狭山事件―この権力犯罪を許すな(下) 「証拠」をねつ造し「犯人」に

発行日:

週刊『前進』02頁(3111号02面04)(2020/02/27)


狭山事件―この権力犯罪を許すな(下)
 「証拠」をねつ造し「犯人」に


 1963年、狭山事件の犯人にでっち上げられ殺人罪で起訴された石川一雄さんは、74年10月31日、東京高裁(裁判長・寺尾正二)で無期懲役判決を受け、下獄した。94年に仮出獄し、現在は3度目となる再審請求にすべてをかけている。警察は石川さんに強いたウソの「自白」のつじつまを合わせ起訴に持ち込むために、被害者の万年筆の偽物を石川さん宅に仕掛けた。この卑劣きわまる権力犯罪を暴いたのが、非破壊検査の専門家の下山進博士によるインクの鑑定だ。

「被害者の万年筆」は偽物

 寺尾判決は、被害者の持ち物「カバン、万年筆、腕時計」が石川さんの「自白」通り発見されたことを、犯人しか知らない「秘密の暴露」だと認定した。とりわけ万年筆は石川さんの自宅(勝手口のかもい)で発見されたという意味で有罪の重要証拠とした。
 しかし寺尾判決は、かもいにあったかどうかだけを述べ、インクについては沈黙した。有罪の決め手となる証拠は、それが偽物なら「自白」もウソになり、有罪の根拠はすべて崩れる。インクを鑑定すれば万年筆の真偽が判明する。

インクの成分元素解明した下山鑑定

 下山博士は、まずインクの色素、次に元素と2度にわたって分析した。
 下山第1鑑定(2016年8月提出)は、インクを紙に吸わせて混合物を分離させるペーパークロマトグラフィーという方法でインクの色素を分析した。
 下山第2鑑定(18年8月提出)は、検察庁に分析装置を持って乗り込み、インクにX線を照射して発生させた蛍光X線を分析して成分の元素を分析。とくにクロム元素と鉄元素が含まれているかどうかを調べた。
 対象は、❶被害者が事件当日の授業で書いたペン習字浄書のインク、❷石川さん宅で「発見」された万年筆で、事件当時、被害者の兄が書いた数字のインク、❸被害者のインクびんのインク、❹被害者の級友のインクびんのインク、❺狭山郵便局のインク。(図)
 その結果、「発見万年筆」のブルーブラックインクは鉄元素を含みクロム元素は含まず、被害者の万年筆のライトブルーインク(商品名はジェットブルーインク)はクロム元素を含み鉄元素は含まなかった。(ジェットブルーインクの成分元素はその後変化)

本物ならあるはずのクロム元素なし

 再審請求では、東京高裁も最高裁も「後から(❹か❺で)ブルーブラックインクを補充したかもしれない」として請求を棄却した。しかし下山鑑定は、文字が書けなくなるまでジェットブルーインクを使い切り、そこにブルーブラックインクを入れたとしても、ジェットブルーインクの成分元素が残ることを突きとめた。「発見万年筆」が被害者の持ち物なら、❷はクロム元素を含んでいなければならない。しかし含んでいなかった。この万年筆は偽物だ。
 下山鑑定は、有罪の証拠とされた「被害者の万年筆」が偽物であり、狭山事件が警察・検察・裁判所という国家権力総ぐるみの権力犯罪であることを暴いた。再審を開始すべき「新規かつ明白な証拠」であり、東京高裁はただちに事実調べ・再審を行わなくてはならない。

石川宅に警察が仕掛けた

 そもそも「発見」された万年筆は石川さん宅への2度の家宅捜索では「発見」されず、3度目に「発見」された。2度目にはかもいを捜索するところを石川さんの兄が見ている。1、2回目に捜索した元警察官たちは後日、口々に「かもいには何もなかった」と証言した。裁判所は「目立つところだから、かえって見落とした」「記憶はあてにならない」と切り捨てたが、警察が偽装万年筆を石川さん宅に仕掛けたことは疑いようもない。当然だが、「発見万年筆」からは被害者の指紋も石川さんの指紋も検出されていない。
 これを権力犯罪と言わずに何というのか! もう言い逃れは許さない。無実の石川さんにこれ以上「見えない手錠」をかけさせておくわけにはいかない。
 寺尾判決の1カ月前の74年9月26日、石川さんが二審の最終意見陳述を行う公判には11万人が集まり、日比谷公園を埋めた。労働者階級が分断をうち破って決起し、団結の力を見せつけ、国家権力中枢を揺るがした。この闘いをもう一度やろう。
 安倍政権は腐敗を極め、日々の暮らしをおびやかして改憲・戦争に突き進んでいる。これへの怒りがいたるところで噴き出している今ならできる。
 石川一雄さんと連帯して東京高裁包囲3・22狭山中央闘争に結集し、事実調べ・再審の扉をこじ開けよう。
    ◇
●石川一雄さんと連帯し狭山再審を!棄却策動粉砕!改憲・戦争止めよう!
東京高裁包囲3・22狭山中央闘争 
3月22日(日)午前10時30分 日比谷公園霞門集合 11時デモ出発
呼びかけ 全国水平同盟/部落解放東日本共闘会議

このエントリーをはてなブックマークに追加