朝鮮半島での戦争を断じて許すな 日米韓の軍事同盟こそ元凶 参戦狙う安倍を打倒しよう

週刊『前進』02頁(3145号02面01)(2020/07/02)


朝鮮半島での戦争を断じて許すな
 日米韓の軍事同盟こそ元凶
 参戦狙う安倍を打倒しよう

(写真 パククネを打倒した日、ソウルには勝利の声とともに「サード配備阻止」「戦争反対」の声が響いた【2017年3月11日】)


 コロナ危機と大恐慌の進展下で、米中対立の激化に続いて朝鮮半島情勢が再び重大な危機を迎えた。6月16日には南北間の共同連絡事務所が爆破され、朝鮮半島の分断体制の解消をうたった2年前の合意は実質的に破棄された。韓国・民主労総はこれに対し、米帝の戦争政策の継続こそが元凶だと、米韓軍事同盟の解体を求めている。日本の労働者階級に問われていることは何か。起きている事態の本質をまず明確にしたい。

「南北・米朝合意」は崩壊

 6月16日、2018年4月の朝鮮南北首脳会談により設置されていた南北間の共同連絡事務所が、北朝鮮当局によって爆破された。続いて韓国側からの特使派遣提案も拒否。「一切の敵対行為の中止」を宣言した南北軍事合意の破棄と軍事的対決行動の再開をも予告した。これに先立ち、トランプとキムジョンウンによる史上初の米朝首脳会談から2周年となる6月12日には、「朝米関係改善への希望は絶望へと変わった」との外相談話をも発表した。
 これに対し、米日帝国主義の側も即座にきわめて激しい対応をとった。連絡事務所爆破直後の17日には、核攻撃可能な米軍の戦略爆撃機B52を2機、朝鮮半島上空に飛ばし、日本の航空自衛隊が「合同訓練」と称してこれを護衛した。翌18日にも2機のB52が電子戦機EA18Gとともに出撃した。さらに、米空母3隻が西太平洋に集結し演習を展開するなど、必要なら直ちにキムジョンウン政権への先制攻撃を加え、全面戦争・核戦争に突入できる臨戦態勢をとったのだ。
 18年以来の「米朝合意」「南北合意」はもはや完全に崩壊した。朝鮮半島情勢は再び一触即発の軍事的緊張のただ中に突入した。

米の戦争政策が引き金に

 日本の政府やメディアは北側が「合意」を一方的に破壊して現在の危機を作ったと宣伝し、北朝鮮への敵意と排外主義をあおっている。だがこれは違う。引き金を引いたのはむしろ帝国主義の側だ。
 そもそも18年6月のシンガポール会談による「米朝合意」は、朝鮮半島での戦争の危機を真に防ごうとしたものでは全くなかった。米トランプ政権は、①対北朝鮮の戦争が中国との大戦争に直結すること、②米帝の国内支配の危機と米軍の弱体化、③日米同盟の矛盾と亀裂の深まり、何よりも④韓国ろうそく革命による米韓軍事同盟崩壊の危機をにらんで、キムジョンウン政権との「大胆な取引」にいったんかじを切った。それはあくまでも東アジアでの戦争政策、とりわけ対中対決政策を米帝にとって最も有利な形で推し進めるためだ。
 長期にわたる経済制裁に追いつめられていたキムジョンウン政権は、そのスターリン主義権力の維持・延命を唯一の目的にこの取引に応じた。だが米帝は、北朝鮮の核放棄と引き換えに求められた経済制裁の解除には全く動こうとしなかった。経済制裁とは「兵糧攻め」であり、相手国の労働者人民を生存の危機にたたき込むことを意識的に狙うものである。それ自身が第一級の、しかもきわめて非人道的な戦争行為だ。

コロナによる国境閉鎖が危機を加速

 こうした中でコロナ危機が発生し、本年1月末から中朝国境が閉鎖された。その結果、北朝鮮から中国への輸出は1~2月に前年同期比71・7%減、3月96%減、4月90%減と急激に落ち込んだ。輸入はさらに深刻である。国際的な経済封鎖が続く中で北朝鮮は、食糧・エネルギー・医薬品など最低限の必需物資を中国からの輸入に全て頼ってきた。それが1~2月に前年同期比23・2%減、3月以降は90%減とほぼゼロの水準となった。最後の糧道すらも絶たれる危機を迎えたのであり、今や大量の餓死者が出てもおかしくない。
 この現実に対する北朝鮮労働者人民の「もう耐えられない!」という怒りの爆発が、キムジョンウン政権を強硬姿勢へと突き動かしている原動力だ。その怒りは米帝と、米帝の経済制裁を容認してきた韓国・ムンジェイン政権だけでなく、本質的には、キム一族の独裁権力と化した北朝鮮スターリン主義の国家支配体制そのものにも向けられている。だからこそキムジョンウンは、自らの危機突破のためにも一切の照準をムンジェインの「裏切り」に合わせ、南北関係を一気に最悪の水準へとたたき落としたのだ。

核先制攻撃狙うトランプ

 米トランプ政権はまた朝鮮半島の「非核化」を掲げながら、核兵器を戦場で実際に使う計画をも公然と推し進めてきた。18年2月に出された米の「核戦略見直し」(NPR)は、通常兵器による攻撃を受けた場合も核で反撃するとし、そのための小型核兵器の開発を打ち出した。そしてその第一弾として本年2月、米海軍が「使える核」の潜水艦への実戦配備を開始したと発表した。これも北朝鮮への核先制攻撃体制の強化を狙ったものである。
 この背景には、17年春の韓国ろうそく革命に対する米帝の衝撃と恐怖がある。労働者人民の総蜂起によるパククネ政権の打倒は同時に、帝国主義とスターリン主義のもとに封じ込められてきた全朝鮮人民の南北分断体制打破=革命的統一への熱い思いを一気に解き放った。それは東アジアにおける戦後革命の暴力的圧殺の上に成立した帝国主義のアジア支配、世界支配の根底からの動揺と崩壊を意味していた。
 17年3月、パククネの罷免(ひめん)と逮捕の直前、パククネは反共右翼勢力を総動員した軍事クーデターをも必死に画策した。米帝は、米軍1万7千人と韓国軍30万人を総動員した米韓合同演習の実施によってこの策動を背後から援護した。だがこのクーデター計画は不発に終わった。ムンジェイン政権の成立後、米帝は今度はすでに策定していた対北朝鮮の作戦計画5015を実行に移すことを決断し、17年秋には実際に北朝鮮に先制攻撃を加える寸前までいった。
 米帝の狙いは、北朝鮮の核実験とミサイル開発の阻止を口実に、キムジョンウン政権転覆の戦争をしかけて朝鮮半島全域を一気に戦火の海にたたき込み、ろうそく革命の地平をも圧殺して南北朝鮮の全てを米帝・米軍の直接的な軍事支配下におくことだ。その本音は今日においても全く変わってはいない。

自衛隊の朝鮮出兵阻止を

 重要なことは、米帝以上にろうそく革命に打撃を受け、最も凶暴な戦争衝動をつのらせているのが日帝・安倍政権であることだ。
 安倍の改憲・戦争攻撃は米帝の行う朝鮮侵略戦争への参戦を当面する直接・最大の狙いとしている。作戦計画5015は日米共同作戦計画として策定された。そこには①「局地挑発に対して直ちに全面戦争を発動する」、②「核・ミサイル発射の兆候があれば30分以内に先制攻撃を加える」、③キムジョンウンに対する「斬首作戦」、④「自衛隊の釜山上陸」といった、恐るべき内容が列挙されている。集団的自衛権容認の閣議決定と2015年の安保戦争法の成立が、この5015を実行に移すためにこそ策動され、強行されたことは疑う余地がない。
 今日、安倍政権が陸上迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備計画撤回と引き換えに、「敵基地攻撃能力の確保」を正面から打ち出したことは超重大だ。朝鮮半島情勢の激変を前に、安倍と日帝ブルジョアジーは今や本気で自衛隊の朝鮮出兵、新たな朝鮮侵略戦争の発動に突っ込もうとしている。断じて許してはならない。安倍は今やムンジェイン政権をも敵視し、韓国内の極右反共勢力と結託してろうそく革命の地平の反革命的転覆をも図ろうと、全力で動き出している。
 民主労総を先頭とする韓国の闘う労働者人民はすでにこの情勢と真っ向から立ち向かい、戦争絶対阻止の決意とともに、ろうそく革命が切り開いた労働者人民自身の主体的決起による南北の革命的統一への道を、断固として突き進もうとの戦闘宣言を発している。この闘いと連帯し、安倍の戦争・改憲攻撃阻止、安倍打倒へ全力で立ち上がろう。

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年表① ろうそく革命前後から今日に至る流れ

2015年6月 米韓連合軍が作戦計画5015作成
9月 日本で安保戦争法が成立
11月 パククネ打倒の民衆総決起闘争が爆発
12月 軍隊慰安婦問題での日韓政府合意
16年1月 北朝鮮が4回目の核実験
7月 サード(高高度迎撃ミサイル)の韓国配備決定
10月 チェスンシルゲート発覚
11月 日韓GSOMIA締結/ろうそくデモ100万人に
17年3月 パククネ罷免・逮捕。軍のクーデター計画不発
5月 ムンジェイン政権誕生
8~11月 米が作戦計画5015の発動を狙う
12月 米が新安保戦略/日本がイージス・アショア導入へ
18年2月 米が核戦略見直し
4月 南北首脳会談・板門店宣言
5月 北朝鮮が豊渓里の核実験場を破壊・閉鎖
6月 シンガポールでの米朝首脳会談/米が対中制裁発動
9月 南北軍事合意(一切の敵対行為中止)
10月 米がINF条約破棄を宣言
19年2月 ハノイでの米朝首脳会談が決裂
7月 安倍政権が韓国への経済制裁発動
12月 日米共同演習「ヤマサクラ」で韓国を「主敵国」に
20年2月 米海軍が「使える核」実戦配備
5月 米が韓国に新型サードミサイルを追加配備
6月 北朝鮮が南北連絡事務所を爆破

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