教員は労働者だ 変形労働時間制に絶対反対 8時間労働を!

週刊『前進』04頁(3088号02面01)(2019/11/25)


教員は労働者だ
 変形労働時間制に絶対反対
 8時間労働を!

(写真 七夕の短冊。授業時間の増加は子どもたちにとってもたいへん【7月 東京】)

衆院通過弾劾 成立阻め

 公立学校の教員に1年単位の変形労働時間制を導入する給特法(教職員給与特別措置法)改定案が19日、衆議院本会議で可決され、参院に送付された。事態は緊迫している。絶対反対で廃案に追い込もう。
 忙しい時期に1日の労働時間を延ばす代わりに、夏休みにまとめて休日を取れるようにするという変形労働時間制。政府は学校の「働き方改革」の一環に位置付ける。だがこれは、今以上に教職員の過労死を促進する。現役の青年高校教員がツイッターなどで反対署名を呼びかけると、約3万3千筆がただちに集まった。現場には怒りが充満している。

過労死促進「殺す気か!」

 「『おまえ、殺す気か』という感じ。いいように使われて死期を早めるだけ。数字上の操作でごまかさないでほしい」。神奈川県の公立中学校に勤務するベテラン男性教員の本永忠さん(仮名)は憤る。
 変形労働時間制では、忙しい時期の1日の労働時間が10時間と想定されている。今、小中高教員の平均労働時間は11時間17分。見かけの残業時間を減らして「残業隠し」を行った上に、肝心の超過勤務の実態は何も変わらない。逆に定時の延長で拘束時間が長くなる。その分、仕事も増やされることは必至だ。夏休み前に殺されかねない。そもそも夏休みも忙しいのが現状だ。
 「過労死ライン」とされる月80時間以上の残業をしている小学校教員は約3割、中学校教員は約6割。2016年度までの10年間で少なくとも63人が過労死している。ただこれは氷山の一角だ。過労死認定をめぐる申請書類は校長による勤務実態調査書となるため、泣き寝入りする遺族は多い。公立の教員の在職死は年間約500人、うち約1割の50人近くは過労死と考えられるという弁護士の指摘もある。
 文部科学省は、残業の上限を「月45時間、年360時間」以内とするガイドラインを法律に格上げして、制度導入の条件とする。だが具体的な罰則規定もない。絵に描いた餅だ。また、教員の業務削減のために「スクールサポーター」や部活支援員などの非正規職の増員や「校務支援システム」などのデジタル化で対応するという。
 これについても本永さんは「学校全体で生徒とかかわっているのに、隙間を埋めるような増員は限界がある。トータルに責任をとれる正規の教員を2倍にしたら学校の問題の半分は解決する」と断言する。
 文科省の狙いは何か。「安倍の言うことは、すべて日本を世界一にするという発想から始まっている。『先生の負担を少なくする』というが、企業にとって役立つ『優秀』な生徒だけを育てるという姿が見え隠れしている。本来、学校は人格の完成をめざすはずなのに」と実感を込めて指摘する。
 変形労働時間制は、道徳の教科化やプログラミング教育など増え続ける学習指導要領の教育内容を金をかけずに効率よく現場に貫徹するための「攻撃」だ。
 今、学校現場には経産省と文科省がタッグを組み、授業や部活に民間企業が次々と参入している。教員の「負担軽減」と称して教育の民営化と非正規職化をしのばせ、公教育の根本を破壊して国・財界のための教育に転換しようとしているのだ。

労働時間巡る職場闘争を

 都内の元小学校教員の佐倉裕子さん(仮名)は「8時間労働を守るために授業時数を減らし教員を増やす以外にない」と強調する。
 1971年に制定された給特法で基本給の4%の教職調整額と引き換えに「残業代」という概念が奪われた。8時間労働の原則が破壊された結果、学習指導要領の改定のたびに授業時数が増やされ休憩時間も奪われていった。ただ個々の現場では、退勤時間や休憩時間について毎年4月に校長交渉を行うなど、超勤を巡る職場闘争は続けられた。
 しかし、管理運営規則の強化や、職員会議での採決・挙手を禁止する「伝達機関化」が組合的権利を剝奪。そうなると教員間で相談する時間もゆとりも奪われ、子どもたちと向き合うこともできず教職員自身がすりつぶされていく。
 佐倉さんは「8時間労働を保障してこそ教育も成り立つ。給特法は廃止しかない。教員も他の労働者と同じ。学校も8時間で終わる仕事量にするしかない」と語り、新自由主義「教育改革」によって破壊された学校現場の中で、あらためて8時間労働制の原則を打ち立て、労働時間を巡る職場闘争と組合的団結を復権させる必要性を訴えた。
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