自治体AI大合理化許すな 職員削減・監視国家化が狙い

週刊『前進』02頁(3111号02面02)(2020/02/27)


自治体AI大合理化許すな
 職員削減・監視国家化が狙い


 自治体でAI(人工知能)導入による大合理化攻撃との闘いが始まった。政府は「100%デジタル化」を掲げ、職員の大量削減と全面外注化・非正規職化、全住民情報の統合による監視国家化に踏み出した。会計年度任用職員制度、マイナンバーカード粉砕と一体の攻防だ。労働組合の団結を固め闘おう。

「行政手続きの9割オンライン化」

 安倍政権は昨年12月、新たな「デジタル・ガバメント(電子政府)実行計画」を決定。「行政手続きの9割オンライン化」を掲げ、そのために全住民情報の統合とマイナンバーカードの普及を促進し、自治体へのAI・ロボットの導入で業務の効率化を進めるとした(表)。
 計画は「生産性の低下、人口減少に伴う地方消滅の危機」を訴え、デジタル化で「社会全体を作り変える」ことを求めた。しかし自治体業務の効率化=職員削減と民営化・外注化・非正規職化は一層の地域崩壊をもたらす。当然にも全国で労働組合を先頭に強い反対の声が広がっている。マイナンバーカードの普及も15%にとどまる。こうした現状にいらだち「利便性の向上」と「AI万能」のデマを振りまいて攻撃を全面化しようとしているのだ。

正規職員減らし保育や教育破壊

 攻撃が自治体職場で激化している。東京A区の保育関係職場では、過重労働によりミスが発生したことを解消するため、労働組合が正規職の増員を求めた。これに対し、当局はAIの導入を新年度より検討するとしてきた。これに激しい怒りが巻き起こっている。他区や地方都市でも保育所への入園審査にAIを導入し、職員削減の口実にしようとしている。しかし子育てをめぐる状況は家庭ごとに異なり、経験を積んだ職員によってしか対応できるわけがない。そうした正規職を減らし、AIで機械的に振り分けることなど許されることではない。
 さらに学校でも子どもたちをAIが選別・レッテル貼りすることが始まりつつある。滋賀県大津市は学校でのいじめの事例をAIが分析し経験の少ない教員に助言できるようにする。それで問題が改善するというのか。埼玉県は試験結果をAIが解析し学力の伸びの予測に使う。数字が全てとなり教育の根本の否定・破壊につながる。介護や障害者福祉、生活保護でもAIが判断し切り捨てる。そんな社会にしてはならない。

導入規制撤廃へ改悪法国会提出

 政府は2月4日、AI・顔認証技術などによる「スーパーシティ」のための国家戦略特区法改悪案を閣議決定し国会に再提出した。行政手続きの9割オンライン化と監視国家化は、住民情報を統合することが前提となる。しかしそれは明白な憲法違反であり、オンライン化も制限されてきた。そうした法規制のすべてを「戦略特区」で踏み破り、既成事実として広げようとしているのだ。
 さらに12日、政府・規制改革推進会議は全面的な規制撤廃の議論を始めた。AIやドローンの普及を挙げて、医療での対面診療、道路・橋などのインフラ点検での目視確認、打音検査を求める規制を見直す。AIとロボットによる介護職員の代替や、副作用の大きい医薬品の販売も含めた規制撤廃を検討する。
 「AIが誤った判断をした場合の責任の所在」も検討するという。しかし失われた命は二度と戻らない。重大事故が予想されるにもかかわらず、規制を撤廃することなどありえない。

「AI万能」論のうそ暴き粉砕を

 「AI万能」デマが崩壊する事態が続出している。
 AIによる無人運転システムの横浜シーサイドラインは昨年6月、乗客15人が負傷する事故を起こした。12月、全国53自治体の外注先のデータセンターで大規模システム障害が起き、住民票や税務、介護保険申請ができなくなった。1月にはさいたま市が「AIなら作業が数秒で終了する」として導入していた認可保育所の入所者選考システムのトラブルで、職員が休日返上の確認作業に追われた。
 にもかかわらず安倍は東京五輪と新型肺炎の感染拡大をも口実に、AIとテレワーク、顔認証カメラの増設を一気に進めようとしている。JRは運転士・車掌の職名の廃止と自動運転の導入をやろうとしている。絶対に許してはならない。
 AI合理化による労働者の大量削減と全面外注化・非正規職化、組合破壊に絶対反対する職場の闘いが、監視国家化を阻む。労働組合の闘う団結を固めて安倍の攻撃を打ち破ろう。

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デジタル・ガバメント実行計画(2019年12月20日閣議決定)
●国、地方公共団体、民間を通じ  
 たデジタル・ガバメントを推進
 し、社会全体をデジタル化
●行政手続きの9割オンライン化
 ―住民記録、子育て・教育、税、
 医療・介護・福祉関係の手続き
 →全住民情報の統合を前提に
●行政保有データの100%オー
 プン化→民間が利用可能に
●デジタル社会の基盤であるマイ
 ナンバーカードの普及とマイナ
 ンバー制度の利活用の促進
●AI・ロボット化/テレワーク 
 →職員の大量削減、外注化へ
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