東京高裁が即日結審の暴挙 国鉄解雇の審理拒んだ労働委を擁護

週刊『前進』04頁(3165号01面03)(2020/10/12)


東京高裁が即日結審の暴挙
 国鉄解雇の審理拒んだ労働委を擁護

(写真 裁判に先立って、「裁判所はまともな判断を行え」とシュプレヒコールを上げた【9月29日 東京高裁前】)

 国鉄分割・民営化による解雇の撤回を求めた動労総連合の申し立てを、まともな審理もせずに切り捨てた千葉県労働委員会を弾劾する裁判が闘われている。その控訴審の第1回口頭弁論が9月29日、東京高裁第2民事部(白石史子裁判長)で行われた。
 白石裁判長は即日結審を言い渡し、判決日を11月12日に指定して、法廷から逃げ去った。

解雇の真相は明白

 この裁判は、次のような経過の中で起こされた。
 2018年5月、動労総連合は国鉄1047名解雇の撤回や団体交渉の開催を求めて、JR東日本を相手に千葉県労働委員会に申し立てた。しかし千葉県労働委は、一切の事実調べをせずに審理を打ち切った。
 審理を担当した村上典子公益委員は、調査の冒頭、「労働委員会は最高裁判決に反する命令は出せない」と言い放った。村上委員の言う最高裁判決とは、「国鉄分割・民営化による労働者の解雇について、JRに責任はない」とした2003年の反動判決のことだ。この判決で最高裁は、「国鉄とJRは別法人」とした上で、「JRに採用される者と採用されない者を振り分けたのは国鉄だから、そこに不当労働行為があったとしても、その責任は国鉄にあり、JRにはない」と判断した。だが、その判決でさえ、「JR設立委員自身が不当労働行為を行った場合は別として」と述べているのだ。
 国鉄を引き継ぐとされた鉄建公団(現鉄道運輸機構)を相手に動労千葉が起こした裁判では、動労千葉組合員をJR不採用とするために作られた不採用基準は不当労働行為であることが、15年6月の最高裁決定で確定している。さらに動労総連合は、この不採用基準を作るように命じたのはJR設立委員長の斎藤英四郎(当時、経団連会長)だった事実をつかんだ。
 千葉県労働委への申し立ては、この事実をもとになされた。だが、村上公益委員は事実も調べず、審理を拒んだ。この暴挙に対し、動労総連合は村上委員の忌避を申し立てたが、千葉県労働委はそれも却下した。
 このため動労総連合は、忌避申し立てを認めることなどを求めて、千葉地裁に提訴した。だが、その裁判が継続中の19年8月、千葉県労働委は動労総連合の申し立てを却下する決定を下し、同年10月には千葉地裁も訴えを却下する判決を出した。今回行われたのは、その裁判の控訴審だ。
 なお、千葉県労働委による却下決定に対して動労総連合は中労委に再審査を申し立てたが、中労委は調査期日も開かずに今年3月、却下・棄却命令を出した。動労総連合はこの中労委反動命令の取り消しを求める裁判も起こしていて、その第1回口頭弁論は11月11日に東京地裁で行われる。

民営化の根本撃つ

 9月29日の裁判では、動労総連合代理人の葉山兵夫弁護士が意見を述べ、「労働者の団結権を擁護すべき機関としてあるまじきこと」と千葉県労働委を弾劾した。解雇された当該である動労千葉争議団の中村仁さんは、「私たちの名前は直前までJR採用候補者名簿に載っていたが、不採用基準で削除された。その基準を作ったのはJR設立委員だったが、その事実も調べずに審査を打ち切った労働委は、自らの使命を放棄してJRと国家を擁護した」と語気強く語った。だが、白石裁判長はそれを聞きもせず結審を宣告した。
 裁判後の総括集会で、動労千葉争議団の中村さん、高石正博さん、動労総連合1047協議会の小玉忠憲さんはそれぞれ、「裁判所が解雇の真相に触れないのは、そうした途端に国鉄分割・民営化が根本から崩れるからだ。攻めているのはわれわれだ」と語った。
 代理人弁護団は、中労委命令の取り消しを求めるもう一つの裁判を本命の闘いと位置づけ、11月11日の裁判への傍聴結集を呼び掛けた。動労千葉を支援する会は、解雇撤回・JR復帰を求める新たな署名の拡大へ、街頭に打って出る意志を示した。
 集会をまとめた動労千葉の関道利委員長は、「動労千葉は定期大会で、JR大合理化に対してストで反撃する態勢を確立した」と報告し、その最初の決戦として11・1労働者集会への総結集を訴えた。
 コロナ情勢下、全産業で始まった大量解雇との攻防の中でこそ、国鉄解雇撤回闘争は生きてくる。11・1集会で総反撃に立とう。
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