JR東日本大リストラ 解雇・賃下げと対決する11月集会へ 歴史的な大合理化攻撃 民営化の破産は明らか1面から続く

週刊『前進』04頁(3162号02面01)(2020/09/21)


JR東日本大リストラ
 解雇・賃下げと対決する11月集会へ
 歴史的な大合理化攻撃
 民営化の破産は明らか
1面から続く


 JR東日本が2020年4―6月期に出した連結営業利益1783億円の赤字とは、このレベルの赤字が毎四半期続くとすれば、2020年度の営業利益は7100億円の赤字になるということだ。JR東日本はここ数年、4千憶円を超える連結営業利益を出してきた。それが、一転して大赤字に陥ったのだ。
 JR東日本の2019年度の連結営業利益も、これまでの水準より1千億円以上少ない3395億円になった(図1)。言うまでもなくこれは、3月以降、コロナ感染症が拡大し、乗客が急減少したことによるものだ。
 緊急事態宣言が発令されていた今年のゴールデンウィーク中の新幹線の乗客は、前年比3〜5%、在来線の特急も5〜7%に落ち込んだ。緊急事態宣言解除後も、乗客数は回復していない。山手線や京浜東北線、中央快速線など首都圏の線区では、平日の通勤時間帯の乗客はコロナ前の約6割にとどまっている。
 JRをはじめとした鉄道事業者、日本航空、全日空などの航空会社、ホテル事業者や旅行業者を救済するために行われたGoToトラベル・キャンペーンは、コロナ感染拡大の第2期を引き起こし、人の流動をかえって押しとどめた。そのため、JRの休日の乗客数も、以前の3割台に落ち込んだままだ。このGoToトラベル・キャンペーンを、安倍政権の官房長官として最先頭で進めたのは菅義偉だ。インバウンド(訪日外国人客)を当て込んでの「経済成長」は、もはや全く望みがない。外国からの入国が実質的に禁止された状態は続いたままだ。鉄道事業から脱却してホテル業や駅ビル建設、不動産業でもうけようとしたJRの経営計画もインバウンドの需要を前提にしたものだ。
 社長声明で深沢は「鉄道事業が厳しい時こそ、新たな成長エンジンと位置付けた生活サービス事業やIT・スイカ事業の収入を伸ばす」と言うが、その思惑も完全に崩れている。
 9月3日の記者会見で、深沢は「V字回復を予想していたが、今はL字回復といわれている」と言わざるを得なかった。景気回復など一切期待できないのだ。

一時金カットと人員削減

 この中でJRがやろうとしているのは、あからさまな賃下げだ。JR東日本は今年4―6月期の決算を発表するとともに、夏の一時金の減額で110憶円を削減したと表明した。JR東日本ではここ数年、夏季手当は基準内賃金の2・91カ月分、年末手当を合わせた年間合計で6・09カ月分という支給水準が続いていた。しかし、今夏の一時金は2・4カ月分に下がった。グループ全体で1500億円ものコストカットを狙うJRが、冬の一時金の大幅削減に踏み込んでくることは目に見えている。
 JR西日本はさらに露骨だ。春闘で夏冬の一時金の支給基準を決める方式をとっているが、冬の一時金について、すでに妥結している労資協定の見直しを求めた。JR連合系の西労組、JR総連系の西労は、「雇用を守るため」としてその提案を受け入れた。国鉄分割・民営化の直前、国鉄当局によって労使協約が次々と破棄され、労働者の権利がことごとく踏みにじられていったことを思わせるような事態だ。資本はコロナと赤字を振りかざせばどんな無理でも押し通せると思っているのだ。
 JR東日本は昨年3月のダイヤ改定時に乗務員勤務制度を改悪し、管理職が片手間で乗務することを可能にした。今年4月には、運転士と車掌の職名を廃止する「新たなジョブローテーション」を強行した。この経過を見れば、JRがかねてからたくらんでいた乗務手当の廃止に踏み込んでくることも大いにありうる。
 しかし、赤字は労働者の賃金を下げる理由にはならない。赤字を叫びながら、株主には巨額の配当を続けている。配当や自社株買いなどの株主還元をやめれば、1千億円程度の資金は捻出できる。鉄道が金もうけの手段とされたことが、そもそも間違いだ。

「時間帯別運賃」は人減らしの手段だ

 JRは最終電車の運行時間を30分程度早めることで、線路の補修などの夜間作業の時間を確保し、作業効率を改善するという。しかし本当の目的は、昼間の時間帯も含め列車の本数を大幅削減することだ。来年3月のダイヤ改定は、かつてないものになろうとしている。ローカル線は次々と切り捨てられたが、近郊から首都圏に通勤客を運ぶ列車が大幅に削られたことなど、日本資本主義の歴史の中にはなかったことだ。
 列車本数が減れば運転士や車掌を削減できる。さらにそれは、全業務にわたる人員削減に行き着く。駅の営業時間も短縮され、列車の検査・修繕業務も縮小される。線路などの設備を点検・維持する業務も減る。外注化・非正規職化が徹底的に強行された清掃業務も、列車本数が減れば、その分、人員は減らされる。
 JRはラッシュ時間帯の運賃を引き上げる「時間帯別運賃」「変動運賃」の導入を表明した。これも大幅な人員削減と一体だ。
 鉄道の車両や設備、それを動かす人員は、時間当たりの列車運行本数が最も多いラッシュ時に合わせて配置されている。ラッシュ時の乗客が減り、他の時間帯に分散すれば、JRは要員も設備も大幅に減らすことができる。
 それに加え、JRは「密を避ける」「コロナ対策」という、運賃引き上げのための格好の口実を手に入れる。大幅な収入減にあえぐJRは、どんな名目であれ運賃を引き上げたいのだ。

IT合理化で安全を破壊

 JR東日本社長の深沢は、株主総会や記者会見、JR東日本グループ社長会などの場で、「固定費割合が大きい鉄道事業を中心に経営体質を抜本的に見直す」と繰り返し強調している。これは、鉄道事業からの脱却を唱えた「グループ経営ビジョン『変革2027』」を、さらに前倒しで強行するということだ。
 5〜6両編成の車両もワンマン化する無謀な施策や、ドライバレス(運転士なし)運転の実用化、状態基準検査(CBM)と称する車両や設備の保守・点検業務の合理化が、それによってさらに進もうとしている。
 これらはどれ一つとっても、安全の破壊に直結するものだ。
 IT機器とAI(人工知能)を用いた保守・点検は、部品や設備は壊れる直前まで使い続けるという考え方で成り立っている。定期的な検査で故障を見つけ、事故を未然に防いできたこれまでの方式とは全く異なる。しかも、IT機器には設備の状態を正確に判断できる機能もない。
 9月に入ってJR東日本は、ローカル線に新たな信号システムを導入すると発表した。外部の通信会社の携帯無線システムを利用して信号や踏切を制御するというのだ。安全の根幹にかかわる信号などの装置は、鉄道会社が自前で整備することがこれまでの常識だった。膨大な信号通信設備やその保守に要する人員を削減するために、これまでのやり方は投げ捨てられるのだ。災害時に通信会社のシステムがダウンすることは珍しくはない。
 ローカル線ならそうした事態が起きても構わないというのが、JRの姿勢だ。業務の外注化と強制出向、ひいては出向先への転籍を強いる攻撃も強まる。1987年4月の発足時に8万2500人いたJR東日本の労働者は、2020年4月には5万1560人に減った。鉄道事業に携わる人員に限れば、7万1800人から3万6670人へとほぼ半減した。その分、人件費は削られ、外注化が進み、業務を担うのは非正規労働者とされて、JRは巨額の利潤を上げてきたのだ。(図2

「輸送モード転換」でローカル線廃止

 JR東日本は「グループ経営ビジョン『変革2027』」で、「地域特性に応じた輸送モードへの転換」を掲げた。採算の取れないローカル線は切り捨てるということだ。1500億円コストカットは、これを激しく促進する。
 JR東日本は、輸送密度(鉄道営業キロで1㌔当たり1日の乗客数)2千人未満の線区を「輸送モード転換」の対象とする。JRが公表した19年度の統計で、輸送密度2千人未満の線区は≪≫のとおりだ。
 鉄道営業キロでは、全体の35%がこれに当たる。その廃線にJRは一気に踏み込もうとしているのだ。
 国鉄分割・民営化の際にもローカル線は次々に切り捨てられた。それから33年を経て、分割・民営化当時は廃線の対象にならなかった線区が、赤字化し廃止されようとしている。それは、国鉄分割・民営化によって始まった新自由主義が、どれだけ地域を衰退させ、住民の生活を壊してきたかの証しだ。
 今再びJRは、地域を徹底的に破壊して生き延びようとしている。だが、それは民営化そのものを撃つ地域からの反撃を必ず生み出さずにはおかない。

闘ってこそ雇用は守れる

 「休業を指示する」という規定を盛り込んだJR東日本の就業規則改悪は、きわめて重大な攻撃だ。資本が「業務量の減少」を宣言すれば、いくらでも休業を命じることができる。それは意図的な人員削減にも、ローカル線の廃止にも使える。しかもこれは、解雇の一歩手前の攻撃だ。
 東労組との交渉で、JR東日本は「解雇の可能性が完全にゼロとは言い切れない」と回答した。これに対して東労組は、「雇用を守るためにも施策を担い、会社の発展を目指す」「健全な経営基盤の再確立に向けて一人ひとりが真剣に考え実行する」と応じた。国鉄分割・民営化に際して、当時、首切り3本柱と言われた早期退職・一時帰休・出向を組合幹部が組合員に強制したことさえ持ち出して、「雇用を守る」と唱えている。整理解雇さえ避けられれば、どこまでも屈服するという表明だ。
 だが、経営を黒字化することで雇用は守れるのか。JRの意図は、赤字とコロナを振りかざして、解雇を含む大リストラを強行することにある。そもそもJRは、20万人の国鉄労働者から職を奪った国鉄分割・民営化によって発足した存在だ。今やあらゆる産業でボーナスゼロや大量解雇の攻撃が吹き荒れている。この中で、JRは再び大量解雇の攻撃の先頭に立とうとしている。そのために、労働組合を一掃し、「労組なき社会」のモデルを作ろうとしているのもJRだ。これと徹底対決してこそ雇用は守れる。
 動労千葉は、組織拡大できたのは国鉄分割・民営化反対のストライキの時、1047名解雇に対する90年3月の前倒しストライキの時、外注化反対闘争の時の3回だったと自らの闘いを総括し、JR大リストラに立ち向かおうとしている。労組つぶしの弾圧を打ち破って奪還された全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部の武建一委員長は、「資本が力を失う不況の時こそ労働者にとってはチャンス」と説いている。
 今、起きているのは民営化の破産だ。本州JR3社が大幅な赤字に陥ることなど、国鉄分割・民営化の枠組みでは全く想定されていなかった。
 鉄道事業からの脱却と業務の全面外注化に資本の延命策を求めた「グループ経営ビジョン『変革2027』」もまた破綻した。同計画は「鉄道起点ではなくヒト起点に」などと言うが、どうあがいてもJR資本に成長戦略など見いだせるはずがない。結局それは、業務の外注化と外注先への転籍強要をやみくもに強行するものになるほかにない。
 労働者が団結を崩さなければ勝機はある。この闘いを通じてJR職場から階級的労働運動をよみがえらせるのが、11・1労働者集会に至るこの秋の決戦だ。

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