでに警察が図書館に利用者の貸出記録の情報を求めていることが大問題となっている。今後、カードが図書館の利用記録や病院のカルテ、社会福祉データなどにリンクすれば、権力機関は瞬時に全情報を掌握できるようになる。徴兵年齢の青年の健康状態や思想傾向をつかむことも可能となる。こんな制度は絶対に葬らなければならない。

労働者は安倍の手先にならない

 公務員労働者がカード取得の圧力に屈することは自らの首を絞めることにもなる。
 安倍は骨太方針2019で「デジタル社会の基盤であるマイナンバーカードの普及」を掲げた。総務省の自治体戦略2040構想は、デジタル化による職員の半減と非正規職化・全面民営化をうたう。カードシステムが普及すれば公務員はいらなくなる、差し押さえなどの権力業務以外は、毎年解雇できる会計年度任用職員か民間企業に任せるという考えだ。労働組合の団結も破壊される。
 当然にも全国の自治体労組や教職員組合が取得強制反対の闘いを繰り広げている。しかし一方で労働者・労働組合としてありえない意見も出てきている。自治労東京都本部の会議では「職員への取得強制反対、労働強化反対」の意見に対して、「番号制度を作る時点で自治労(本部)がかかわっている以上、制度を全面否定するようなことはかかわってきた職員の否定につながる」「 (総務省の通知は)カード交付窓口が混雑することを想定して職員は先行して取ってほしいとのお願い」「プライバシーにはなんの関係もない」「強制ではないと明記している」から「反対に反対だ」という意見が出て、対立したままだ。なんということか。公務員労働者が安倍の手先となって、再び住民監視と弾圧、戦争動員を担うことなど許されない。
 今、公務員労組が絶対反対の闘いを巻き起こせば、安倍の攻撃を破綻(はたん)に追い込むことができる。全労働者・労働組合の先頭でカード取得強制と対決し「総背番号制」の廃止まで闘おう。

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政府のカード普及促進策
●2019年度 全ての公務員が取得
●2020年度 カードの活用で「自治体ポイント」付与
●2021年3月 健康保険証として活用開始/個人向けサイトの閲覧情報を拡充
●2022年度 ほぼ全住民が保有

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