入管法改悪阻止の決戦へ これは階級的労働運動の課題だ

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週刊『前進』04頁(3178号03面01)(2021/01/18)


入管法改悪阻止の決戦へ
 これは階級的労働運動の課題だ


 世界を覆うコロナ・パンデミックは、新自由主義によって破壊されてきた現代社会の矛盾を暴き出した。その矛盾が、日本に暮らす外国人、とりわけ技能実習生や資格外活動で働く留学生を激しく直撃している。コロナ禍の今こそ、民族・国籍・国境をこえた階級的団結が求められている。

コロナ直撃で生存の危機

 2019年10月末時点で、日本で働く外国人労働者は過去最多の165万8804人となった。うち技能実習生は約38万4千人だが、19年末にはさらに増加し41万971人となった。このうちベトナム人が約22万人で最も多い。「地域に住む外国人のうち技能実習生が最も多い」というのは38道府県に上る。
 外国人技能実習制度が、日本の労働力不足を補う安価な単純労働力を確保するためのものであることは周知の事実だ。巨額の借金を背負って来日し、低賃金・長時間労働、残業代未払い、労働災害などに加えてパワハラ・セクハラ、「強制帰国」など、「現代の奴隷労働」として国際的な批判を浴びている。
 ここにコロナ禍が襲いかかった。厚生労働省によると、昨年コロナの影響で職場を追われた技能実習生は全国で4794人。さらに1週間に100人のペースで増え続けているというのだ。加えて、94人もの技能実習生が過酷な現実から「失踪」している。一方、昨年4月7日に緊急事態宣言が出され、法務省・出入国在留管理庁は、全国の入管収容施設のコロナ対策として「仮放免」を運用した。その結果、全国の入管収容施設での仮放免許可数は4月だけで563人に急増。3月末に1104人いた被収容者は8月には461人まで減ったが、11月4日時点で433人が仮放免されず長期収容されたままだ。
 しかし、仮放免されても就労は禁止され、仮放免者は健康保険がないため病院に行くこともできず、家賃を滞納するなど生存が脅かされる状態に至っている。
 昨年12月23日、埼玉県川口市の奥ノ木信夫市長が上川陽子法相に、仮放免者が就労が認められず困窮しているとして、仮放免者の就労を可能にする制度の創設を求める要望書を渡した。
 同市と蕨(わらび)市には、トルコ政府の迫害を逃れて来日したクルド人約2千人が住んでいるが、そのうち約600人が在留資格のない仮放免者だ。家族ぐるみの仮放免者も多く、子どもたちの人権も脅かされている。しかし、「仮放免」という非正規滞在のため、市はその実態を把握しきれていないというのだ。

対策と称し強制送還狙う

 福島第一原発事故をめぐって安倍が、状況は「アンダーコントロール」だと真っ赤なうそをついて招致した東京五輪の開催決定以降、治安管理強化として難民申請者や仮放免者など非正規滞在の外国人への弾圧が強められた。18年2月には当時の法務省入管局長が全国の入管収容施設に「原則、送還が可能となるまで収容を継続し送還に努めること」を指示。その結果、全国で被収容者の長期収容が激増、常態化した。
 19年には収容されている外国人たちのハンガーストライキが全国に広がり、長崎県の大村入国管理センター(大村入管)でナイジェリア人が「飢餓死」するに至った。対策を迫られた法務省は「収容・送還に関する専門部会」を設置。同部会は翌20年6月に「提言」を公表したが、収容開始・継続における司法判断も、収容期間に上限を設けることも見送った上で、新たな刑事罰創設をも含めた罰則強化によって非正規滞在の外国人を国外追放するというものだった。

外国人は「犯罪者」なのか

 菅政権は今年、この「提言」に基づく入管法の改悪を狙っている。
 これまでにリークされた改悪内容は以下の通りだ。
 ①難民認定申請手続きの審査中には強制送還されないとする規定(入管法61条の2の6)に例外を設け、難民申請を2回程度に制限するなどして「早期の送還を促す」。
 ②被退去強制者の送還忌避ないし拒否に対し「退去強制拒否罪」を創設する。これは、退去強制令書を発付されても帰れない深刻な事情を持った人々(子どもたちを含む)を「犯罪者」に仕立てるというのだ!
 ③仮放免逃亡罪の創設。 さらに、11月7日付朝日新聞は改悪案の概要として、④「『監理人』として認めた支援団体や弁護士、知人らの監督のもとで生活できる監理措置を創設」すると報じた。この「監理人」を選別するのは入管庁であり、「監理人」に選別された支援団体・支援者・弁護士なども入管庁の「監理」対象になる。外国人の生活状況などの定期的な報告義務を負わされ、逃亡罪などの「共謀」さえ問われかねない。
 これは、入管闘争を共に闘う者たちを分断・対立させ、被収容者・仮放免者を孤立させる階級分断攻撃そのものだ。
 2021年は入管法改悪阻止の決戦の年となった。南京大虐殺を否定する菅にとって、日本帝国主義の侵略戦争・植民地支配の継続である入管法・入管体制は最大の弱点だ。菅は、新自由主義が生み出した難民・移民労働者の存在と闘いに震え上がっている。入管法改悪阻止決戦は、菅政権を打倒できる決戦だ。階級的労働運動の不可欠の課題としてこの闘いに取り組もう。労働組合のもとに外国人労働者と団結してコロナ解雇に立ち向かうとともに、入管法改悪阻止の国会闘争に立ち上がろう!
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