安倍政権の7年8カ月 非正規化と貧困が拡大 労基法、派遣法など次々改悪

週刊『前進』04頁(3162号03面03)(2020/09/21)


安倍政権の7年8カ月
 非正規化と貧困が拡大
 労基法、派遣法など次々改悪


 安倍は辞任を表明した8月28日の記者会見で、自己の政権のもとで「400万人を超える雇用を作り出すことができた」と自慢した。だが、安倍政権の7年8カ月で進んだことは、労働者の徹底した非正規職化と低賃金による貧困だ。過労死に至る過酷な労働も一向に減らない。「自助」を叫びアベノミクスを継承すると言う菅政権のもと、労働者はコロナ危機下の大量解雇と一層の権利剝奪(はくだつ)に直面しようとしている。
 安倍の言う「400万人以上の雇用創出」とは、総務省の労働力調査では、第2次安倍政権発足時の2013年1月の雇用者数が5513万人だったのに対し、今年7月の雇用者数は5942万人で、429万人増えたことを指すらしい。だが、よく知られているように、増えた雇用のほとんどは非正規だ。雇用者数が最大となった去年10月と13年1月を比べると、非正規雇用が369万人増える一方、正規雇用は183万人しか増えていない。
 しかも、コロナによって雇用そのものが急速に失われている。昨年10月に2196万人だった非正規労働者は、今年7月には2043万人になった。政府の統計でさえ、153万人の非正規労働者が職を奪われたことを示している。

規制なくし工場法以前に戻す大攻撃

 安倍政権は当初から「世界でもっとも企業が活動しやすい国をつくる」と叫んで登場した。そのためには、労働基準法などの規制は撤廃されなければならない。だから安倍は18年6月、「70年ぶりの大改革」と称して、労基法など8法の改悪を一括した「働き方改革法」を押し通した。「70年ぶり」とは、日本で初めて工場法が制定された1911年以来ということだ。経団連はかねてから「工場法以前に戻せ」と叫んでいた。労働者を保護する法律などなくせと主張したのだ。
 この時の労基法改革で、残業代なしで労働者を無制限に働かせることができる「高度プロフェッショナル制度」が導入され、過労死ラインを超える月100時間の残業も合法化された。
 これに先立つ15年秋、労働者派遣法が改悪された。それまでは「専門26業種」を除き、派遣労働者を使用できるのは3年とされていたが、その規制が取り払われた。派遣労働は例外的なものではなく、恒常的なものに位置づけられた。
 同時に、同じ派遣労働者を3年以上、使い続けることは禁止された。労働者を入れ替えれば資本は永久に派遣労働者を使えるが、労働者は3年ごとに必ず解雇されることになったのだ。
 「働き方改革法」の強行に際して、安倍は「非正規という言葉をなくす」と言った。これは、正社員をなくして全労働者を非正規職化すれば、正規・非正規という区分自体がなくなるということだった。

労組解体うち破る11月労働者集会へ

 だから、安倍と経団連はこの過程で「正社員改革」を強調した。今、コロナ危機の中で、正社員を「ジョブ型雇用」に変えて実質的に非正規職化する攻撃が本格化している。それは、やがては「雇用」という概念さえなくして、全労働者を個人事業主=フリーランスにすることに行き着く。
 安倍政権は労働組合をつぶそうとたくらんだ。全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部への弾圧はその先端にある攻撃だ。安倍はJR東日本に東労組の解体を指示し、JRをモデルに「労働組合のない社会」をつくることも狙った。
 さらにトヨタ資本は、評価によって定期昇給に大幅な差がつく賃金体系の改悪を労組にのませた。評価で賃金が決まるのなら労資交渉も春闘もいらない。連合型の御用労組を解体する攻撃も始まったのだ。
 だが、コロナ下の大量解雇や賃下げに対し、労働者は自らの手で団結を取り戻して立ち向かう。11・1労働者集会は、そうした営みを束ね合わせて労働運動をよみがえらせる闘いだ。
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