関東大震災朝鮮人虐殺97年 都が「誓約書」要求を撤回 ヘイト集団の式典破壊を許すな

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週刊『前進』04頁(3157号01面03)(2020/08/24)


関東大震災朝鮮人虐殺97年
 都が「誓約書」要求を撤回
 ヘイト集団の式典破壊を許すな

(写真 昨年9月1日、都立横網町公園で開催された「関東大震災96周年朝鮮人犠牲者追悼式典」)

 1923年9・1関東大震災から97年。震災後、「朝鮮人暴動」などの流言飛語が広がり、数千人もの朝鮮人、約700人の中国人が軍隊・警察・自警団など日本人によって虐殺された。今また、改憲攻撃を進める安倍政権と同調し、歴史歪曲・改ざんの動きが活発になっている。これらの策動を許さず、歴史の真実を記憶しよう。改憲・戦争を止めよう!
 9・1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典(主催・同実行委員会)をめぐり、7月29日、東京都が都立横網町公園の占有許可条件として求めてきた「誓約書」提出を撤回し、実行委の占有許可申請が受理された。
 昨年12月、実行委は朝鮮人犠牲者慰霊碑のある横網町公園での2020年追悼式典の占有許可を申請したが、都建設局は許可条件として「公園管理上支障となる行為は行わない」「(拡声器は)当該参加者に聞こえるための必要最小限の音量にすること」などの条件の順守を求め、さらにこれを守れない場合は「次年度以降、公園地の占有が許可されない場合があることに異存はありません」と誓約しろと要求した。
 この背景には、17年から右翼女性団体「そよ風」が、9・1朝鮮人犠牲者追悼式典開催中に直近から拡声器で「不逞(ふてい)鮮人が震災に乗じて凶悪犯罪を行ったのが真相」などとヘイトスピーチ集会を行ってきたことがある。都が両者を同列に扱ったことは、「そよ風」と結託して追悼式典を破壊する行為だ。
 これに対し実行委は5月18日、都に撤回を求める声明を発表した。「誓約要請撤回」を求めるネット署名は3万人を超え、知識人127人・1団体が共同声明を発し、東京弁護士会なども抗議した。この抗議の声の前に小池百合子都知事は屈せざるをえなかった。闘って勝ち取った大勝利だ。

小池が虐殺を否定

 横網町公園は震災当時、陸軍被服廠(しょう)跡地の空き地だった。震災直後から4万人もの避難民が詰めかけたが、3万8千人が火災旋風の犠牲となった地だ。そこに1973年9月、当時の美濃部亮吉都知事をはじめ600人・250団体の協力で「あやまった策動と流言飛語のため六千余名にのぼる朝鮮人が尊い生命を奪われました」と刻まれた朝鮮人犠牲者追悼碑が建立された。
 2016年に東京都知事となった小池は、その年は9・1追悼式典に追悼文を送ったが、17年3月、古賀俊昭都議が「追悼の辞の発信を再考すべきだ」と迫り、追悼碑撤去までも求めた。これを機に小池は「全ての震災犠牲者哀悼の意を表しているので、個別の対応はしない」と、追悼文送付を取りやめた。
 小池は「全ての震災犠牲者哀悼」と言うが、虐殺された朝鮮人・中国人(間違えられて殺された日本人を含む)は、震災を生き延びながら理不尽にも殺されたのだ。これを「震災の犠牲者」と一括することは、虐殺の事実を消し去るものだ。
 古賀はこの質問で小池に、工藤美代子の著作『関東大震災「朝鮮人虐殺」の真実』(産経新聞出版、09年)を読んでほしいと語ったという。この古賀と意を通じ、追悼式典破壊に乗り出したのが右翼女性団体「そよ風」だ。小池自身も、10年12月、元防衛大臣の肩書で「そよ風」が主催し、在特会女性部が協賛した講演会で講演している。

歴史の真実記憶を

 彼らの「朝鮮人虐殺はなかった」という主張の根拠が工藤の本であり、夫の加藤康男著『関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった!』(WAC、14年)だ。工藤らは、震災直後の虚報・誤報をピックアップし、「虐殺否定論」をでっち上げている。しかし、これらが虚報・誤報であったことは震災からしばらく後には全体の認識だった。それが今、ネットを媒介にしてあたかも「新たな証拠」であるかのように流されている。この手口を検証し、著書『トリック「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち』(ころから、19年)にまとめた加藤直樹氏は、「虐殺否定論を検証する作業を徹底的に行ったことで見えてきたのは、それが〝認識の誤り〟ではなく、そもそも人をだます目的で仕掛けられた〝トリック〟であるということだった。そこには、〝誤解〟や〝無知〟ではなく、あからさまな〝嘘(うそ)〟が意図的に混入されていたのである」と結論付け、この「トリック」の意図は「虐殺の記憶の『隠蔽』であり、『忘却』だろう」と指摘している。
 この「虐殺の記憶の隠蔽・忘却」の先に何があるのかを考えよう。
 コロナ情勢下、安倍政権は経済危機と国内支配の崩壊に直面しながら「敵基地攻撃能力保有」を公言し、改憲・戦争への衝動を強めている。8月4日、徴用工訴訟で韓国大法院が強制徴用被害者への賠償を命じた判決をめぐり、韓国裁判所による日本製鉄(旧・新日鉄住金)の保有株式の差し押さえ通達が発効した。安倍政権は「あらゆる選択肢を視野に入れて毅然(きぜん)と対応していく」と応対、日本製鉄は即時抗告を行った。安倍政権は、日本軍慰安婦制度や徴用工の強制連行・強制労働という国家的戦争犯罪を居直り、「記憶の隠蔽・忘却」を狙っている。歴史に学び、記憶を継承し、改憲・戦争への道を拒否しよう。
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