日韓「慰安婦合意」撤回を 歴史の真実の圧殺を許すな 東京に少女像を建てよう

週刊『前進』02頁(3149号02面01)(2020/07/16)


日韓「慰安婦合意」撤回を
 歴史の真実の圧殺を許すな
 東京に少女像を建てよう

(写真 ソウル鍾路区旧日本大使館敷地の前で開かれた第1440回日本軍性奴隷制問題の解決に向けた定期水曜集会。イナヨン正義記憶連帯理事長が発言している【5月20日 ソウル】)


 新型コロナウイルスによる死者が世界で56万人を超え、日本では豪雨による河川氾濫(はんらん)や土砂崩れなどで多くの人々が殺されている。この時に安倍政権は、韓国・中国への敵視政策で差別・排外主義をあおり、労働者人民に分断・亀裂を持ち込もうとしている。なぜ安倍晋三は、かつて朝鮮人・中国人に強いた強制連行・強制労働、徴用工問題、日本軍慰安婦制度という国家的戦争犯罪の被害当事者たちを踏みにじろうと躍起になっているのか。戦後75年、改めて日本帝国主義の侵略戦争と植民地支配の歴史の真実を学ぼう。人間を踏みにじるこの社会を終わらせ、人間が人間らしく生きることのできる未来をつくりだそう!

卑劣な正義連バッシング

 安倍政権と韓国の極右保守勢力は現在、日本軍軍隊慰安婦問題をめぐり、事実認定と被害者への謝罪・賠償を求めて闘ってきた市民団体「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連)」へのバッシングを強めている。改憲・戦争を狙う安倍政権によるこの卑劣なキャンペーンを絶対に許してはならない。
 そもそも安倍・自民党は一貫して軍隊慰安婦制度への軍の関与を認めず、被害者への謝罪も賠償も拒否し続けてきた。そして2015年12月28日、当時の大統領パククネとの間で被害者を無視して日韓両政府による「合意」を強行。そこには「日韓間の慰安婦問題が最終的かつ不可逆的に解決されることを確認する」などという文言が盛り込まれた。かつて日本帝国主義が行った侵略と植民地支配の歴史の真実を覆い隠し、被害者たちを先頭とした命がけの闘いの歴史も含めて抹殺しようとするものだ。
 これに対する怒りは「ろうそく革命」へと向かう大きなうねりを生み出し、パククネは打倒され監獄にたたき込まれた。日韓合意は即時撤回しかない。

イヨンスさんの批判の真意とは

 5月7日、日本軍軍隊慰安婦被害者で人権活動家のイヨンス(李容洙)さんが記者会見を開催。その場で、正義連の前代表であり、正義連の前身である韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)に結成当時から参加して活動してきたユンミヒャン(尹美香)さんを名指しで批判した。ユンミヒャンさんは今年4月に行われた総選挙で国会議員に当選した。
 これについて、「日本軍『慰安婦』問題解決全国行動」共同代表のヤンチンジャ(梁澄子)さんは「世界」8月号所収の「『正義連』バッシングの構図 報道と事実」で、「(挺対協は)誰も関心を示さなかった日本軍『慰安婦』問題を世に問い、誰も聞こうとしなかった被害者たちの声に耳を傾け、その声が社会に受け止められるよう30年間あらゆる努力と献身を重ねてきた」と改めて確認している。
 その上で、イヨンスさんが「水曜デモをなくすべきだ」と語ったことについて「謝罪・賠償は正しい歴史を知っている人たちが解決の主人公だ」、だから「日韓の若者が交流して正しい歴史を学んでこの問題解決の主人公になるべく、デモはやめてテグに歴史館を建てて教育をするという、解決のための具体案」を示したものだったと書いている。
 しかし、この会見後、イヨンスさんの言葉を選別的に抜粋・歪曲し、正義連とユンミヒャンさんへの「不正会計」疑惑に検察捜査が発動されるなど、保守マスコミを総動員したバッシングが行われた。正義連による訂正要求を受けて「横領疑惑」報道記事を削除・訂正したメディアもあるように、意識的なデマ宣伝が洪水のように行われている。
 さらに、「水曜デモをやめろ」「慰安婦像(少女像)を撤去しろ!」と叫ぶ保守反動勢力の主張に乗じて、日本の極右勢力が「慰安婦像は反日憎悪の象徴」などと宣伝し、バッシングを強めている。どこまで慰安婦被害者を蹂躙(じゅうりん)し苦しめるのか! 絶対に許してはならない。
 そもそも、イヨンスさんの正義連への批判は、15年の「日韓合意」がいまだに撤回されず、日本政府が居直り続けていることへの怒りといら立ちによるものだ。日本政府・安倍政権は、日本軍慰安婦制度が日本帝国主義の侵略戦争遂行のための国家的政策としてあったことを直ちに認め、被害者に謝罪・賠償すべきだ。

青年に未来託すハルモニ

 7月3日、正義連のイナヨン(李娜栄)理事長が、テグで日本軍慰安婦問題に取り組む全国各地の団体の代表たちが同席する中でイヨンスさんと討論。その場でイヨンスさんは以下の4点を提案した。
 第一に、水曜集会について、「デモをしたくないというのではなく、方式を変えようと思います。一緒に力を合わせてください」と提案。被害者が生存しているかどうかにかかわらず、団体が活動している地域で水曜集会を行おうと提案。イヨンスさん自身、健康が許す範囲で直接または映像で参加したいと話した。
 第二に、「平和の少女像」について、以下のような重要な提案が行われた。
 「平和の少女像は、私でもあるし、何人ものハルモニの役割をします。平和の少女像をあちこちにもっと建てなければなりません。ぎっしり建てて、最後には日本の真ん中に建てて、行き交う人みんなが謝るように手伝ってください。皆さん、平和の少女像を必ず守ってください」
 第三に、用語は「性奴隷」一般ではなく、正確に日本軍「慰安婦」被害者と書くべきだと語った。
 そしてイヨンスさんは最後に、若い世代の教育と韓日の青年世代の交流のための方法として、地域別「慰安婦」歴史教育館の活性化・建設・連携・交流を願っていると述べた。正義連は、この会談内容を発表すると共に「女性人権運動家イヨンスさんの言葉を深く熟考し、日本軍性奴隷制問題の解決のために活動している地域の諸団体と共に議論し、連帯して、一層励んで活動に取り組んでまいります」と決意を明らかにした。
 イヨンスさんをはじめ多くの被害者たちが苦しみながらもあえて告発し、雨の日も雪の日も数十年にわたって街頭に立ち、世界中で訴え、人生をかけて闘ってきたのは、未来を生きる青年たちを悲惨な戦争の犠牲にしてはならないという思いからだ。そして、この信念はしっかりと若い世代に引き継がれている。青年・学生たちはこの間、極右保守勢力による水曜集会への攻撃に対し、少女像と自らを鎖でつなぐことまでして守り抜いてきたのだ。
 日本でも若い世代が新型コロナやBLM運動を機に立ち上がり始めている。韓国の仲間たちと固く連帯し、安倍政権の狙う歴史抹殺攻撃を打ち破ろう。
 そして、イヨンスさんの提案に応え、日本の東京の真ん中、例えば皇居を望み、三菱をはじめとする戦犯企業の本社を見据える東京駅丸の内口に「平和の少女像」と「徴用工像」を建てようではないか。日本社会を根底から覆す力を労働者・労働組合が持った時、皇居前は人民広場としてよみがえるだろう。この夏、改憲を許さない新たな闘いを8・6ヒロシマ―8・9ナガサキ、8・15集会からスタートさせよう!

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▼日本軍軍隊慰安婦問題をめぐる経緯 1990年11月16日に16団体が参加して韓国挺身隊問題対策協議会が結成された。翌91年8月、キムハクスン(金学順)さんが日本軍慰安婦被害者として名乗り出た。
 以後、朝鮮・台湾・日本をはじめ中国・フィリピン・インドネシア・オランダ・東ティモール・マレーシア・タイ・グアム・ビルマ・ベトナムなど、日本軍が侵攻し駐屯したアジア太平洋一帯に日本軍慰安所が設置され、従軍させたり、「現地調達」したりした女性たちを日本軍兵士が監禁・強姦したという恐るべき戦争犯罪が明らかになった。この国家的犯罪行為は全世界の人々の怒りの的となっている。

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