市東さんが農地守る決意 三里塚請求異議控訴審で最終弁論

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週刊『前進』04頁(3168号03面01)(2020/11/02)


市東さんが農地守る決意
 三里塚請求異議控訴審で最終弁論

(写真 〈上〉反対同盟を先頭に意気高く日比谷公園からデモに出発〈左〉東京高裁に要望書653筆提出へと向かう【10月22日】)

(写真 〈上〉反対同盟を先頭に意気高く日比谷公園からデモに出発〈左〉東京高裁に要望書653筆提出へと向かう【10月22日】)


 10月22日、東京高裁第4民事部(菅野雅之裁判長)で、天神峰・市東孝雄さんの第4回請求異議控訴審が開かれ、最終弁論が行われ、この日で結審した。市東さんを先頭に三里塚芝山連合空港反対同盟と顧問弁護団、支援の労働者・農民・学生・市民170人は、農地強奪の強制執行を絶対に許さぬ決意で一つに結束し、闘い抜いた。
 開廷に先立ち、日比谷公園霞門前に全国の仲間が集った。張り詰めた空気の中で、決戦本部長・太郎良陽一さんの司会で決起集会が始まった。
 東峰の萩原富夫さんがマイクを握り、「今や成田空港は必要なくなった。農地に戻せ!」と断じ、官公庁や裁判所の労働者に向け、空港の反人民性と農地を守る闘いの正義を訴えた。
 動労千葉の中村仁書記次長などの連帯発言を受け、正午にデモに出発。宣伝カーからは婦人行動隊・宮本麻子さんが、「空港絶対反対」のアピールを響かせ、首都中枢を堂々行進して裁判所に迫った。
 デモ後、反対同盟はこの間全国から寄せられた「農地奪うな」の要望書653筆の合冊を携え、拍手で送られながら裁判所内へ向かった。16階の高裁第4民事部書記官室を訪れ、萩原さんが読み上げた上で要望書を提出した。

強制執行するな

 午後2時に102号法廷で開廷。今回も「コロナ」を理由に一般傍聴は座席数の3分の1以下、30人程度しか許されない。
 最初に、市東さん本人が意見陳述を行った。「なぜ私が農地を明け渡せなどという裁判に訴えられたのか、今もわからない」と怒りをにじませ、祖父の代から受け継ぎ耕してきた農地を奪おうとする成田空港会社(NAA)の卑劣なやり口を挙げ、弾劾した。そして「小作農にも耕す権利がある。違いますか」と鋭く問いかけた。そして、もっとも自分の大事にする信条は「うそをつかないこと」と述べ、完全無農薬・有機農業に誠実に取り組んできたことを自信をもって確認した。最後に裁判長に向けて、「土は生きている。土を殺すな。俺の仕事と誇りを奪わないでくれ。農業をおろそかにしてはならない。強制執行を許可しないでほしい。私は天神峰の畑を耕し続けます」と不動の決意を突きつけ、陳述を結んだ。
 うそにまみれた「訴訟活動」に没頭してきたNAA代理人たちは、市東さんの顔を見ることもできない。
 続いて、石原健二さん(農業経済学)、内藤光博さん(憲法学)の二人が補佐人として、強制執行絶対反対の意見を陳述した。
 弁護団による最終準備書面の陳述に入った。342㌻の、まさに心血を注いで書き上げた弁護団の主張の集大成だ。従来の論点に加え、今回最も力を入れて書かれた「新型コロナ」問題がNAAを直撃した。
 コロナ大不況でNAAは存亡の危機に転落し、農地を空港施設に転用する必要性・合理性は完全に消滅した。感染症の世界的大流行によって、航空市場の需要は蒸発し、航空バブルは崩壊した。B滑走路をはじめ成田空港の諸施設は閉鎖に追い込まれ、設備過剰が露呈した。今後の回復はあり得ない。観光立国戦略は挫折し、需要右肩上がりの夢想は破産した。全日空の今期の赤字は過去最悪の5千億円規模となり、国際線を成田から撤退させるとの方針である。NAA田村社長は「航空需要に貢献するため機能強化をやる」と言うが、本末転倒だ。
 農地法裁判の確定判決は死文と化しており、それに基づく強制執行は著しく信義誠実の原則に反し、明白な権利濫用である。原判決を取り消せ!
 弁護団の圧倒的弁論の力が法廷内を制圧し、傍聴者は賛嘆の拍手を送った。
 菅野裁判長は、被控訴人・NAAが卑劣にも何も反論しないことをさも当然のように確認し、弁論の終結を宣言し、判決日を12月17日と指定し、閉廷を宣した。わずか2か月後だ!

判決は12月17日

 弁護士会館で伊藤信晴さんの司会で報告集会が開かれた。市東さんは、「こんなに判決日が早いとは内容をもう決めているのでしょう。しかし、コロナの空港への影響は続きます。これからもみなさんと共に闘います」と決意を述べ、大きな拍手を受けた。
 続いて弁護団事務局長の葉山岳夫弁護士が、「今日の陳述で理論的には完勝し、NAAに痛打を浴びせた。どのような判決が出ようと、現地での実力闘争を基盤として弁護団も全力で闘い抜く」と鮮明な決意を表した。さらに弁護団それぞれが勝利感をたたえて発言し一同の奮起を促した。
 全国農民会議の小川浩共同代表は連帯発言で、「市東さんへの攻撃の背景には、日本農業そのものの危機がある」と述べ、農民がこの農地決戦を先頭で担う意気込みを表した。
 一日の闘いを通して成田廃港の現実性を全員で共有し、12月17日の判決を迎え撃つことを誓い合った。

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◎デモ・傍聴に参加して
 洞口朋子・杉並区議会議員

 市東さんの冒頭の意見陳述に涙が出るほど感動しました。お父さんの闘いを継ぎ、「うそをつかない」という生き方を貫く市東さんを見て、三里塚54年の不屈の闘いが私の拠りどころだと再確認できました。私も杉並で田中区政や口先だけの既成野党と対決し、全力でがんばります。(談)

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