中小企業給付で巨額不正 幽霊会社を作って国家犯罪

週刊『前進』04頁(3138号02面01)(2020/06/08)


中小企業給付で巨額不正
 幽霊会社を作って国家犯罪


 中小零細・個人事業者へのコロナ給付金業務を食いものにする巨額不正の一端が暴かれた。経済産業省と電通、派遣会社大手のパソナ(会長は竹中平蔵)が組んで実体のない幽霊会社を設立。業務委託―再委託―再々委託で769億円を手にしていた。一方、肝心の給付は遅れ、倒産・解雇の危機が迫っている。

経産―電通・パソナが結託

 安倍政権のコロナ危機に乗じた巨額の国費の不正取得の手口は、複雑・怪奇でまやかしに満ちている。
 そのカギは、政府・経産省が定款(ていかん)まで用意してつくった実体のない幽霊会社をトンネル会社にして、安倍と癒着する特定の企業への丸投げ委託、さらにその子会社への再委託・外注化を繰り返していることだ。国の補助金は官庁が直接事務を行うことが原則とされ、別会社への委託はあくまで例外としている。そのことを規定した補助金適正化法や、守秘義務を定めた国家公務員法、官製談合禁止法を国家機関自体がすり抜けようとする意図的で悪質な国家的犯罪行為だ。
 政府・経産省は、最大200万円の「持続化給付金」をコロナ危機で収入が激減した中小零細・個人事業150万社に給付するとして、4月成立の第1次補正予算で2兆3176億円を計上。それと別に、給付手続きのためのコールセンターや申請サポート会場の運営、振り込みなどの業務費用として769億円を計上し、その業務を事実上、入札ではなく随意契約として「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」に丸ごと委託。協議会は、自らの取り分2億円と銀行の振込手数料、振り込みの人材確保業務を行う電通子会社の電通ワークス、企業にヒアリングを行う日本生産性本部などへの費用を含む20億円分を除いて、業務全体の97%にあたる749億円分を電通に丸投げし、さらに電通はその業務を子会社やパソナなどに再々委託した。(表参照)
 この協議会は2016年に、経産省がおぜん立てし電通やパソナ、IT関連企業のトランスコスモスが関わって設立された。新しい形の官製の外郭団体であり、総務省「自治体戦略2040構想」が描く「公・共・私企業の協力関係」を絵に描いたような存在だ。
 今回を含め4年間に経産省の「サービス等生産性向上IT導入支援事業」など14事業1576億円を受託し、特定企業に丸投げしてきた。しかしその実態は名ばかりの代表理事と電通、パソナなどが出身企業の理事7人、同じく電通やパソナなどから出向した非常勤職員21人だけ。電話番号は公表されておらず、野党議員が訪れた時には、ドアに「リモートワーク中」という張り紙が貼ってあるだけで誰もいなかった。典型的な幽霊会社だ。
 こうしたトンネル会社を使って、巨額の国費が竹中平蔵など「アベ友」企業に流れる国家私物化の利権構造は、今回のコロナ危機の中で発覚した。しかしこれが初めてではない。歴代政権の下でずっと繰り返されてきた。それを徹底的に進めたのが新自由主義であり、安倍政権なのだ。

必要な金が遅れ倒産・廃業の危機

 コロナ休業や売り上げの激減で、倒産・廃業の危機にあえぐ中小零細・個人事業者の手元には、「焼け石に水」程度でしかない最大200万円の給付金すら遅れて届いていない。労働者に対する休業補償のための雇用調整助成金も滞っている。さらに倒産・リストラを理由とする大量解雇・大失業が迫っている。
 その一方でコロナに乗じた巨大利権で、安倍政権とそこに群がる大資本が大もうけしようとしているのだ。こんな「強盗国家」は絶対に間違っている。

腐敗極める安倍を監獄へ

 安倍政権とそれを支える取り巻きの大資本がやっていることは、コロナと大量解雇・大失業で生存の危機すら迫る労働者人民からさらに生き血を吸おうとする国家的犯罪行為だ。
 今回トンネル会社となったサービスデザイン推進協議会が4年間に受託した事業のほとんどは、700億円超の「IT導入支援事業」や31億円弱の「先端的教育用ソフトウエア導入事業」などIT関連だ。そこに電通とその子会社、パソナなどが受け皿となって派遣労働者などをこき使い、暴利をむさぼってきた。
 安倍政権はこのIT利権を、コロナ危機と大恐慌の情勢下でさらに巨大化させようとしている。第2次補正予算案でも、大半の省庁がIT・デジタル化のための多額の予算を計上し、自らの利権を上積みしようと画策している。

利権が山盛りのデジタル化粉砕

 政府・経済財政諮問会議は5月29日、「骨太の方針(経済財政運営と改革についての基本方針)」の7月確定に向けて「感染予防と経済活性化の両立を図るため、デジタル化などの社会変革を一気に進めるべき」とする提言を示した。
 経団連会長・中西宏明らは、社会全体のデジタル化を遅らせている要因として「公的分野のデジタル化」を挙げ、「これまでの取り組みは失敗であったとの猛省に立つ」と明言。自治体や医療・教育を最大の標的に、手続きのオンライン化やマイナンバーと預貯金口座のひも付けを進めるべきだと強調。オンライン診療や電子カルテのデータの活用などを求めた。
 全人民監視・治安国家化と徴税強化のためのマイナンバー制度の拡大、100%デジタル化のスーパーシティ構想は、危機に立つ安倍政権の絶望的なあがきだ。コロナ給付金をめぐる国家犯罪と、改憲・戦争への突進は完全に一体だ。
 労働組合の絶滅を狙う全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部に対する弾圧、森友学園、加計学園、桜を見る会をめぐる疑獄、前東京高検検事長・黒川弘務の定年延長、検察庁法改悪の策動に対する怒りは、コロナ危機の中で日増しに燃え広がっている。「安倍を監獄へ!」の声は地に満ちている。アメリカをはじめ世界の労働者の大決起と固く連帯し、闘う労働組合の力で安倍打倒へ闘おう。
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