ブラジル 看護労働者のスト続々と 極右政権の医療放棄に反撃

週刊『前進』02頁(3139号01面03)(2020/06/11)


ブラジル
 看護労働者のスト続々と
 極右政権の医療放棄に反撃

(写真 「医療がないがしろにされている」。ストライキに立った看護師たちが訴えた【4月27日 マナウス】)

(写真 「黒人とファベーラ住民の命も大切だ」。横断幕を掲げて進むデモ隊【5月31日 リオデジャネイロ】)


 ブラジルの新型コロナウイルス感染者数がアメリカに次ぐ世界2位となった。
 トランプ信奉者として知られる極右の大統領ボルソナロは当初から新型コロナを過小評価し、「失業や飢餓を防ぐため」と主張してロックダウンや企業活動の停止を拒否し続けてきた。
 クルーズ船の運航停止や外国からの入国者の隔離などの措置を打ち出した保健相は解任され、陸軍大将が率いる大統領首席補佐官室の圧力で方針が転換された。年金改革の責任者は対策会議で「高齢層に死者が集中するなら、年金の赤字が減って財政状況が改善する」と述べたという。
 起こっていることは政府による人々の虐殺だ。感染疑いの人も検査を受けられない上、医療スタッフもベッドも人工呼吸器も医薬品もICU(集中治療室)も、何もかもが足りない。
 ブラジルはかつて感染症対策に力を入れ、各種ワクチンの接種率は南米・北米でも1、2位を争うレベルだった。それが、労働党政権も含めた歴代政権の新自由主義政策によってここまで破壊されてしまった。
 腐敗を極めるボルソナロは一方でこの間、自身の家族に対する捜査をかわそうと警察人事に介入し、警察庁長官を更迭。トランプや安倍と全く同じだ。カネと腐敗にまみれ人々を死に追いやるボルソナロの弾劾と罷免を求める労働者の闘いが全土へと広がっている。

特権階級のために死んでたまるか!

 犠牲の大半は貧しい労働者民衆に集中している。ブラジルで公設の水道を利用できない人は約4万人で、人口の約半数の1億人が下水道施設のない生活を余儀なくされている。1300万人がファベーラと呼ばれるスラムに暮らし、密集状態や劣悪な衛生状態が感染拡大に拍車をかけている。ファベーラには病院もなく、人々は家で次々と命を落としている。政府の支援は皆無だが、地域の人々やボランティアがマスクや食料品の配布、感染者の隔離などを行って感染拡大を食い止めようとしている。
 最大の矛盾と直面しているのが医療労働者だ。犠牲はとりわけ看護師に集中し、5月27日段階で157人が感染し命を落とした。一国では最も多い人数だ。
 こうしたなか、4月から断続的に各地でストライキや抗議行動が闘われている。ブラジルで初めて医療体制の崩壊を宣言した北部アマゾナス州マナウスでは4月27日、各部門への防護具支給を求めて数百人の看護師がストを決行。同州では賃金が最長8カ月も支払われておらず、ICUで働く看護師ですら賃金の4割しか受け取っていない。極右の州知事による「コロナ対策」は民間病院への5千万円以上の資金投入だった。すべてが資本の食い物にされているのだ。
 「政治家や経営者を救うために自らや家族の命を危険にさらせというのか!」----。当日、病院前の路上を占拠した看護師たちは亡くなった同僚たちの写真を掲げて追悼のシュプレヒコールを上げた。報復で13人が不当解雇されたが、復職を求める闘いは継続中だ。メーデーにも大統領府前での抗議行動が行われた。
 また、動労千葉と連帯して闘ってきたCSP―コンルータス(全国闘争連盟)は「極右政権の大量虐殺政策のために数万人の命が奪われ、解雇と経済危機、貧困が拡大し、労働者の権利が破壊されている」と弾劾し、ボルソナロ政権打倒を掲げて闘っている。

警察の暴力弾劾し人種差別反対デモ

 アメリカ・ミネアポリスでのジョージ・フロイド氏虐殺を契機とした人種差別反対運動の炎は、ブラジルでも大きく燃え上がっている。その中心となっているのはアフリカ系の人々が多く生活するファベーラだ。
 警察権力は以前からファベーラへの襲撃・虐殺を繰り返し、昨年はリオデジャネイロだけで計2千人を超す人々が警察に射殺された。コロナ危機のもとで弾圧はむしろ激化している。
 リオデジャネイロでは5月31日に州庁舎前で大規模な抗議行動が行われ、「大量虐殺国家にはうんざりだ!」「ファベーラに平和を!」の声がとどろいた。
 労働者民衆を差別で分断し命まで奪う権力者の支配を終わらせる時代が来た。全世界の闘いに続こう。

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