豊洲耐震偽装の訴え却下 都とグルになり違法建築を擁護

週刊『前進』04頁(3163号02面03)(2020/09/28)


豊洲耐震偽装の訴え却下
 都とグルになり違法建築を擁護


 豊洲市場の耐震偽装を問う裁判の判決が9月17日、東京地裁で行われた。豊洲市場違法建築物除却命令等義務付け請求事件である。民事第51部清水知恵子裁判長は2018年6月、原告・明藤商店をはじめとする水産仲卸業者からの「都と裁判所は違法建築物をただせ!」という提訴をわずか数秒の言い渡しで却下した。何の責任も取ることなく法廷から逃げ去るまったく許せない不当判決だ。
 原告と傍聴者、代理人の武内更一、藤田城治弁護士はただちに報告と総括会議を持った(写真)。「豊洲市場の危険性を訴える本論に踏み込ませない都と裁判所がグルになったイカサマ裁判だ。口封じで危険な職場をこのまま黙って見ていろということはできない。正義はこちらにある。声を上げ続けなければ市場全体の利益を守ることはできない」と感想を寄せ合い、控訴審を含めた新たな闘いに踏み出すことを確認した。
 判決は「棄却」ではなく「却下」という門前払い同然である。理由書で裁判所が示した3つの争点での判断は裁判所が自らねつ造した「建築基準法の解釈論争」だけだ。その判断も富山県知事の病院開設中止勧告を実質的権限として認めた2005年最高裁判例に異を唱えて行った「都知事の場合は都の施設に除却を含む改善を要請しても効果を期待する権限は無いから提訴が無意味」というとんでもない論法で、提訴不相当と見なした。これでは都の施設だけは違反があっても免除されるという大問題を引き起こす。2点目の争点の「震度6で倒壊するおそれ」も3点目の「水産仲卸棟1階柱脚の鉄量不足や横揺れ耐性不足といった建築基準法違反の具体例」についても「判断するまでもなく不適法」と中身に入れず逃げた。
 もとよりこの裁判は都知事小池が「5年後には築地に戻す」などの虚言を振りまいて18年10月の豊洲市場開場を宣言し、83年続いた築地市場を封鎖・解体し、築地労働者に移転を強制する中で生み出された仲卸自らが切り開いた闘いだ。除染もままならないシアン、ヒ素、ベンゼンなど毒の噴出する東京ガス跡地で食品営業を強いることへの怒り、「いずれ仲卸は流通合理化で役割を終える」などと呼号し豊洲を市場民営化と一体で巨大物流センターへと再編しようという都の策略と闘う裁判だ。
 豊洲では死亡を含む人身・物損事故が開場2カ月だけで82件、さらに亀裂、地割れ、カビの発生、排水管詰まりが多発している。その根源は築地のように1階部分が広い市場の概念を壊し5階立ての低い天井に仲卸店舗と重機、エレベーター、スロープを無理やり押し込んだ構造設計にある。その5階分の荷重が1階柱脚にのしかかっている。だからこの柱脚での耐震偽装は致命的だ。
 反動とはいえ今回の判決は「豊洲市場は安全だ」と結局言い切れず、全く自信がない姿を示した。「除去だけは勘弁してくれ」という悲鳴だ。現場が団結し豊洲市場の破綻責任を追及し続ければ築地を含め安全な市場を取り戻すことは全く可能だ。豊洲を止め築地を活かす闘いはまさにこれからだ。
(山上龍一)

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