「緊急事態」は戦争体制づくりだ 防衛大卒業式で安倍が9条改憲宣言

週刊『前進』04頁(3120号03面02)(2020/03/30)


「緊急事態」は戦争体制づくりだ
 防衛大卒業式で安倍が9条改憲宣言

(写真 国会前で緊急事態法に抗議【3月13日】)


 3月22日、安倍首相は防衛大学校(神奈川県横須賀市)の卒業式で訓示し、あらためて自分の手で憲法9条を改悪することへの執着を表した。
 訓示の中で安倍は、2月2日に護衛艦たかなみに乗艦して自衛隊の中東派兵を見送ったことを「誇らしく思う」などと振り返った上で、「一点、残念だったのはご家族が見守る一角に『憲法違反』というプラカードが掲げられていたこと。隊員の子どもたちが見たらどう思うだろうかと思うと言葉もない。隊員たちが高い士気のもとで、使命感を持って任務を遂行できる環境をつくっていかなければならないと、あらためて強く感じている」と述べ、将来の幹部自衛官に、戦争放棄・戦力不保持をうたう憲法9条の改悪への意欲をアピールした。自衛隊の最高指揮官としての自分を押し出しながら、「諸君も高い士気のもとで使命感をもって戦場に行き、名誉ある犠牲になれ」とあおっているのだ。
 かつてのイラク戦争では、政府は2003年から09年まで自衛隊を送り続けた。戦闘での死者こそなかったものの、帰国後に5600人の陸上自衛隊員のうち21人、3600人の航空自衛隊員のうち8人が、在職中に自殺した。派兵された池田頼将元3等空曹は2006年に負傷して退職に追い込まれ、国家賠償を求めて闘っている。自衛隊の中東派兵に対し「憲法違反」「危険な場所へ行くな」と呼びかけるのは当然であり、家族にとっても心底からの叫びだ。

腐敗と無法を隠し基本的人権を破壊

 新型コロナウイルスの流行によって人々が苦境に追いやられている中で、むしろこの情勢を利用して、改憲と戦争体制づくりを一気に進めることが、安倍の頭の中を占めている。同時に、自らが手を染めた森友・加計学園、桜を見る会、検察人事介入などの腐敗と無法の数々をごまかし、追及を逃れようとしている。
 安倍政権は、新型インフルエンザ等対策特別措置法改正案を国会に提出し、わずか3日間の審議で13日に成立させた。首相が「緊急事態」を宣言することで、人々の外出や移動、集会、イベント、デモ行進などを禁止することが可能になる。まさに権力による基本的人権の剝奪・破壊であり、憲法への緊急事態条項新設の先取り的攻撃だ。

東京五輪は中止!闘う労組の再生を

 これは将来の話ではなく、今現に「自粛」という名でわれわれに強制されつつある事態である。学校は一斉休校に、催しは軒並み中止に追い込まれ、非正規職労働者から真っ先に仕事を奪われ、生活は困窮し、経済は冷え込み、社会全体が機能不全に陥りつつある。人々には何の補償もなく、忍耐だけが強いられている。
 そうした中で、防大卒業式などの国家的威信にかかわる行事は、平然と遂行された。人々に恐怖と不安をふりまき、安倍は得意満面で「国難に対処する強いリーダー」を気取っている。
 この期に及んで東京五輪は予定通り開催とはいかなくなったが、中止ではなく来夏まで延期と発表された。だが「1年たてば収束する」と言える根拠や見通しは何もない。あるのは来年9月までという安倍の自民党総裁任期の期限だけだ。東京五輪の大破産を認め、直ちに中止せよ。
 コロナショックは、新自由主義に覆いつくされたこの資本主義社会が、すでに崩壊のふちに立たされていたことを、はしなくも暴露した。労働者人民が自らの生活と健康を守り生きていく道は、もはや安倍政権打倒を抜きにはありえない。
 闘う労働組合を職場から再生させ、改憲・戦争阻止!大行進運動を今こそ大きく発展させよう。

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