焦点 ジョブ型雇用への転換 コロナに便乗し正社員一掃狙う

週刊『前進』04頁(3174号03面05)(2020/12/14)


焦点
 ジョブ型雇用への転換
 コロナに便乗し正社員一掃狙う


 年末年始に向けてコロナ感染はさらに爆発的に拡大し、大量解雇・雇い止めの攻撃が本格化しつつある。資本や国家権力と闘わなければ、労働者は生命も生活も維持できない。
 資本はコロナ下での大失業を脅しに使って、これまでの雇用のあり方を根本から破壊する攻撃に乗り出してきた。「ジョブ型雇用への転換」がそれだ。

業務がなければ即解雇

 ジョブ型雇用とは、労働者の職務範囲を限定し、賃金はその職務の達成度合いに応じて成果主義で支払うというものだ。それにより「労働者はより専門性を生かして働けるようになる」と資本は強弁する。だが、「職務範囲を限定する」とは、労働者が携わる業務がその企業からなくなれば即解雇ということだ。業務が外注化された場合も労働者は首を切られる。
 コロナで在宅勤務が広がる中、日立や富士通、NECなどの電機大手が、「テレワークとなじみがいい」と称して、正社員のジョブ型雇用への転換を打ち出した。通信大手KDDI(au)が約1万3千人の正社員全体をジョブ型にすると発表して、この動きは全産業に広がった。三井住友海上火災保険などの保険会社も、次々とジョブ型への転換を表明している。
 コロナ前から、「職務範囲を限定して」労働者を採用することは進められてきた。これはかつては「限定正社員」と言われた。名ばかり正社員としてしか労働者を雇わず、総非正規職化を進めるための攻撃だった。だが今は、残業代ゼロの「高度プロフェッショナル制度」の適用対象に想定されているような「幹部候補生」クラスが、真っ先に「ジョブ型雇用」=「限定正社員」に突き落とされようとしている。
 「働き方改革」で経団連など大資本が狙っていたことの核心は、正社員という存在をなくすことだった。それはコロナに便乗する形で、まさに貫徹されつつある。

JRが攻撃の先頭に

 この攻撃の先頭に立っているのがJR資本だ。JR東日本は昨年4月、正社員の象徴ともいえる「運転士」「車掌」という職名を廃止した。そして、今年9月には、いつでも労働者を休業させることができるとした就業規則の改悪を強行した。
 誰を休業させるかは、資本が勝手に決める。休業の期間も、1日から無期限まで、資本の都合でどうにでもなる。休業中の賃金は平均賃金の6割以上とされているだけで、具体的な額はその都度、資本が決める。しかも、休業指示は発令行為ではなく普通の勤務指定と同じ形でなされる。休業もシフトの一つに過ぎないと言わんばかりのやり方だ。
 今JRは、大幅コストカットを叫んで国鉄分割・民営化以来の大合理化に乗り出している。その結果、ある職場の業務がなくなれば、資本はその職場の労働者を無期限に休業させることもできる。まさに「ジョブ型雇用」「限定正社員」そのものだ。これほどの雇用破壊を、JRは「就業規則の改定」という形でやってのけた。JRが「労組なき社会」で狙っているのは、こういうことだ。
 このJR資本を先頭に、経団連は21春闘過程で大幅賃下げと雇用形態の大改悪を労働者に押し付けようとしている。コロナ下での解雇は生命の危機に直結する。これと対決し打ち破る21春闘に向けての攻防は、すでにこの年末から始まっている。
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