『「全臨労」走り続けた五〇年』を読んで 「非正規職だけの社会」を許さぬ闘いの原点ここに 水戸刑務所在監 十亀弘史

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週刊『前進』04頁(3112号04面03)(2020/03/02)


『「全臨労」走り続けた五〇年』を読んで
 「非正規職だけの社会」を許さぬ闘いの原点ここに
 水戸刑務所在監 十亀弘史


 「全臨時労働者組合結成五〇周年記念誌」とされる『「全臨労」走り続けた五〇年』(同誌刊行委員会発行)は、「非正規職だけの社会を許さない」闘いの原点を明らかにする熱い一冊です。三部から構成され、第一部は「全臨労運動の理念と闘い」、第二部は「手記・座談会・インタビュー」、第三部は「資料編」となっています。
 組合OB諸氏の回想誌ともいえますが、ノスタルジーを語るものでは全くありません。非正規雇用労働者が全労働者の4割を占める現状と闘い、それを変革するために自分たちの経験を生かそうという意思が鮮明です。また「全臨労が目指した産業別統一労組を文字通り実践したのが全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部であり、従って関西生コン支部を支援防衛する闘いと全臨労のような労働組合を再建する闘いは一体である」としています。
 現在、合同・一般労働組合全国協議会の事務局長である小泉義秀さんは1979年に全臨労の執行委員長に就いていて、OBの中では比較的若手になるようですが本書の随所で非正規労働者を階級的に組織する運動の神髄を語っています。 全臨労は、新聞発行本社や販売店など新聞産業に働く臨時労働者の統一組合(個人加盟)として、1969年10月に結成され、70年代前半の最盛期には2000名を超える組合員を擁していました。本書では主に新聞販売店の臨時労働者、とりわけ「新聞奨学生」の闘いが明らかにされています。
 新聞奨学生制度は、販売店の求人難の解決策として、各新聞社の作り上げた悪辣(あくらつ)な労働制度です。在学の4年間の配達を続ければ、新聞社が入学金や授業料を無償で貸し付けるが、途中でやめればその全額を直ちに返済しなければなりません。しかもその貸与金とは、結局は、賃金から差し引いたものにすぎません。さも新聞社の厚意で与えるかのようなかっこうを取って、4年間の貸与金でしばりつけ、新聞配達から抜けられないようにし、そうすることによって、どんなに劣悪な労働条件でものまざるを得ない状態に押し込め、徹底して搾り上げる制度なのです(新聞奨学生制度は現在も残っています)。
 販売店の労働環境は、極めて過酷です。例えば6畳一間に8人といった居室で「1週間同じみそ汁を温め直して出すような食事」を供され、学校に行っている時間を除いて早朝4時から深夜11時まで働かされます。しかも、休刊日のない当時は年に一度の休日しかありません。「このような販売店の現実を変えたいと闘いに立ち上がるのは人間としての根底からの決起であり、怒りの爆発だった」
 労働者は、自主的な「店員会議」を勝ち取って徹底的に討論し、朝食に毎朝卵一個をつけろといった闘いからはじめて、賃上げや週休制・有給休暇の要求、増ページといった労働強化への抗議などを、販売店(とその背後の新聞資本)に突き付けていきます。また奨学生制度を弾劾する闘いを貫きます。集会を開き、ストライキに決起し、激しいデモを行います。発行本社が黙認するヤクザによるむき出しの暴力や警察による弾圧にも屈しません。そしてそれらの闘いを他の販売店へ、地域へと広げ、新たな支部や分会を組織していきます。それは職場における具体的な課題にこだわり抜くと同時に「明確に階級的視点」を堅持する闘いでもありました。
 ただ、その闘いは、全体として党派的に統一されたものではなく、デモ隊のヘルメットも「色とりどり」でした。しかし、店員会議を通して職場・職場の独自性を生かしながら、常に「販売店の労働者を丸ごと、全員を組織する論理と実践を持って闘いぬかれ」ました。私たちが職場においてその闘いから学ぶべき要素は、今だからこそ、多くあるはずです。(中略)
 では元気で!
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