新段階に突入した米中激突 コロナ危機で戦争・排外主義が激化

週刊『前進』04頁(3138号03面02)(2020/06/08)


新段階に突入した米中激突
 コロナ危機で戦争・排外主義が激化

(写真 「香港に自由を 今こそ革命を」のスローガンを掲げ習近平政権の国家安全法制に抗議する香港の青年たち【5月27日】)

 コロナ危機が1929年を上回る世界大恐慌へと転化しつつある中で、米中激突が一気にエスカレートしている。米国内のコロナ感染症死者数が10万人を超え、失業保険の申請者数は4千万件を突破、さらに警官による黒人男性虐殺への抗議デモが全米で爆発する中、11月に大統領選を控えたトランプは、中国へのバッシングと制裁措置を連発することで危機を乗り切ろうと必死になっている。他方、中国スターリン主義・習近平政権もまた自らの体制の延命をかけ、香港デモへの弾圧を強めながら、対米対抗措置を繰り出している。世界を二分する米中激突は戦争の危機を醸成しつつ、今や後戻りのできない過程へと突入した。

トランプ政権が新たな対中制裁

 アメリカ帝国主義・トランプ政権は5月29日、WHO(世界保健機関)からの脱退を表明した。これまでもWHOを「中国に支配されている」として攻撃し、資金拠出の停止などを表明してきたが、今回は「WHOとの関係を終了させる」と踏み込んだ。また、中国の全人代(全国人民代表大会)が、香港での反政府的言動を取り締まる「国家安全法制」導入を決定したことを受け、「香港にはもはや自治はない」として関税や渡航の優遇措置を撤廃すると表明した。
 これに先立つ5月15日には、中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術)への新たな制裁措置を発表。昨年5月の制裁措置では米企業とファーウェイとの取引を規制したが、今回は米国外の企業や生産拠点でつくられた半導体でも、製造過程で米国製の装置やソフトウェアが使われた場合はファーウェイやその子会社への輸出を禁止する。
 直接にはファーウェイの子会社ハイシリコン(海思半導体)を狙い撃ちにした措置で、特に半導体受託生産の世界最大手・台湾積体電路製造(TSMC)がハイシリコン向けの生産を受託できないようにするのが狙いだ。ハイシリコンは、AI(人工知能)の核をなす高性能チップの設計で米インテルやクアルコムを上回ったと言われてきたが、自らは製造工場をもたないファブレス企業で、生産はTSMCに委託してきた。今回の制裁措置を受け、TSMCは年間売上高の15%を占めるハイシリコンからの受託を停止し、新たに120億㌦を投資して米国企業向けの半導体製造工場を米アリゾナ州に建設すると発表した。
 他方、ファーウェイは中国国内の半導体受託生産大手・SMICへの委託を開始。習近平政権も政府系ファンドを通じてSMICに22億5千万㌦の出資を決定した。習政権は2015年に発表した「中国製造2025」に基づき、半導体の内製率を25年までに70%まで引き上げることを目標に製造能力強化を急ぐ。トランプが制裁を強化すればするほど、中国も「製造強国」化への衝動をますます強めるという構図だ。

5G開発競争で敗勢にあえぐ米

 一昨年から本格化した米中激突は、貿易戦争と並んでハイテク覇権競争が最大の焦点となってきた。とりわけ第5世代移動通信方式(5G)の開発と実用化で中国に大きく立ち遅れたことが、米帝中枢を激しく突き動かした。
 今や全世界のブルジョアジーは、労働者階級に対する大合理化と治安弾圧の手段として、産業と社会をまるごと「AI化」する攻撃を急いでいる。本紙前号でも述べられているように、「AI万能神話」はデマゴギーそのものであり、人間社会を成立させるための労働過程をすべてAIやロボットに置き換えることなど不可能だ。それどころかAI化は安全の崩壊、社会の崩壊を一層促進するものでしかない。だが、世界中のブルジョアジーはどんなに絶望的でもこれにすがるしかないのである。
 この「産業と社会の丸ごとAI化攻撃」に不可欠なのが、情報通信の大容量化、超高速化、多接続化をもたらす5Gである。そして5G実用化のためのインフラ(基地局や通信システム)やスマートフォンの開発・実用化で突出したのが中国のファーウェイだ。
 19年5月までにファーウェイが取得した5Gに関する標準必須特許は1554件に上り、その数は世界一だ。国際電気通信連合(ITU)などが近く5Gの国際標準仕様を策定すると見られるが、このままでは中国およびファーウェイの規格が国際標準となり、米日が孤立する。そのため米帝は、欧州諸国などが次々とファーウェイとの契約を進める中、なりふり構わぬ中国つぶし、ファーウェイつぶしに乗り出したのだ。

米も中国も人民の反乱が急拡大

 AIなどのハイテク分野は軍事と一体であり、その意味でも米帝は絶対にその優位を譲れない。ゆえに米中激突は果てしなくエスカレートする。その根底にあるのは、米中いずれにおいても、労働者階級人民の巨大な革命的反乱が支配階級とその国家を揺るがしているという事実だ。
 米ミネソタ州で発生した警官による黒人男性虐殺事件への抗議は、コロナ危機下で同じように国家によって絞め殺されそうになっていたすべての人々を奮起させた。トランプはこの決起に追い詰められ、ますます戦争と排外主義に延命の道を見出そうとしている。
 香港の闘いは習近平政権の国家安全法制にも屈せず拡大している。この闘いは必ず中国本土の労働者農民の反乱へと波及する。
 トランプも習近平も安倍も、ますます顕在化する「革命の現実性」に震え上がっているのだ。全世界の闘いと連帯し、労働組合を先頭に安倍打倒の民衆総決起を日本で巻き起こそう。
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