焦点 自衛隊の演習激化 中国との戦争構え米軍と一体に

週刊『前進』04頁(3170号03面03)(2020/11/16)


焦点
 自衛隊の演習激化
 中国との戦争構え米軍と一体に


 11月3日投開票となったアメリカ大統領選挙で、黒人や青年世代をはじめとした全米の労働者階級人民の怒りが爆発し、ついにトランプを打倒した。新自由主義の全面崩壊とコロナ×大恐慌情勢のただ中で、今やアメリカ階級闘争は空前の高揚期を迎えており、この闘いはバイデン新政権のもとでも一層激化するほかない。
 他方で米支配階級は、アメリカ帝国主義の存亡をかけてトランプ政権が展開した中国への敵対政策を、バイデン政権下でも徹底的に推進しようとしている。それ以外に、基軸国として生き延びる道も、国内階級闘争の激化から逃れるすべもないからだ。オバマ政権下で国防次官となり、バイデン新政権の国防長官候補とも呼ばれるミシェル・フロノイは、「米中戦争が起きるリスクはこの数十年で最大限に高まっており、しかもそのリスクは拡大し続けている」と主張し、インド太平洋地域への関与の増強、同盟国との連携強化、定期的な軍事演習の推進などを提言している。バイデンがトランプ以上に対日要求を強めてくることも不可避だ。
 日本帝国主義・菅政権は、米中激突のはざまで右往左往しながら、結局は日米安保の強化、自衛隊の本格的な侵略軍隊化、改憲・戦争に帝国主義としての活路を見いだそうと必死になっている。
■日常的に多国軍との共同行動
 今年7月、米軍は「航行の自由」作戦の一環として、原子力空母「ロナルド・レーガン」と「ニミッツ」を巡洋艦、駆逐艦などとともに南中国海へ派遣し、100機以上搭載された戦闘攻撃機を何度も離発着させる訓練を強行した。これに激しい脅威を感じた中国軍は、8月に「空母キラー」と呼ばれる対艦弾道ミサイル4発を本土から南中国海に向けて発射する対抗措置をとった。続いて10月にも、米軍は「ロナルド・レーガン」を主軸とする空母打撃群を南中国海に投入した。
 こうした中で、海上自衛隊は護衛艦「かが」「いかづち」と潜水艦「しょうりゅう」を10月9日から南中国海に投入し、米海軍の駆逐艦と合同訓練を行った。今や自衛隊は日本から遠く離れた南中国海やインド洋での他国軍との共同行動を日常化させている。すでに海自隊員の負担は限界を超えているといわれるが、米中軍事対立の最焦点であるこれらの海域で実際に衝突が起きれば、自衛隊は安保戦争法に基づき他国軍を「防護」するため、中国軍との殺し合いの戦闘を強いられることになる。
■菅政権の改憲・戦争に反撃を
 10月26日〜11月5日、日米共同実動演習「キーン・ソード」が実施され、海自護衛艦「かが」に米空軍のオスプレイが初めて着艦した。11月3〜6日には、日米豪印4カ国による共同訓練「マラバール」がインド沖のベンガル湾で行われた。豪軍の同訓練への参加は2007年以来13年ぶりとなる。
 中国との軍事衝突を想定したこれらの訓練と並行して、菅政権は年末までに新たなNSS(国家安全保障戦略)を策定し、「防衛計画の大綱」と「中期防衛力整備計画」の一部改定ももくろんでいる。焦点となるのは、「敵基地攻撃能力」の保有と自衛隊の任務の大幅拡大だ。米中の軍事的緊張が極限的に高まる中、自衛隊・米軍の一体化と軍事行動の拡大は一気に戦争の危機をつくりだし、自衛隊員や基地周辺住民の生活と命を今まで以上に脅かすことになる。
 トランプを打倒した米労働者階級と連帯し、今こそ改憲・戦争阻止の闘いを大きく広げよう。

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