緊急経済対策はインチキだ 休業補償拒否し大資本を救済

週刊『前進』04頁(3124号03面01)(2020/04/13)


緊急経済対策はインチキだ
 休業補償拒否し大資本を救済


 安倍政権は緊急事態宣言と同時に「史上最大108兆円の事業規模」とうたう経済対策を発表した。しかし現金給付は6兆円のみ。休業補償も消費税凍結も拒否。厳しい条件でごく一部の世帯、中小企業・個人事業者が何カ月後かにわずかの給付を得られるだけ。その一方で大資本に巨額の資金を回そうとしている。

月収20万→11万でもダメ

 安倍の緊急経済対策はインチキだ。(表参照)
 新型コロナウイルスの感染拡大と政府の緊急事態宣言による長期の休校と自粛要請で多くの労働者が休業・解雇され、生きる糧すら奪われている。命と生活の危機が迫っている。直ちに無条件で全員に休業補償・損失補填(ほてん)が必要だ。
 ところが緊急事態宣言で学校など公共施設に加え、ライブハウスや劇場など人が集まる民間施設に営業停止を要請・指示できるようになった。厚生労働省は、休業は「企業の自己都合」とはいえなくなり「休業手当を払わなくても違法ではなくなる」としている。無責任にも安倍は休業や解雇に伴う補償や補填を拒否し続けると共に、さまざまな条件を付けてほとんどの労働者が現金給付を受けられないようにしている。
 経済対策は「1世帯当たり30万円の現金給付」を掲げる。しかし直ちに手に入る一律の給付ではない。まず給付の対象は、①世帯主の月収が住民税非課税水準に減ったか、②月収が半分以下となり住民税非課税水準の2倍以下に減った世帯だけに絞られる。単身世帯では年収100万円以下が住民税非課税となるため、月収が8・3万円以下になったことが条件となる。たとえば月収20万円だった労働者の収入が11万円に減っただけでは給付要件に入らない。また年収700万円が一気に350万円に半減しても給付を受けられない。政府の想定によると、こうした条件を付けることで全世帯の8割が対象から外される。
 そもそもコロナ収束が見通せない状況にもかかわらず、「家族が何人いても1世帯で30万円の給付が1回だけ」では少なすぎる。収入が住民税非課税水準にまで減った世帯には手厚い福祉が直ちに必要だ。1割でも2割でも収入が減れば大変なのに、その程度なら自助努力でどうにかしろ、ということではないか。
 さらに市町村の窓口で自己申告し、収入が減ったことを証明する書類を提出することが求められる。そのためには時間的余裕や専門知識がなければならず、ほとんどの人が申告書類を出すことすらできなくなる。生活保護の申請を減らすために様々な条件を付ける「水際作戦」と同じことが狙われている。その上、自治体の窓口に多くの人々が殺到することになる。担当の職員は通常業務に加えて大変な過重労働を強いられ、作業が遅れに遅れることは不可避だ。
 「中小企業に最大200万円、個人事業者に最大100万円を給付」も同様だ。すでに資金繰りに苦しむ中小企業が金融機関からの融資を受けるために自治体の窓口に殺到している。東京・港区では2カ月近く予約が詰まっている。要は即座に必要な資金が手に入らない構造になっているということだ。収入が激減している企業・個人事業者には、何カ月か先の200万円、100万円の給付だけでは「焼け石に水」でしかない。4月2日現在、新型コロナ問題による倒産は33件。3月中旬以降に急増し「日銭を当てにしている飲食店などは特に厳しい。手元資金はもって1〜2カ月のところも多いだろう」という懸念が広がっている。それは労働者の一層の大量解雇に直結する。

火事場泥棒狙い規制撤廃の予算

 安倍はコロナ収束のめども立たないうちから「火事場泥棒」のように、これまで現場の抵抗があってなかなかやってこれなかった新自由主義のあらゆる施策をここぞとばかりに打ち出し膨大な資金を投入しようとしている。
 緊急経済対策は、1世帯に布製マスク2枚配布などの予算も入った「緊急支援フェーズ」に続けて「V字回復フェーズ」なるものを設定した。「官民挙げた経済活動の回復」として1泊2万円の旅行代補助、イベントのチケット代補助などの財政支出に3・3兆円(事業規模8・5兆円)。さらに「将来を見据えた強靭(きょうじん)な経済構造の構築」として生産拠点の国内回帰、テレワーク導入促進などに10・2兆円の財政支出(事業規模15・7兆円)を計上した。
 同時にコロナに乗じた規制撤廃を加速。医療にとって不可欠な対面診療の原則を踏みにじって初診時からインターネットによるオンライン診療の解禁と財政支出に踏み切った。これ自体が一層の医療破壊を促進する。本当に許せない。

直ちに消費税を撤廃しろ

 コロナの感染拡大と大恐慌が労働者民衆を直撃している。新自由主義によって医療破壊が進行すると共に非正規職化と貧困が拡大。実質賃金が下がる一方、消費税や社会保険料などが上がり続けている。預貯金や蓄えがすぐに底をつく世帯が膨大に形成されてきた。その上にコロナによる長期休業・大量解雇が襲いかかっている。もはや誰もが闘いなしに生きていけない重大情勢に入った。
 安倍は「雇用と生活は守り抜いていく」と言いながら、「個別の損失を直接補償することは現実的ではない」「全てを保障することはできない」と繰り返す。労働者のために出せる金などないということだ。
 しかし2018年度の大企業の内部留保は463兆1308億円、現預金も100兆円近くに上る。全て労働者を搾取してためこんだ金だ。さらに20年度の防衛費は5兆3千億円を超えている。労働者が生きるために国と資本から奪い返すべき金、吐き出させるべき金は膨大にある。
 命と生活を守るのは安倍の緊急事態宣言ではなく、闘いだ。保険料や納税の猶予では問題は解決しない。「徳政令」が必要だ。消費税は直ちに撤廃させよう。
 4月7日夕、新宿駅南口で行われた緊急事態宣言弾劾の街頭宣伝行動で多くの労働者の怒りと共感の声が寄せられた(詳報1面)。
 だれもが闘いを求めている。怒りが地に満ちている。流れを変える反転攻勢の時だ。労働組合の再生と社会の根底的変革をかけて闘おう。コロナ緊急事態宣言をはねのけ、命を守る5・1メーデーデモをかちとろう。

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緊急経済対策のインチキ
■「事業規模は108兆円」
→財政支出は39兆円、融資分を加えた金額 が「事業規模」/現金給付は6兆円のみ
■「1世帯当たり30万円の現金給付」
→一律給付ではなく、世帯主の月収が住民 税非課税水準に減ったか、月収が半分以 下となり住民税非課税水準の2倍以下に 減った世帯のみ/市区町村の窓口で自己 申告し書類を提出することが必要
■「中小企業に最大200万円、個人事業者に最大100万円を給付」
→今までに比べ収入が半減していなければ 給付しない/自粛要請に応じた企業に直 接的な損失補填はしない

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