米軍が「使える核」実戦配備 核による先制攻撃狙うトランプ

週刊『前進』02頁(3109号02面02)(2020/02/20)


米軍が「使える核」実戦配備
 核による先制攻撃狙うトランプ


 米トランプ政権による核兵器の実戦使用=核先制攻撃に向けた準備が急ピッチで進み、世界核戦争の脅威が急激に高まっている。
 2月4日、米国防総省は「使える核」と呼ばれる低出力核弾頭を搭載した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を海軍が実戦配備したと発表した。潜水艦への小型核弾頭の配備は米軍史上初となる。続いて10日にトランプ政権が発表した2021会計年度(20年10月〜21年9月)の予算教書では、「財政健全化」を掲げて医療費などの福祉予算や対外援助などを大幅に削減する一方で、核兵器の「近代化」のための予算として前年度比約20%増となる289億㌦、昨年12月に創設された「宇宙軍」関連予算としては180億㌦を計上した。
 今回、海軍に実戦配備されたSLBMに搭載された低出力核弾頭「W76―2」は、爆発の威力を広島型原爆の3分の1程度(TNT火薬に換算して5㌔トン程度)に抑えたため、高威力すぎて実戦使用に向かないとされた従来の核弾頭と異なり戦術兵器として使用できるとされる。だが「低出力」といっても、その破壊力は米軍が所有する通常兵器の中で最も強力な爆弾とされるMOAB(大規模爆風爆弾)の500倍に達する。何より核兵器は爆発の破壊力に加え、強力な熱線、放射線、放射性降下物により広範囲かつ長期間にわたり除去不可能な恐るべき被害をもたらす。通常兵器とは次元が異なるのだ。
 トランプ政権は17年12月に発表した国家安全保障戦略(NSS)、それに基づく18年2月の核戦略見直し(NPR)で、「核攻撃の抑止や反撃に限定せず、通常兵器の脅威に対しても核で対応することを検討する」と打ち出し、核による先制攻撃を辞さないことを公然と宣言した。今回の実戦配備は、NPRに明記した「弾道ミサイルに搭載する低爆発力の小型核兵器の開発・配備」を具体化したものだ。昨年8月の中距離核戦力(INF)全廃条約破棄に続く、極めて重大かつ危険な暴挙であり、絶対に許すことはできない。
 昨年10月には、トランプ政権が核兵器搭載可能な新型中距離弾道ミサイルを沖縄をはじめとする日本全土に2年以内に大量配備する計画を持っていることが、沖縄の地元紙・琉球新報によって衝撃的に報道された。すでに21年までの配備に向けて米日協議が進んでいるとみられる。

「日本版海兵隊」が米軍と共同訓練

 重要なことは、米軍が「使える核」の本格的な導入に踏み切ったことと一体で、日本の自衛隊が日米安保体制のもとで果たす役割も大きく変化しようとしていることだ。1月25日〜2月13日に沖縄県金武(きん)町にある米軍演習場で行われた米海兵隊と「日本版海兵隊」=陸上自衛隊水陸機動団との共同訓練(沖縄での実施は初)は、そのような自衛隊の新たな役割を意識したものだ。
 水陸機動団は18年3月、相浦駐屯地(長崎県佐世保市)に二つの連隊を置いて発足し、米海兵隊を手本に敵地上陸などを想定した実動訓練を重ねてきたが、三つ目の連隊を23年までに沖縄に配備する計画がある。陸自幹部は「沖縄で陸自の活動を増やし、米軍とも密に連携していきたい。(今回の)訓練はその一歩で、地元の反応をみる。できれば定例化したい」(2月11日付毎日新聞)とその狙いを隠さない。
 トランプ政権は、ミサイル、爆撃機、ドローンなどを用いた空爆作戦(その切り札としての戦術核使用)に米軍の役割をシフトさせる一方で、敵地への殴り込み、ゲリラ掃討、現地住民の制圧や長期にわたる軍事占領など、主に米海兵隊が担ってきた地上軍としての役割を自衛隊に担わせようとしている。そして安倍政権はこの動きに合わせ、自衛隊を本格的な侵略軍隊へと変貌(へんぼう)させるために、憲法9条を破壊して「自衛の措置」と称した一切の戦争行為を合憲化する改憲を急いでいるのだ。
 米日帝国主義の新たな戦争策動と対決し、改憲・戦争阻止!大行進を全国で拡大しよう。
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