イラク・イランの民衆に連帯する 8・6ヒロシマ大行動共同代表 中島 健

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週刊『前進』02頁(3099号02面02)(2020/01/16)


イラク・イランの民衆に連帯する
 8・6ヒロシマ大行動共同代表 中島 健


 始まったイラク民衆の反乱は勝利まで終わらない!
 アメリカ帝国主義の戦争政治による反乱への介入は火に油を注ぐだけだ!
 アメリカ軍によるイラン革命防衛隊・ソレイマニ司令官の暗殺は一挙に第3次世界大戦、核戦争の危機をもたらしている。確かに、1月8日のイランの報復は事前にイラクを通じてアメリカ軍に伝えられ人的被害はなかったとされる。トランプはそれを理由に「戦争は望まない」として、制裁強化でイランの体制変更ではなく政策変更を求めるとした。しかし、トランプとハメネイが放った報復の誓いは、実行されなければ、彼らにとって己にはね返る刃(やいば)ともなる。そして、戦争対峙(たいじ)の現実は、イラクとイランなど中東で新たに始まった「第2のアラブの春」ともいうべき民衆の総反乱に破壊的な影響を与えずにはおかないだろう。今回の事態の背景に何があるのか? 世界の労働者民衆はいかに闘うべきかを考えたい。
●米国とイランが敵対的だが共同支配するイラク
 2003年のイラク侵略戦争によってフセイン体制を打倒したアメリカは、当初の米軍直接支配の失敗、すなわちイラク民衆の占領軍への武装抵抗闘争の激発に対して、シーア派を政権につけることでしのごうとした。その結果はIS(イスラム国)によるイラク侵攻の招来だった。イラクはイラン革命防衛隊の指導下のシーア派民兵の動員でISから領土を奪還した。
 そうした経過を経て生み出されたのは、イラク政府の宗派への分配、支配層による国家財政の略取、膨大な規模の失業、新自由主義が若者から未来を奪う過酷な現実だった。2017年頃にはデモ隊と軍隊の衝突が発生し始めた。
 19年10月から始まった「イラク10月革命」は100万人単位の民衆蜂起だ。イラク政府による500人とも言われる無慈悲な殺戮(さつりく)と1万9千人とされる負傷者にもかかわらず、首相の辞任声明まで民衆の闘いは上り詰めた。若者の闘いに触発されてあらゆる階層の民衆が宗派を超えて抗議行動に参加し、その中心に労働組合と青年失業者が据わった。実に弾圧の先頭にはイラン革命防衛隊が立っていた。
●民衆反乱をたたき潰すための戦争衝動
 米軍とイランによるイラクの植民地支配からの脱却は、中東全域の階級闘争に激変をもたらす。だからこそ、イラク支配階級の一部であるシーア民兵は12月末、イラク北部に駐留するアメリカ兵を襲い、殺害した。アメリカ帝国主義の反撃があることを予想し、イラク民衆の反乱を「反米」の一点にねじまげ、体制変革を求める闘いを変質させようとした。しかし事態は予測を超えた。トランプの反撃は米大使館抗議と包囲を引き起こした。トランプはイラン革命防衛隊・ソレイマニ司令官の暗殺を強行した。
 イラクとイラン政府はトランプの戦争挑発に応じる構えを見せている。その戦時体制によって反政府運動、とりわけ労働組合運動を利敵行為として断罪し、壊滅を狙うだろう。しかし、2003年以来のイラクの新自由主義の現実への後のない闘いを開始したイラク人民は、その狙いに屈することはないだろう。しかも、闘いの中軸に労働組合が据わっている事実は、シリア革命が労働組合活動の不在によって、アサド対シリア自由軍の内戦という仮構のもとで圧殺されたのとは違う様相を見せずにはおかない。
 イラクの労働組合は03年のフセイン体制崩壊直後から宗派主義と闘い、国際連帯を求めてアメリカの国際港湾倉庫労働組合(ILWU)とも交流する組合だ。日米の労働者の責任で、アメリカ帝国主義のイラン戦争突入を絶対に防ぎ、イラク民衆の闘いへの圧殺策動を粉砕しなければならない。何よりも、自衛隊の中東派兵・参戦を阻止しよう。沖縄県民と団結し、ヒロシマから反戦の声を上げていく決意だ。

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