マイナンバー拡大やめろ 監視と徴税の強化が目的だ 口座情報の登録義務化も狙う

週刊『前進』02頁(3135号02面01)(2020/05/28)


マイナンバー拡大やめろ
 監視と徴税の強化が目的だ
 口座情報の登録義務化も狙う


 「10万円給付」を機にマイナンバーの情報を拡大し、預貯金口座とひも付ける策動が進んでいる。「給付の迅速化のため」と称して今国会で希望者を対象に法制化し、次は義務化も狙う。国家による全人民監視と徴税の強化が目的だ。

「迅速な給付」は大うそだ!

 政府・与党は、「給付金などを速やかに支給できるように」マイナンバー制度を活用し、希望者に振込先の口座を登録してもらい、「今後の別の給付でも使えるように」法整備を行うと言い出した。10万円給付の遅れとマイナンバーカードをめぐる役所の大混雑、現場のすさまじい過重労働をも逆手にとって、利便キャンペーンを強めている。しかしそれは大うそだ。
 そもそも安倍政権はコロナ危機に対する補償などまともにやる気がない。休業補償は拒否したままだ。わずか10万円の一律給付の決定も4月末まで遅らせた。今年度予算と第1次補正予算、次の第2次補正予算案も大資本の救済が中心だ。資本に回す金はあっても労働者人民からは搾り取ることだけを考えている。休業と解雇・失業、貧困に苦しむ多くの人々への給付はほんの付け足しでしかない。しかしそれをも使って執拗(しつよう)にナンバーカードの普及と口座情報の登録を進めようとしている。
 続いて来年の通常国会で義務化する案が出ている。国民民主党なども加わって進めようとしている。全預貯金口座に加え年金口座についてもひも付けること、ナンバーカード取得の義務化も検討されている。
 当初からマイナンバー制度は税の厳格な取り立てと監視を目的に導入された。コロナ危機と大恐慌への突入で不可避となる財政破綻の中で、この制度が「迅速な給付」どころか、すさまじい増税・大衆収奪と社会保障打ち切りのために使われることは間違いない。
 マネーロンダリング(資金洗浄)やテロ資金、脱税などの「捜査」を口実に、預貯金や年金という生活の土台となる情報を、国家が掌握・監視できるようにする。そうなれば、ごくわずかの収入でも「脱税容疑」をでっち上げて捜査・弾圧の対象にできる。資産の海外移転や巧妙な節税を長年やっている資本家ではなく労働者人民から徹底的に税を取り立てるために使う。こうした強収奪と国家権力による支配を強化するためのマイナンバー制度など直ちに廃止するべきだ。

個人情報を掌握し支配の強化を策動

 政府は昨年12月、ナンバーカードを基盤に、2024年度までに行政手続きの9割をオンライン化する計画をまとめた。それは国が住民の全個人情報をデジタル化して監視するシステムの構築を意味する。
 これまで国が個人情報を一括して監理下に置くことは憲法違反とされてきた。それは、憲法の柱である人権と民主主義の根幹にかかわるからだ。だから役所や病院、銀行などは業務の必要に応じて個別に扱ってきた。これに対し政府は個人情報の統合・ひも付けをどんどん進めようとしている。改憲を先取りする大攻撃だ。
 来年3月にはナンバーカードを健康保険証として使えるようにし、22年度中にほとんどの病院で顔認証による本人確認を可能にし、23年度からはナンバーカードと介護保険証を一本化するという。さらに住民票、運転免許証、図書館カードの代わりにさせ、診療データ、税や年金、資産、海外渡航歴、買い物や映画、読書傾向、使った交通機関などあらゆる情報を一元的に掌握・監視できるようにすることを狙う。
 中国では16歳で写真入り身分証を持たされ、監視カメラは16年時点で1億7600万台。都市全体がデジタル化されたスーパーシティで、AI(人工知能)と顔認証システムを使って個人を3秒以内に特定することをめざすという。労働者住民の徹底した信用度のランク付けと選別・分断、国家の統制を際限なく強化することで団結と闘いを破壊しようとしている。

自治体職場から絶対反対を

 しかしこうした治安・監視国家化の動きは、労働者人民の反乱と決起に追い詰められる安倍をはじめ支配層の絶望的なあがきだ。
 弾圧をはね返し、香港をはじめ労働者のストライキとデモが続いている。中国・清華大の教授は5月21日、インターネット上で「監視国家と行きすぎた法の執行のため、国民はコロナだけでなく政府にも恐れを抱いた」と指摘。習政権による徹底的な住民監視、コロナ感染者の追跡などに対して告発と批判が巻き起こっている。スーパーシティ構想を進めようとしたカナダ・トロント市では、グーグル系企業が個人情報を収集することに怒って反対運動が起こり、計画が破綻に追い込まれている。
 5月15日付朝日新聞はAI・ビッグデータの活用に関する世論調査結果を報じた。「不安を感じる」は73%に達した。「抵抗がある」事例として「AIに人事評価をされる」「インターネットの閲覧履歴などをもとにローンの利用限度額や金利を決められる」ことが79%、「テロ対策を理由に防犯カメラの映像や通話内容を収集される」ことが71%だった。ナンバーカードの普及が16%台にとどまっているのは当然だ。
 公務員へのナンバーカード強制の最たるものとして5月、山梨県内の消防本部で「取得しないと人事評価に悪影響を及ぼす」という違法メールで職員を脅していた事実が判明した。とんでもないことだ。しかしそれでも公務員の取得はほとんど進んでいない。
 ナンバーカード関連業務は自治体労働者が担わされている。しかし給付にマイナンバーなど必要ない。労働組合は、安倍の改憲・戦争国家化、デジタル合理化のための業務に絶対反対して闘おう。スーパーシティ法案とマイナンバー制度そのものを粉砕しよう。

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ポイント

・「迅速な給付のため」では全くない
・一律給付の遅れ、窓口の混乱を逆手に
・全口座情報の掌握、徴税の強化が目的

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