フランス 警官の暴力を隠すな! 治安立法阻止へ闘い続く

週刊『前進』04頁(3178号03面03)(2021/01/18)


フランス
 警官の暴力を隠すな!
 治安立法阻止へ闘い続く

(写真 「包括的治安法」に反対するパリのデモでは「警官よ、お前の暴行は見られているぞ」と書いたプラカードが掲げられた)

 フランスで昨年11月以来、警察官の行動の撮影・報道を禁止する「包括的治安法」制定に反対し、パリをはじめ全国各地で数十万人規模の集会・デモが闘われている。新型コロナの感染拡大のなかでも闘いは年を越えて継続されている。
 同法案は11月24日、マクロン大統領率いる中道与党の議員立法として下院に提出された。右派や極右の野党が賛同、左派の社会党などの野党が反対するなかで可決されて上院へ送られ、年明けから審議が開始されることとなった。
 この法案は、「公務執行中の警察官を悪意をもって撮影しその映像を流布する行為は犯罪とみなされ、禁錮刑あるいは罰金などの厳罰に処する」という条項を含むほか、ドローンを使ったデモ参加者の顔面撮影や職務質問による人物の特定などを規定し、治安弾圧のエスカレートを狙うものだ。加えて、「分離主義反対」を掲げて国内のイスラム系人民への弾圧を強化する条項も含んでいる。
 マクロン政権は2017年の成立以来、労働法制改悪反対闘争、黄色いベスト運動などの大衆的戦闘的展開に直面し、警察権力の凶暴な行使によって弾圧を図ってきた。アメリカでは昨年、警官による黒人男性ジョージ・フロイド氏虐殺の動画がSNSで拡散されて全世界に憤激を巻き起こし、BLM運動の発端となった。同法案が、こうした動きに危機感を感じてつくられたことは明らかだ。
 下院での審議が開始された段階で、ジャーナリスト・報道関係労組をはじめとする労組、労組の全国組織、人権団体、黄色いベスト運動などが「この間の警官のデモ隊への暴行を隠し、報道の自由、情報を得る自由を侵害するもので、基本的人権の破壊だ」という抗議声明を発表。60団体を超える広範な勢力がこれに賛同し、「包括的治安法反対共闘会議」を結成した。

マクロンの排外主義攻撃に怒り

 その直後、マクロン政権への怒りの火に油を注ぐ二つの事態が発生した。
 一つは、11月21日、シリア出身の音楽プロデューサーであるミシェル・ゼクレール氏が職場に入ろうとしたところ、マスクを着用していなかったという口実で4人の警官に人種差別的な言葉を浴びせられ、殴る蹴るの暴行を受け、催涙ガスで攻撃された事件だ。一部始終は監視カメラに記録され、事情聴取で「拳銃を奪われそうになった」などと虚偽の陳述をした警官らは暴行と事実隠蔽(いんぺい)で起訴された。
 もう一つは、11月23日の深夜、警官隊がパリ共和国広場に設置されていたアフガニスタン難民キャンプを襲撃し、就寝中の500人に催涙ガスを浴びせかけ、警棒をふるい、寒空のもとにたたき出したことだ。難民たちはパリ近郊の避難所から追い出され、この日の夕方に急ごしらえのテントを張ったばかりだった。この5年間のパリ警視庁による難民キャンプの暴力的撤去は、これで65回目だ。

現場労働者先頭に全国で大デモ

 下院での法案採決を受けて、パリでは警視庁が市内デモを禁止したが、11月28日には条件付きで共和国広場に20万人が結集しデモをかちとった。リヨンやボルドーなど地方の主要都市でも、黄色いベスト運動の参加者数を上回る数千人規模の行動が行われた。従来にも増して凶暴に弾圧する警察に対して、デモ隊は「警察は誰のために仕事をしているんだ」などのプラカードを掲げて怒りをたたきつけた。
 闘いの爆発に恐怖したマクロンは11月30日、情勢の鎮静化を策動し、抗議の焦点となっている条文の撤回や再検討を指示し、「警官の暴力は遺憾」などとコメントを発表した。しかし、内相ダルマナンは暴力的弾圧を開き直っている。
 12月5日、マクロンの鎮静化策動にもかかわらず、全国100カ所近くで20万人が機動隊の弾圧と激突して集会・デモを継続した。
 3回目の抗議行動となった12月12日には、「共闘会議」は「デモ隊の安全が保障できない」「政府との対話を求める」としてパリでの集会・デモの「自粛」を決定した。しかし、「自由を抹殺し、イスラムを敵視する包括的治安法反対」というスローガンを掲げて現場組合員をはじめ参加諸団体・グループの1万人が結集し、共和国保安機動隊と機動憲兵隊を前面に出した3千人の弾圧部隊と対決した。同日、十以上の都市で計6万人が警官隊の攻撃と対決して闘い抜いた。
 コロナ下で激化する弾圧に立ち向かうフランスの労働者民衆と連帯し闘おう。
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