香港 国家安全法の制定許すな 怒りのデモが中国政府を直撃

週刊『前進』04頁(3136号01面02)(2020/06/01)


香港
 国家安全法の制定許すな
 怒りのデモが中国政府を直撃

(写真 「五大要求は一つも欠けてはならない」という思いを込め、5本と1本の指を示してデモを行う労働者・学生【5月24日 香港】)

(写真 「香港を取り戻せ、今革命を」の横断幕を掲げ、「みんなで一緒に歌おう」行動で国家安全法に反対する青年たち【5月23日】)


 5月22日から北京で始まった第13期全国人民代表大会第3回会議(以下「全人代」)で、香港での集会やデモを弾圧する「国家安全法」を、中国政府自身が制定できるとする「決定」(正式名称は「香港特別行政区の国家安全維持の法律制度と執行機構を建設し整えることに関する全国人民代表大会での決定」)の草案が提出された。この暴挙を許さず阻止しようと、24日に香港で数千人規模のデモが闘われた。
 午後1時、デモ参加者は銅鑼(どら)湾に次々と結集した。警察はあらかじめ部隊を配置して結集を妨害するとともに、集まったデモ隊へ催涙弾を撃ち込むなどして徹底的にデモをつぶそうとした。しかしデモ隊は、部隊が攻撃されると解散し、直ちに別の場所に再集合してデモを行うという戦術で対抗して警察を翻弄。バリケードを築き、道路を封鎖して徹底的に闘い抜いた。参加者は「国家安全法反対」の声を上げ続け、計193人もの逮捕者を出しながら夜まで闘いが続いた。
 「国家安全法案」の基となるこの「決定」は7条から成っている。国家分裂、政府転覆を防ぎ、「国家安全」維持のための法律制度と執行機構を建設し整えるとし、第1条で香港地域内での、第2条で外国勢力による「国家の安全への危害となる行為や活動を制止し処罰する」としている。集会やデモ、政治活動、労働運動、国際連帯などへの弾圧である。
 第3条で、この責任はまず香港特別行政区にあるとし、香港政府が早急に法律を制定し、あらゆる手段で対応すべきとしている。
 そして第4条である。ここでは香港特別行政区での政策強化を定めた上で、「中央人民政府の国家の安全維持に関する機関、香港特別行政区での必要により設立された機構は、法により国家の安全維持に関する職務を履行する」としている。つまり、中国政府の治安機関が直接香港の集会やデモに介入し、弾圧することができるようになる。中央直轄の治安機関が香港内に設けられるのではないかと見られている。
 さらに第5条では、「国家安全」のための教育を推進することが規定された。反対運動が高まる「国歌条例」とともに中国への愛国教育の推進を狙うものだ。
 そして第6条では、この国家安全法の制定が「全国人民代表大会常務委員会に授権された」としている。  1990年に全人代で成立した香港での憲法にあたる基本法23条では、国家安全法を「(香港特別行政区政府が)自ら制定しなければならない」と定めている。この規定を踏みにじり、国家安全法を中国政府自身が制定できるとしたのだ。
 なお第7条は、この決定が公布と同時に施行されるとしている。
 この国家安全法の制定には一貫して反対の声が大きく、2002年に香港政府が立法化に着手したが、翌年の立法会での採択直前に50万人の反対デモが起こり、採択延期の後に撤回された経緯がある。
 昨年来のデモの爆発の中で、この国家安全法の制定が再び焦点化してきたが、香港政府はすでにその力を失っている。そこで中国政府が自ら法律を制定し、直接香港の集会やデモを弾圧できる体制をつくろうとしているのである。
 この暴挙に対する怒りが24日のデモで大爆発したのだ。全人代での審議が明らかになった翌日の23日にも「みんなで一緒に歌おう」行動が行われ、反対が表明されている。コロナ後、香港での大規模行動がいよいよ再生したのだ。闘いはこれからだ。
 中国政府は、「一国二制度」を終わらせて香港を直接統治しようとしている。だが、追い詰められているのは実は中国政府である。香港の闘いが中国の労働者人民に波及することを、コロナ後の経済危機と体制危機にあえぐ中国政府は何よりも恐れている。
 香港の闘いは、危機を深める中国政府との闘いに入った。この闘いは世界革命につながっている。国際連帯を深めて闘おう!

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