韓国 非正規職先頭に決意大会 青年労働者の1周忌 「危険の外注化やめろ」

週刊『前進』02頁(3095号02面03)(2019/12/19)


韓国 非正規職先頭に決意大会
 青年労働者の1周忌
 「危険の外注化やめろ」

(写真 キムヨンギュンさん1周忌追悼大会に多くの労働者・市民が駆け付け、非正規職撤廃を誓った【12月7日 ソウル・鐘閣】)

(写真 働いて死ぬことも、差別されることもない権利を要求して進むデモ隊)


 昨年12月10日、韓国・泰安(テアン)火力発電所で、24歳の非正規職労働者キムヨンギュンさんが作業中にベルトコンベヤーに挟まれて命を落としてから1年。12月7日、ソウル都心で民主労総決意大会と1周忌追悼大会が開催された。青年を先頭に多くの労働者・市民が参加し、働きながら死ぬことのない権利、非正規職として差別されない権利を求め、危険を外注化するなと声を上げた。
 キムさんの命を奪ったのは外注化だ。正規職が2人1組で行っていた点検業務が外注化により下請け労働者1人に変えられ、キムさんにはヘッドライトすら支給されていなかった。
 これは政府と資本による虐殺だ。事故後に発足した特別調査委員会は、危険業務の外注化とコスト削減のための人員不足などが死亡原因だったと指摘した。
 彼の死は、非正規職であるがゆえに労働者が日々職場で殺されていく現実を改めて突き出し、労働者民衆に大きな衝撃を与えた。多くの青年労働者が、「私たちがキムヨンギュンだ」と叫んで立ち上がった。キムさんの母親キムミスクさんも、深い悲しみの中から「息子の死が無駄にならないように勇気を出して進んでいく」と宣言して闘いの先頭に立った。こうした闘いによって不十分ではあれ産業安全保健法の改定をかちとり、ムンジェイン大統領にも「危険の外注化をやめる」と約束させた。
 しかし、1年後の今も非正規職労働者の現実は変わっていない。泰安火力発電所では今なお危険業務の外注化が続き、造船所や製鉄所でも多くの下請け労働者が危険業務を担っている。
 大会では、トルゲート、建設、造船所下請け労働者などで構成する非正規職100人代表団が登壇。「韓国社会では40代の企業労災死亡事故の95%が非正規職だが、最も大きな責任を負う財閥は一人も処罰されていない」と弾劾し、「貪欲(どんよく)な資本がつくる社会を終わらせるため、自分の両親、子ども、友人が職場で死なず、差別されないようにするために、キムヨンギュンの名前で私たちは再びロウソクを持つ」と宣言した。キムミスクさんも参加し、今は亡き息子にあてた手紙を朗読する形で壇上から訴えた。(要旨別掲)
 キムさんの同僚も登壇し手紙を朗読した。「私たちが働くところは依然として真っ暗で、安全と未来もまったく同じで真っ暗だ」「職場で死んで行く労働者の知らせを、相変わらず毎日聞いている」。そして「キムヨンギュンの死をないがしろにし、無視しようとする政府に負けず闘うことを約束する」との決意で締めくくった。
 追悼大会後には、キムさんの焼香所がある光化門を経て、大統領府までのデモが行われた。
 キムヨンギュンさんの闘いと無念の死は、青年をはじめとする韓国労働者階級の中に引き継がれ、現在につながる新たな非正規職撤廃闘争の火種となった。この闘いが日本でも絶対に必要だ。連帯し続こう。

キムミスクさんの発言(要旨)

(写真 手紙を朗読するキムミスクさん。背景にはチョンテイル烈士とキムヨンギュンさんが)

 私の愛するヨンギュン!!辛い人生を終えた私の息子ヨンギュン。私たち家族の人生を台無しにしたこの国が本当に恨めしい。
 あなたが離れて行った後、お母さんは多くのことを知った。あなたのように悔しい思いで死に、傷つく人々がこの間数万人になるのを見て、どれほど驚き怒りを持ったか。
 あなたに似た別のヨンギュンたちは、社会に出ても、ほとんどが非正規職か日雇いに追いやられ、危険で劣悪な環境にさらされ働くのはわかりきっている。雇用が不安で不利益を受けても言葉に出せず、悔しい人生を送らざるを得ない、あなたと似た数多くのヨンギュンたちを見るたびに、耐えがたい怒りが込み上げてきたんだ。発電所と同じで、建設業、造船所、鉄道、馬事会、郵便事業所など、この国の隅々まで、どこも安全なところがない。だからみんな悲惨な人生を送っているのを見て、心が張り裂けそうだ。
 お母さんは多くの人たちと連帯し、私たちが望む安全で健康な職場をつくることを祈り、切実にそれを望んでいる。そしてこの人たちを心から同志だと呼んでいる。同志というのは多くの気持ちがこもった、いい言葉だと思っている。
 昨年、多くの同志たち、社会の様々な団体、遺族と一般市民が一緒になって政府と闘った。それによって合意案も導き出したし、とても不十分ではあるけれど産業安全保健法も通過させ、特調委の真相調査を通して、会社側があなたにぬれぎぬを着せたことを完全に晴らすことになった。
 だけど、業務規則をすべて守っても死なざるを得ない構造がある。元請けは下請けに託しているので責任はないと言い、下請けは自分の事業場ではないので権限がないと言い、責任の空白が発生し、その中で働く息子は命を守る権限さえなかった。この非正規職たちの悔しさをどう表現したらいいのか、暗澹(あんたん)たる思いだった。
 いまだにお母さんは、こっちでやることが多い。大統領と政府与党は遺族の前で約束したことを一つも守らず、だから守らせなければならないし、特調委勧告案の履行も見守らなければならない。あなたを死なせた責任者が厳しい処罰を受けるようにしなければならない。そして大事なことは、別の人たちが私たちのように人生を壊されるのを防ぎたいと思っている。
 お母さんは今、私たちのような境遇に立たされている多くの人たちを手助けする道を進んで行くし、多くの人たちと手を取り合い、明るい光になれるよう努力する。あなたも応援して見守ってくれ。

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