コロナ危機に際し訴えます 今、必要なのは団結と闘い 政治の流れを変えよう 前全学連委員長 斎藤郁真

週刊『前進』02頁(3121号02面01)(2020/04/02)


コロナ危機に際し訴えます
 今、必要なのは団結と闘い
 政治の流れを変えよう
 前全学連委員長 斎藤郁真

(写真 改憲・戦争阻止!大行進実行委員会が新宿デモに先立ち新宿駅南口で大演説会。斎藤・前全学連委員長が安倍打倒を熱烈に訴えた【3月22日】)

今の社会システムこそが問題だ

 新型コロナウイルス感染症が猛威を振るい、生活が一変しています。新型コロナ感染症はもちろんひとつの危機であり、決して軽視できません。科学的に正しいリスク評価は当面困難で、膨大なデータを積み上げて総括的分析がなされるのはもっと後にならざるをえないでしょう。
 私たちは不安のなかで日々を過ごし、しかし、それでも生きるため、社会を維持するために外に働きに出なくてはなりません。そのなかでコロナを口実とした解雇・休業が吹き荒れ、卒業を控える学生たちには内定切りが横行しています。突然の学校の一斉休校など大規模な「対策」がこれらの原因にすらなっています。新型コロナ感染症の問題というより、それに対応する社会・国家のあり方を問うものになっているのではないでしょうか。
 地球の恵みを活用して豊かに暮らせる以上、感染症や災害対策という「非常時」を想定した構えを持つのは当然です。コロナ問題で明らかになったのは、そのような当然の力がこの社会から奪われていたということではないでしょうか。
 なぜ病院は検査を行えないのか。なぜマスクのような基本的な物資の在庫もないのか。なぜ新型のウイルスの蔓延(まんえん)という人々が助け合うべきときに、街頭に放り出される人が増えるのか。なぜ生活への補助金や休業補償すらほとんど出ないのか……。起きていることは明らかにおかしいではありませんか?
 この国は、自分たちが危機のときにはすぐに増税の話をするのに、私たちの生活の危機には補助金を出すどころか特定業種への商品券で利権を維持しようとしています。自民党が提案する「和牛商品券」が話題になっています。しかし、たとえば非正規労働者の現実は、時給1000円で週40時間、月160時間働いたら月16万円にしかなりません。家賃や光熱費を払ったら10万円くらいなくなってしまいます。これはあくまで最低賃金がなんとか1000円に届くような都市圏の話です。労働条件がどんどん悪くなっているなかで、そもそも「和牛」なんて売れるわけがありません。畜産業で生計を立てている人たちのことを考えても、補助金を出してなんとかなる話ではありません。危機は事実ですが、本当の危機はむしろこれまでの政治・経済政策によってすでに起きていたのではないでしょうか?

安倍は誰を代表しているのか?

 日本は他国と比較しても新型コロナ感染症の検査数が極端に少ないことが知られています。それはそもそも保健所が少なく、人員がおらず、陽性患者を隔離するための病床が少なく(東京で118床!)、要は検査すらできない状況にあるからでした。しかも3兆円ものカネが動くオリンピック利権にこだわり続けたために、オリンピックの延期が避けられなくなってやっと対策を始めた始末です。
 みなさんは、「国立病院立ち枯れ作戦」という政策を知っているでしょうか。1986年に厚生労働省(当時は厚生省)が発表した「国立病院・療養所の再編成(全体計画)」にもとづいて統廃合を進めるため、あえて予算を出さずにつぶさせるものでした。感染症対策の最前線である保健所も96年度までは800カ所以上が確保されてきましたが、97年度に急減、2010年には500カ所を切っています。
 昨年9月、厚労省は「実績が少ない」「医療費・人件費が効率的でない」から「統廃合が必要」だとした424の公立・公的病院を公表しました。公立・公的病院は地域医療の要です。経済合理性で判断されるべきではないのに、平然とそんな議論がされています。新型コロナウイルスの蔓延が数年遅れていたら、日本はどうなっていたでしょうか。医療は「検査をしすぎると崩壊する」のではなくそもそも崩壊していた、させられていたのです。
 約169兆円もの年金積立金を運用するGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は2014年以降、アベノミクス「第3の矢」の一環で株式投資の比率を倍増させました。株価を支えるために年金積立金が使われてきたのです。消費増税の一方で法人税は減税され、年金積立金も企業活動に奉仕させられ、「会社あっての雇用だ」「パイが大きくなれば労働者にも分配される」と言われてきました。しかし、そんなことは起きないと、みなさんも本当はわかっているのではありませんか?
 日本企業の内部留保は過去最大を記録し続けて2018年度には約463兆円、そのうち預金・現金は200兆円以上あることがわかっています。会社と労働者が一体ならば、なぜこんなことが許されるのでしょうか。「首都封鎖」すら議論しているこの国は、なぜみんなの労働の成果に今なお手をつけようともしないのでしょうか。安倍首相が誰の代表か、はっきりしていませんか?

生きるために共に声を上げよう

 もういいんです。怒ろう。財界の代表に主導権を渡して、「緊急事態宣言」で権力を集中しても問題は解決しません。休業補償すらまともに払われないまま、家で我慢している間にさらに何が行われるのでしょうか。それこそ多くの人の生活が危機に追い込まれます。コロナを心配して集まることすら自主規制すれば安倍政権の思うツボではないでしょうか。
 あえて激しいことを言えば、検査すらできないこの国で新型コロナウイルスにかかって一人でいる方がまずくありませんか。連絡を取り合い、助け合えること、仲間がいることがどれほど重要か。病気で寝込んだときにこそ思い知ることがありますよね。
 私たちに今必要なのは団結することです。もちろん可能な限りマスクをつけて、アルコール消毒をして、配慮しあって。みんなの危機なんて他人事の財界に、この国に、集まって声を上げて対抗しましょう。政治の流れを変えましょう。この「非常事態」を「戦時の予行演習」にさせないためにも。労働組合に、学生自治会に、さまざまな地域の団体に、結集してともに声を上げていきましょう!
このエントリーをはてなブックマークに追加