26年の独裁打倒へ連日大デモ ルカシェンコ辞任、大統領選やり直し求め ベラルーシの国営工場がゼネスト

週刊『前進』04頁(3160号03面04)(2020/09/07)


26年の独裁打倒へ連日大デモ
 ルカシェンコ辞任、大統領選やり直し求め
 ベラルーシの国営工場がゼネスト

(写真 チハノフスカヤ候補のシンボルカラー、白い服を着て警察の弾圧に抗議しデモ行進する女性たち【8月12日 ミンスク】)


 8月9日に実施されたベラルーシの大統領選で大規模な不正、改ざんが行われたとして、ルカシェンコ大統領の辞任と大統領選のやり直しを求める大闘争が続いている。8月9日夜から連日のように10万人、20万人規模の街頭デモが闘われている。当局は9日から12日にかけて、デモ参加者を無差別に殴打し、7千人を逮捕・勾留した。死者も出た。こうした暴力的弾圧に対し、国営工場の大半の労働者、国営テレビの労働者、教育労働者らが就業時間内に集会を開き、ストライキを決行して抗議している。9月1日の新学年開始日には学生が教育省に向かってデモ行進した。
 大統領選前、反政権派の有力な立候補予定者たちは、立候補資格が認められなかったり、拘束されたりして、選挙から締め出された。だが、拘束された夫に代わって立候補したチハノフスカヤ氏は事実上の野党統一候補となり、「半年以内に公正な選挙を改めて実施する」ことを公約に掲げて圧倒的な支持を集めた。四半世紀におよぶルカシェンコの独裁への怒りが解き放たれた。
 中央選管は、投票箱を入れ替えたり、数字を操作したりして、即日、ルカシェンコ80・23%、チハノフスカヤ9・9%というでたらめな得票率をもってルカシェンコ当選を発表した。開票作業の不正は現場で撮影され、直ちに動画となって世界中に発信された。欧州連合(EU)などが不正選挙を非難した。
 ルカシェンコの6選を認め祝意を表したのはロシア・プーチン大統領、中国・習近平主席ぐらいだ。

チハノフスカヤが指導者を決意

 チハノフスカヤ氏は当局の圧力を受け、11日に隣国リトアニアへの出国を余儀なくされた。しかし「私は60〜70%を得票して勝利した」と改めて宣言し、ルカシェンコの退陣を求める抗議デモを呼び掛けた。
 彼女の提案で15日、平和的な政権交代を目指し政党各党や労働組合の代表者らで構成する「調整協議会」が創設された。こうした後押しを受け、チハノフスカヤ氏は17日、「国家指導者として責任を負う用意がある」と表明した。
 ルカシェンコはあくまで選挙の正当性を主張し、辞任を拒否しているが、「憲法を改正し、権力を移譲する」とも述べた。だがだれもだまされない。17日、伝統的な支持基盤だった国営のトラクター工場で演説しようとしたが、集まった労働者から一斉に「辞めろ」「帰れ」コールを浴び、退散せざるを得なかった。巻き返しを図ったルカシェンコは23日、ヘリコプターで大統領府に降り立ち、防弾服とカラシニコフ銃で武装して登場、軍と治安部隊を激励したが、その姿は失笑を買った。

追い詰められて再び暴力を行使

 警察・治安部隊は極めて暴力的だ。逮捕時だけでなく勾留中も殴打・虐待・拷問が続く。国際的にも問題となり、内務相は8月13日、負傷者に謝罪し、千人だけ釈放した。デモには阻止線を張るだけにとどめた。それも束の間、8月23日から再び強硬手段に出ている。平日に開かれる小規模の抗議集会では、数十人規模の拘束を続けている。国営工場で続くストライキに対しては工場労働者の代表らを相次いで拘束している。23日には調整協議会の指導者2人を拘束した。国営トラクター工場で無許可でストライキや集会を呼びかけたことが容疑だ。26日には調整協議会の作家アレクシエービッチ氏を事情聴取して圧力を加えた。30日の首都ミンスクでの10万人デモに際し、140人を拘束した(全国では173人)。外国メディアの報道も禁止し、外国人記者・カメラマンに国外退去を命じた。ベラルーシにはソ連以来の国家保安委員会(KGB)が存在する。
 ルカシェンコは、やむことのない抗議運動に追い詰められ、耐え切れず、凶暴化している。

武力介入を狙うロシア・プーチン

 ルカシェンコは、抗議運動が始まるとプーチンに電話し、助けを求めた(8月31日までに5回)。プーチンはロシアとベラルーシとの連合国家条約、集団安全保障条約に基づいてルカシェンコ政権に協力すると伝えた。また8月29日には記者会見で、欧米諸国を牽制したうえ、「ルカシェンコ氏の求めで治安機関要員を提供する準備をした」「状況がコントロールできなくなるまで実際に提供することはない」と語った。
 しかし、ロシアの介入は容易ではない。ベラルーシには介入を歓迎するのは今や孤立を深めるルカシェンコだけだ。新型コロナウイルス感染への対策として「ウォツカを飲めば大丈夫」などと勧めて恥じないルカシェンコの長年の独裁と腐敗に労働者人民の怒りが爆発しているのだ。闘いが労働者階級に依拠して前進する限り、国際帝国主義にも大国ロシアにも頼らないプロレタリア革命への道が開かれてくる。

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▼ベラルーシ(白ロシア)
 人口は約950万人、国内総生産(GDP)は約7兆円。1人当たりの国民総所得は、約5倍の人口と3倍の国土を有するウクライナの2倍以上。工業製品や石油精製品、化学肥料の輸出、さらに情報技術(IT)産業が経済の主軸。ロシアに大きく依存している。第1次世界大戦でドイツに占領され、第2次世界大戦で人口の4分の1を失った。1986年4月のチェルノブイリ原発事故で深刻な被害を受けた。

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