東京高裁で三里塚請求異議控訴審 天神峰で農業を続ける 法廷で市東さんが誇り高く宣言

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週刊『前進』04頁(3161号03面03)(2020/09/14)


東京高裁で三里塚請求異議控訴審
 天神峰で農業を続ける
 法廷で市東さんが誇り高く宣言

(写真 収穫した作物を手に南台の畑に立つ市東孝雄さん)

(写真 裁判終了後の報告集会では参加者に勝利感がみなぎった【9月2日 東京・霞が関】)


 9月2日、市東孝雄さんの請求異議控訴審第3回が東京高裁第4民事部(菅野雅之裁判長)で開かれた。この日は証人尋問と市東さんの本人尋問が行われ、三里塚芝山連合空港反対同盟と顧問弁護団、支援の労働者・学生・市民90人が法廷内外で終日、闘い抜いた。
 午前10時30分開廷。最初に弁護団がこの日提出した準備書面の要点を述べた。新型コロナで訪日外国人客の99%以上が減少した成田空港の状況を報告し、「市東さんの農地を取り上げ、空港施設に転用する目的が消滅した。強制執行は権利濫用(らんよう)。原判決を取り消せ」と迫った。
 次に経済学者の鎌倉孝夫さんが証言に立ち、新型コロナによって生じた現在の不況を「人間関係そのものを破壊する重大な危機」と位置づけ、新自由主義を批判し、空港の虚偽の「公共性」を厳しく指摘した。

「強制手段用いない」の確約が存在

 午後はまず、東峰地区で有限会社・三里塚物産を営む平野靖識(きよのり)さんが証言した。空港反対運動に身を投じてきた経緯を語った。そのうえで空港1期の建設過程で残虐な機動隊の暴力が行使された事実を踏まえ、シンポジウム・円卓会議(1991〜94年、運輸省、空港公団、熱田派などが参加)で「用地取得のために、今後あらゆる意味で強制手段を用いない」と確約されたことを強調した。この裁判で被控訴人NAAが確約を踏みにじり居直っていることについて、「議論をゆがめるものだ」と明確に否定した。
 いよいよ市東さんの本人尋問となった。B滑走路閉鎖中の天神峰の状況について聞かれて、市東さんは「騒音が消え、鳥のさえずりも聞こえる。タイヤのすれる音や排気ガスもなくて本当に気持ちがよく、これが本来の姿だと感じた」と述べた。そして「旅客が激減しB滑走路など使う必要がなくなったのに無理して開いているのは反対する者への嫌がらせだ。このうえに空港を大きくするなど論外だ」と弾劾した。
 さらに現在の南台と天神峰の畑の耕作状況を具体的に説明し、「旬の野菜を消費者に届けている。完全無農薬の有機農業で年間50〜60品目を栽培している」と誇り高く確認した。
 また違法・卑劣な農地強奪の策動を弾劾し、最後に市東さんは農業に取り組む姿勢を語った。「南台と天神峰の農地を取り上げられたら、農家として成り立たない」「新鮮で安全な無農薬野菜を消費者に届けたい」「1億5千万円の離作補償を受け取ることより、消費者から『おいしい』という言葉を聞いて自分の体を動かして働く方が大事だ」「自分の体の続く限りこの天神峰の地で農業を続ける」と締めくくった。傍聴席から大きな拍手が起こった。NAAの代理人弁護士たちは、市東さんの顔を見ることもできず一切の反対尋問を放棄した。
 次に補佐人として農業学者の石原健二さんが、新自由主義のもとで苦境を強いられる日本農業の現状と市東さんの農業実践の意義を陳述し、「強制執行は市東さんの人格を否定する権利濫用だ」と強く批判した。
 裁判長は終わりに、NAA側に「反論」の提出を命じ、次回期日を10月22日として午後5時に閉廷した。

報告集会で勝利へ新たな確信固める

 弁護士会館で伊藤信晴さんの司会で報告集会が開かれた。1時間の証言をやり切った市東さんは晴れ晴れとした表情であいさつに立ち、「コロナ禍のもとで向こうも簡単には農地に手をかけられないだろうが、気構えは崩さずがんばります」と述べた。
 葉山岳夫弁護団事務局長は「充実した内容でNAAを完全に圧倒した」と勝利を確認し、10月22日の最終陳述に向けて全力で闘う決意を表した。続いて弁護団が一人ひとり発言し、証言の積極的な意義を確認し、さらに動労千葉の中村仁さん、関西実行委、市東さんの農地取り上げに反対する会の連帯発言を受けた。
 最後に萩原富夫さんがまとめて、9・18団結街道裁判、9・27全国集会、10・22請求異議控訴審最終弁論などのスケジュールを確認し、「追い詰められているのはNAA。われわれは今本当に勝利できる状況を切り開いている。がんばろう」と一同を激励した。

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