米中激突で強まる戦争の危機(下) 日米安保を「核戦争同盟」に転換 コロナ危機の中で資金・資源を核兵器増産につぎ込むトランプ

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週刊『前進』02頁(3125号01面03)(2020/04/16)


米中激突で強まる戦争の危機(下)
 日米安保を「核戦争同盟」に転換
 コロナ危機の中で資金・資源を核兵器増産につぎ込むトランプ

(写真 沖縄で初となる陸自水陸機動団と米海兵隊との共同訓練で米兵【右から2人目】と話す陸自隊員ら【2月9日 金武ブルービーチ訓練場】)

 本紙前々号で述べたように、米帝トランプ政権の軍事戦略は、2018年から本格的に開始した中国に対する貿易戦争と一体の徹底的な中国敵視に貫かれており、その最大の特徴は核兵器の実戦使用(先制核攻撃)を戦略の柱に据えたことにある。しかもトランプは、驚くべきことに、新型コロナウイルス感染症の大流行の真っただ中で、プルトニウム爆弾の大量生産に踏み込んでいる。

プルトニウム爆弾の大量生産を画策

 米国の核政策を担当するエネルギー省国家核安全保障庁は4月3日、連邦政府の官報「フェデラルレジスター」で、サウスカロライナ州の核施設サバンナリバーサイト(SRS)に建設する予定の新たな工場の環境アセスメント案を公表した。この工場では、プルトニウム爆弾の心臓部をなす「プルトニウムピット」を年間125個製造することを目標とし、2030年までに最低でも年間50個製造を達成する計画だ。
 元々はウラン・プルトニウム混合(MOX)燃料製造工場として07年から建設が進んでいた施設だったが、巨額の費用がかかる上に完成が30年以上も遅れる見通しとなったため、オバマ前政権下で建設計画が凍結された。それをトランプ政権が、18年2月に発表した核戦略見直し(NPR)に基づき、同年5月にプルトニウムピット工場に変更して建設計画を再開させたのだ。完成すれば、米国内のプルトニウムピット工場としては、1992年にコロラド州の工場が閉鎖されて以来初となる。
 この核施設を監視する「SRSウォッチ」など三つの反核団体は、今回の環境アセスメント案の公表に対し、「エネルギー省はコロナの脅威を無視し、それに向けるべき資金・資源を核戦争計画に使おうとしている」としてただちに抗議声明を発している。
 重要なことは、トランプ政権による新たな核兵器製造計画が、かつての米ソ核軍拡競争の頃とは異なる次元で、核兵器を実際に使用する軍事戦略と結びついていることである。

核爆発後の戦場で兵士に被曝を強制

 2018年2月のNPRでは、「核攻撃の抑止や反撃に限定せず通常兵器の脅威にも核で対応することを検討する」として、核兵器使用基準の大幅な緩和と核による先制攻撃を公然と宣言し、「低爆発力の小型核兵器の開発・配備」や「新型核巡航ミサイルの開発」も明記した。トランプはその直後の記者会見で、「近代化した最新鋭の核戦力を保有し、中国とロシアに対する米国の優位の低下を覆す」とぶち上げた。18年11月には、ロシアと結んでいたINF(中距離核戦力)全廃条約からの離脱を宣言(翌年2月に破棄通告、8月に失効)。今年2月には国防総省が低出力核弾頭「W76―2」を搭載した潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の実戦配備を発表した(本紙3109号)。
 加えて重大なのは、昨年6月11日付で米統合参謀本部がまとめた内部文書「核作戦」である。文書では、「米国は様々なシナリオで核戦力を使用できる」「核使用は戦闘領域を根本から変え、司令官が紛争でどう勝利するかを左右する状況をつくり出す」と核兵器の戦略上の効能を力説。さらに「核環境の中での作戦」と表題を付けた一節で、「陸軍・海兵隊と特殊作戦部隊は核爆発後の放射線環境の中で全作戦を遂行する能力を持たねばならない」と述べ、核爆発後の環境下でも地上戦を継続できるように部隊を強化せよと要求している。核攻撃だけでは戦争目的を達成できないことを承知の上で、統合参謀本部は、自国や同盟国の兵士に放射能被曝を強いながら地上戦を遂行させようとしているのだ。

本土と沖縄を米軍のミサイル基地に

 前回述べた通り、トランプ政権の新軍事戦略は、米軍の役割を核兵器の使用も含めた空爆、ミサイル、ドローン攻撃などにシフトさせると同時に、地上戦を極力同盟国に負担させることを追求している。これは日米安保を本格的な「核戦争遂行同盟」へと原理的に転換させることを意味する。
 昨年8月のINF全廃条約失効後、トランプはただちにアジア諸国に新型中距離ミサイルを大量配備する「アジア・ミサイル網」構想を発表した。続いて10月3日付琉球新報では、トランプ政権が今後2年以内に沖縄など日本全土に中距離ミサイルを大量配備する計画を持っていることが衝撃的に暴露された。日本本土や沖縄、韓国などを丸ごと米軍の核貯蔵庫=核戦争出撃基地にすることが本気で構想されているのだ。
 こうした中で、「米軍は核攻撃、自衛隊は地上戦」という日米安保体制の新たな戦略配置の構築が進んでいる。18年3月に発足した陸上自衛隊水陸機動団=「日本版海兵隊」が米海兵隊との訓練を増加させているのもその一環である。海兵隊とは、敵地への奇襲、ゲリラ勢力の掃討、現地住民の制圧や軍事占領などを担う「殴り込み部隊」である。あらゆる侵略戦争で最も過酷な前線部隊にされ、死傷者やPTSD(心的外傷後ストレス障害)になる兵士もけた違いに多い。安倍政権はこれを自衛隊にやらせるためにも、憲法9条を破壊して一切の戦争行為を「自衛の措置」として合憲化する改憲を今まで以上に急いでいるのだ。
 米中激突が生み出す核戦争・世界戦争を阻止するために、全世界の労働者民衆と連帯して改憲阻止・日帝打倒へ闘おう。
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