新自由主義強める菅倒そう コロナ解雇、賃下げ許すな 国鉄、医療先頭に反撃を!

週刊『前進』04頁(3168号01面01)(2020/11/02)


新自由主義強める菅倒そう
 コロナ解雇、賃下げ許すな
 国鉄、医療先頭に反撃を!


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 臨時国会開会日の10月26日、国会前に菅政権打倒の怒りのアピールが響いた。首相就任から1カ月以上が経過した今、菅の正体は誰の目にも明らかだ。日本学術会議の新会員候補任命拒否問題に象徴されるように、新自由主義と改憲・戦争攻撃をさらに凶暴に推し進めるために登場した菅政権への怒りは全社会に満ちている。とりわけ、新型コロナに乗じた大量解雇や賃下げ攻撃との攻防はこれからが正念場だ。労働者には「仕方ない」と我慢すべきことなど何一つない。あらゆる職場から理不尽に対する怒りの声が上がり、団結が生まれ、闘いが始まっている。11・1労働者集会、改憲阻止!1万人行進を新たな出発点に、労働組合の力で職場から社会を変える闘いに打って出よう。

民営化・非正規職化を加速

 10月26日に菅が行った所信表明演説は、労働者階級への攻撃を一層強める意思に明確に貫かれている。
 演説では、コロナ対応にあたる医療現場や保健所、介護現場への「敬意と感謝」を口にしたが、菅が実際にやろうとしていることは現場労働者が求めるものとは全く逆だ。「国民の命と健康を守り抜く」と言いながら、賃金や生活の補償には一言も言及しない。コロナ対策と称して強調するデジタル化も「大胆な規制改革」の一環と位置づけられている。その真の狙いは大合理化=雇用・賃金破壊、監視国家化だ。人材派遣会社パソナグループ会長で、菅の肝いりで政府の成長戦略会議のメンバーとなった竹中平蔵は、著書で「デジタル資本主義の社会のもとでは今とは桁違いの格差が生じざるを得ない」(『ポストコロナの「日本改造計画」』)と認め、居直っている。
 菅が就任前から繰り返し強調する「自助・共助・公助」とは、コロナ下で顕在化した社会の崩壊、民営化・非正規職化と社会保障の解体を極限まで推し進め、「自己責任論」をすべての労働者とその家族に押し付けるということだ(3面「焦点」で詳論)。竹中が月7万円の「ベーシックインカム(BI)」と引き換えに生活保護や年金給付、社会保障などの廃止を主張したのはその典型である。
 しかし、むき出しの凶暴性は敵の危機の表れだ。医療労働者のストライキが感動的に示したように、闘う労働組合が目に見える存在として登場したときに、こんな腐ったイデオロギーは絶対に打ち破れる。

改憲・戦争へ巻き返し狙う

 安倍がぶち上げた「2020年新憲法施行」という改憲プランは、労働者民衆の不屈の闘いで完全に打ち砕かれた。菅はそれを巻き返そうと必死だ。
 「挙党態勢で臨め」という菅の指示を受け、10月8日には自民党憲法改正推進本部が菅政権下で初の役員会を開催。13日には憲法審査会に提出する改憲原案の年内策定に向けた起草委員会の初会合を開催し、18年にまとめた改憲4項目を「素案」として、あらためて条文を練り直し具体化させることを確認した。
 菅が演説で一切触れなかった日本学術会議の任命拒否も、改憲・戦争に向けた地ならしだ。推薦リストから外す6人を選別した杉田和博官房副長官は警察庁警備局長や内閣情報調査室長を歴任してきた人物だ。警察官僚の指示で戦争に反対する学者を排除し、学術界を内閣の支配下において国策遂行機関へとつくり変える。戦前の日本帝国主義のやり方とどこが違うのか。この暴挙に対し、今こそ力ある労働運動・学生運動の登場が求められている。
 さらに重大なのは、菅が所信表明演説で、来年1月の発効が決まった核兵器禁止条約への参加を含めた核廃絶の取り組みについて一切言及しなかったことだ。加藤勝信官房長官は同日の記者会見で「条約はわが国のアプローチとは異なる」として批准しない考えを表明。命がけで核廃絶を訴えてきた広島・長崎の被爆者をはじめ、全世界で激しい怒りが噴出している。
 菅は逆に「2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする」ために核・原発政策を推進すると述べた。福島第一原発からの汚染水放出、各地の原発再稼働に向けた動きからも明らかなように、日帝はどこまでも核と原発に固執し核武装を追求している。来春は2011年3・11福島第一原発事故から10年。核・原発をめぐる攻防は新段階を迎える。福島の怒りと固く結合し、菅打倒へ闘おう。

中国敵視し、安保体制強化を画策

 菅はまた演説で、日米同盟こそ「インド太平洋地域と国際社会の平和、繁栄、自由の基盤」だと強調した。現に日米同盟下で中国包囲網形成を積極的に推進し、改憲・戦争攻撃をエスカレートさせている。
 臨時国会開会に先立ち、菅はベトナムとインドネシアを訪問した。南中国海で中国と領有権を争うベトナムについて、「『自由で開かれたインド太平洋』を実現する上で要となるパートナー」と位置づけ、日本からの武器輸出を可能にする防衛装備品・技術移転協定を締結した。これと並行して、自衛隊が安保関連法に基づいて行う「武器等防護」の対象にオーストラリア軍も加えるための調整に入ることで合意した。
 許しがたいのが韓国についての言及だ。日本軍軍隊慰安婦や徴用工をめぐる問題を念頭に、傲慢(ごうまん)にも「我が国の一貫した立場に基づいて適切な対応を強く求めていく」と述べたのだ。ドイツ・韓国をはじめ全世界の人々の怒りでひとまず粉砕されたが、菅政権は就任直後に、ドイツ・ベルリンに建立された「平和の少女像」を撤去するようドイツ外務省に圧力をかけた。戦争と植民地支配の歴史を居直り抹殺しようと狙う菅は、国際連帯にかけて打倒あるのみだ。

労働組合を歴史の前面に

 11月3日のアメリカ大統領選をもって、世界はすさまじい激動情勢へと突入していく。アメリカで起こっていることは新自由主義の極限的矛盾の爆発であり、階級支配の大崩壊だ。選挙がいかなる結果になろうとも、歴史的な決起を開始した労働者階級の闘いこそが時代を動かしていく力だ。ブラック・ライブズ・マター運動は警察の暴力への抗議行動にとどまらず、差別を武器に労働者民衆を分断支配してきた資本主義体制を打ち倒すまでやむことのない数百年越しの闘いとして前進している。
 日本でも構図は全く同じだ。人間の命と資本の金もうけをてんびんにかけ、命を切り捨ててきた新自由主義に対して、コロナを契機に公然と労働者民衆が反旗を翻し始めた。
 医療労働者によるストライキは、「自分たちは何のために働いているのか」という根源的な問いをすべての労働者に投げかけた。患者の健康や命よりも「稼ぐ」「もうける」ことが優先される現実。もう我慢はやめよう!これ以上奪われてたまるか!と胸を張って立ち上がった時に、これまでの常識などぶち破れることを、同じ状況の中で格闘する全国・全世界の労働者に示したのだ。戦争を止める力もここにこそある。
 この秋から冬に向け、JRでの大合理化攻撃をはじめ、製造業や航空業などあらゆる産別でコロナを口実とした解雇、大リストラ、冬季一時金カットを含めた賃下げなどの攻撃が吹き荒れようとしている。膨大な数の労働者とその家族を生きていけない状態にたたき込むものだ。
 しかし、このコロナ危機、新自由主義の大破綻のただ中で、階級的労働運動をよみがえらせ、労働者階級が歴史の前面に躍り出る革命のチャンスが訪れている。医療やJRで始まった闘いを先頭に反転攻勢に打って出よう。弾圧をはね返し「組織を根本的につくり直す」構えで闘う全日建運輸連帯労組関西地区生コン支部に学び、この時代に立ち向かう階級的労働運動の発展に総力を尽くそう。その力で菅政権を打倒し、改憲・戦争を阻止しよう。

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