香港 「報道の自由」つぶしを弾劾 右翼を擁護し記者を弾圧

週刊『前進』04頁(3171号02面04)(2020/11/23)


香港
 「報道の自由」つぶしを弾劾
 右翼を擁護し記者を弾圧

(写真 裁判所前で訴える弾圧当該の蔡玉玲氏と「真相を発掘するのが何の罪か」などのプラカードを掲げる支援者たち【11月10日 香港】)

放送労働者が決起

 香港の公共放送局・香港電台の人気報道番組の蔡玉玲ディレクターが11月3日に逮捕・起訴された。昨年7月21日に起きたデモ隊への白色テロ襲撃事件の取材での「違法行為」が容疑とされており、マスコミ労働者の怒りが広がっている。10日に行われた公判に労働組合は全力で支援に決起し、不当逮捕を弾劾した。
 昨年7月21日の逃亡犯条例改悪に反対する大規模デモ終了の直後、元朗駅で、解散するデモ隊や一般の歩行者に対して、突然現れた白シャツ集団が無差別襲撃・暴行を行った。この白シャツ集団の車のナンバーについて蔡玉玲氏は運輸署で申請して車主を調査し、その経緯を番組で報道した。その行為を警察は、「虚偽の申請で資料を得、その車主の資料を不当に使用した」として「道路交通条例」違反で逮捕・起訴したのである。
 だが「個人情報(プライバシー)条例」は、ニュース報道でのこのような調査をそもそも免責しており、基本法(香港の憲法にあたる)も報道の自由を認めている。この事件は、香港での従来の「思想・表現の自由」を一掃し、大衆デモと連帯して現場から報道を続けるマスコミ労働者と労働組合の闘いをつぶすための攻撃だ。国家安全維持法が成立した今年6月にはこの香港電台の人気風刺番組が放送終了に追い込まれ、8月には民主派のリンゴ日報の創業者・黎智英氏が逮捕され、現場の記者に対する逮捕も相次いでいる。
 逮捕当日の3日、ただちに香港のマスコミ団体と労働組合、8団体が連名で弾劾声明を発し、「多くのマスコミ団体と労働組合は、警察のめちゃくちゃで理不尽な行動に対して驚愕(きょうがく)と怒りを表明する」「事件の真相を追及するのはマスコミの天職であり、ナンバープレートの調査は記者の常用手段である。今回の警察が『道路交通条例』を乱用し、正常な取材を弾圧しているが、これは報道の自由をつぶし、沈黙を強いるものだ。警察は逮捕の根拠をただちに詳細に示せ! 無条件でただちに逮捕者を釈放しろ!」と要求した。
 さらに蔡玉玲氏の初公判が開かれた10日には、裁判所前に香港電台労働組合や香港電台労働者、民主活動家らが集まり、「頑張れ、蔡玉玲! 頑張れ、記者!」とシュプレヒコールをあげて政府に抗議し、ともに闘う決意を示した。
 蔡玉玲氏は入廷前に「事件は私一人の問題ではない。今後情報の自由が残るのかの問題だ」と語り、過去1週間の各界の支援・激励に感謝して「裁判は、一定の時間がかかるだろうが、一人で闘うのではないと感じている」と語った。

不屈の闘いが継続

 11月8日は、昨年のデモの最中に警察に追われて駐車場ビルから転落死したとされる科技大学学生の周梓楽氏の死から1周年で、現場に設けられた祭壇に数百人が追悼に集まり闘争の継続を誓った。集まった人々の中からは「光時(「香港に栄光を 今革命を」の略)」の声もあがり、警察は6人を処分したが、不屈の闘いが続いていることを示した。
 米中対立と経済危機に直面する中国政府は、「広州・香港・マカオ」大湾区構想を「一帯一路」政策の要をなす事業として位置づけ、香港をのみ込むことに必死になっている。そのために、香港の不屈の闘いをつぶし、民主派議員を議会から放逐し、経済も社会も一変させようとしている。だが、闘いはやむことはない。国際連帯を貫き、ともに勝利しよう!
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