セブン契約解除無効裁判、堂々の意見陳述 命より大切な契約書はない

週刊『前進』02頁(3158号02面01)(2020/08/27)


セブン契約解除無効裁判、堂々の意見陳述
 命より大切な契約書はない

(写真 昨年12月、松本オーナー【左】への契約解除通告に抗議し記者会見。右は河野さん【東京】)


 時短営業で闘うセブン―イレブン・ジャパン加盟店の松本実敏オーナーの契約解除無効を争う裁判が8月14日、大阪地裁で始まった。コンビニ関連ユニオンのブログに掲載された河野正史委員長の傍聴記と松本さんの意見陳述の要旨を紹介します。(編集局)

「本部との対等な交渉を」

 昨年12月31日にセブン本部から「クレームが多い」なる理由で不当にも契約解除攻撃を受けていたセブン―イレブン東大阪南上小阪店の松本実敏オーナーの契約解除の無効を争う裁判が8月14日、大阪地裁202号大法廷で開かれました。
 松本オーナーは、裁判長と本部側弁護士を圧倒する堂々たる意見陳述を行い、「加盟店が24時間営業に従っているのは契約解除や違約金を恐れて本部に逆らえないからで、今回の契約解除は時短営業への見せしめだ」「オーナーやその家族の自殺、過労死が相次いで報告されている。命より大切な契約書はない」と本部経営陣を弾劾しました。そして、「全国のオーナーたちの声なき声を代弁し、本部との対等な交渉を行うことをめざす」と本裁判の目的を述べ、陳述を締めくくりました。法廷内は大きな拍手に包まれ、裁判長の「静粛に!」という声がかき消されるほどでした。
 一方、本部側の弁護士は「松本オーナーがお客様に頭突き、飛び蹴りをした」なるでっち上げを十数回も引用するなど中身のない陳述に終始し、マスメディアには「松本オーナーを応援する報道はやめること」と注文する始末でした。
 裁判後、松本オーナーは「私個人の闘いではない。私よりも苦しんでいる全国のコンビニ関係で働くすべての仲間のために闘い、勝利する」と感動的に語られました。(コンビニ関連ユニオン委員長 河野正史)

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松本実敏さん意見陳述(要旨)
znn.jpに全文を掲載しています)

第1 はじめに
 私は、昨年12月末、突然セブン―イレブン本部から店舗の明け渡しを求められ、閉店を余儀なくされました。これは、私が時短営業を始めたことや、苦しんでいる他店にも時短を認めてほしいと訴えていることに対する見せしめです。
第2 コンビニオーナーへの誘い文句と現実は大違い
 私がセブン―イレブンと店舗オーナーの加盟契約を結んだのは、12年1月のことでした。オーナー募集の説明会では、いいことばかり言われました。本部社員から「オーナーヘルプ制度があるので、年に2〜3回は海外旅行に行ける」「最低収入保障があり、月に40万円以上の安定収入が確実」と強く言われ、契約を決断しました。開業資金は250万円と聞いていましたが、実際には1000万円以上かかりました。加盟金以外はすべて本部からの借金となりました。
 開業は夫婦2人での店舗運営が条件とされ、交代で店に立ち、夫婦すれ違いの生活が続きました。海外旅行など夢のまた夢、休みさえ取れず、母親の葬儀にあたっては本部にヘルプを求めたにもかかわらず、応じてくれませんでした。オーナーヘルプ制度など存在しないも同然です。
 とはいっても必死で働き、約1000万円の借金を返済することができました。ただ私は、本部の無理難題を黙って受け入れていると、加盟店はボロボロにされると思っていました。
第3 妻の死をきっかけに深夜営業を停止
 16年7月、妻に膵臓(すいぞう)がんが見つかりました。手術後、抗がん剤をうちながら店に立ち続けましたが、18年5月に死亡しました。亡くなる直前、病院の喫茶店で2人でモーニングを食べていた時に「こんなんできるなんて夢みたい」と漏らした妻の一言が忘れられません。コンビニなどやるのではなかった、と後悔ばかりが募ります。
 妻が務めていたマネージャーの役割を果たす人がいなくなり、アルバイト20人のうち13人が辞めてしまいました。コンビニの仕事はきつくて責任が重いのに賃金は安いとあって、今や若者から敬遠されるバイトの代表格です。人手不足は解消されず、私は1日22時間、シフトに入りました。
 このままでは過労死する。そう悟った私は19年2月、午前1時から6時まで店を閉じる時短営業に踏み切りました。本部は契約解除と1700万円の違約金支払いを通告しました。しかし、私がマスコミに訴えると、本部はこれを撤回。私には、全国のオーナーらコンビニ関係者から激励、共感の声が相次ぎ、手紙や電話は約300件に達しました。24時間営業の不満はそれほど強かったのです。
第4 理不尽なクレームさえ本部は契約解除に逆用
 正月はアルバイトの確保が困難であることから、私は19年10月、元日の休業を申し入れました。すると本部側は、私の店にはクレームが異常に多いと強調し、店舗運営に難癖をつけ始めました。私は本部からクレームがあると知らされたことは数回しかありませんでしたし、本部社員ともお客様ともしっかり話をして、全て解決してきました。
 中にはトイレを公衆便所のように使って汚し放題、駐車場に何時間も車を止める、といった非常識な人たちがいます。私は理不尽なお客さんにも3回までは低姿勢で臨みましたが、態度を改めてくれなければ毅然と対処することにしていました。皆さんに気持ちよく買い物をしてもらうためです。本部はどんな客のわがままも我慢するよう指導しますが、その負担をすべて我々オーナーに押しつけ、利益だけ享受しているのではないでしょうか。
 本部は19年12月、クレーム件数の多さなどを理由に一方的に契約解除を通知しました。さらに20年、店舗の明け渡しを求める本件訴訟を提起してきたのです。
第5 「命より大切な契約書などない」
 コンビニを取り巻く環境は激変しています。人件費は高騰し、人手は集まらず、法律で労働時間や休日の規定がないオーナーと家族は休むことなく店に立ち続け、命の危険にさらされています。家庭崩壊や自殺、過労死といった悲劇さえ報告されています。それでもオーナーたちが「24時間、365日」に従っているのは、本部がオーナーたちを契約書で縛り付け、契約解除、違約金で脅し、逆らえない状態に置いているからです。
 コンビニ本部は、オーナーの実情に沿って営業時間や休日を柔軟に見直し、業界の健全な発展をはかるべきです。私が「命より大切な契約書はない」と訴えているのは、このためです。
 今回の裁判の目的は、私自身の生活の糧であり、妻と一緒に苦労して築いた店を取り戻すことです。しかし私は同時に、全国のオーナーたちの声なき声を代弁し、コンビニ本部と対等な交渉を行うことをめざしています。24時間営業の強制はもとより、異常に高いチャージ(上納金)、特定地域に集中出店させるドミナント戦略、見切り販売(賞味期限直前食品の値下げ)への妨害など、業界が抱える構造的問題は一向に改善されないと思うからです。
 本件は私の個人的問題ではなく、本部の利益のためなら命までをも奪う大企業の道徳(モラル)の有無を問う問題です。絶対的優位の立場を利用してオーナーや家族、従業員に犠牲を強いるフランチャイズ関係ではなく、真に共存共栄する業界へ発展できるよう、賢明なご判断をお願い申し上げます。

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