北海道の「医療崩壊」 元凶はGoTo進めた菅

週刊『前進』04頁(3179号02面02)(2021/01/25)


北海道の「医療崩壊」
 元凶はGoTo進めた菅


 「医療従事者は疲弊の極みに達している」「医療崩壊を実感している」——これは昨年12月14日、初の医療緊急事態宣言の発表にあたっての記者会見で、道医師会会長が述べた言葉だ。
 札幌市・旭川市を中心に発生したクラスターは旭川厚生病院310人、吉田病院(旭川市)215人、田中メディカル札幌田中病院272人(1月4日現在)など国内最大級の規模に拡大し、さらに範囲を広げた。Go Toキャンペーンが感染を拡大させたことは誰の目にも明らかだ。
 しかし、過去最大の防衛予算を計上しながら、いまだ現場には医療資材すら満足に供給されていない。福祉作業所で働く仲間は「感染拡大から1年近く経っているにもかかわらず、すべてが現場任せだ」と怒りの声を上げている。
 菅政権には人々の命と生活を守る意志も力もない。金もうけがすべての資本主義は、もはや社会全体を発展させるどころか、労働者を生かすこともできない。
 「医療は社会保障だ」を掲げストライキに立ち上がった医療労働者の闘いに続こう!

救急対応が危機的

 北海道で今、何が起きているか。
 医療機関で連続して発生した国内最大級のクラスターによって、コロナ患者向けの病床使用率は11月中旬以降、7割の高止まりが続き、各病院が機能不全に陥った。文字通りの「医療崩壊」である。
 旭川では厚生病院のクラスター発生によって、1日約1千人の外来患者が他病院に回されることになり、ドミノ倒しのように各病院で人手が足りなくなった。同院は五つの病院で輪番で行っていた夜間・救急対応からはずれることになり、旭川を中心とする医療圏において救急医療が危機的状況に陥った。さらに同院と赤十字病院が分娩(ぶんべん)を休止することで、2回の転院を強いられた妊婦も約30人出たという。
 医療崩壊は救急と周産期という人間の命に最も関わる部分を直撃した。そしてそれ以上に、現場でコロナに立ち向かう医療労働者の存在に肉薄しなければならない。道医労連の調査では加入する35施設中、16施設で今冬の一時金がカットされている。この仕打ちの中で、医療労働者からは「使命感だけではもう限界」と叫びが発せられている。
 12月18日付朝日新聞・道内版は現場の声も盛り込みながら以下のように報道している。
 「いかに感染者を出さないかが最優先になってしまった。患者さんの気持ちを第一に考えられなくなってしまっている」
 病院の備品も不足し、大部屋は今もカーテンで仕切った程度しか感染対策がとられていない。院内感染の不安にかられながらの業務だ。心身の疲弊でモチベーションを維持するのも難しい。
 看護師は仕事に誇りと使命感をもっているが、最近は看護師だと分かった相手が急にマスクをしたり、距離をとったりすることがあるという。「今は自信をもって『私は看護師』と言えない。それがつらい」
 また全道庁労連の機関紙に掲載された衛生医療労働者意見交換会では、保健所の労働者から次のような危機感と怒りが出された。
 「保健師の疲弊は深刻。夜中にも連絡が来る。病院や消防は交代勤務で24時間体制であるが、保健所はそのような体制はない。十分な休息が必要だが、心身ともに休まらない。このままでは保健師を中心に離職が危ぶまれるため、なんとかしなくてはならない」

「医療過疎」の現実

 北海道における医療崩壊は今に始まったことではない。新自由主義と「選択と集中」による地方崩壊、その下での「医療過疎」と呼ばれる現実が生み出されていた。
 北海道の179自治体のうち病院があるのは111自治体。無医地区は地区数でも居住人口でも全国1位となっている。地域に一つしか有床病院がないという自治体もある。
 また人員不足問題も顕在化していた。人口10万人あたりの医師数は3・6人と全国平均を下回り、その格差は2倍となっている(2018年厚労省)。また医師を除く10万人あたりの医療従事者数は全国平均を上回っているが、地域偏在があるとともに、病床100床あたりで比較すると全国平均を15・7人下回っている(14年12月道調べ)。

公的病院つぶすな

 以上述べた現実に対し、いくつかの闘いの方向性を述べたい。
 第一に、都立病院独法化阻止を自らの課題とするとともに、公立・公的病院440病院の再編・統合を阻止することだ。北海道は全国最多の54医療機関が対象で、必要病床数は約1万床削減されようとしている。
 第二に、東京五輪開催によるコロナ感染拡大は必至だ。われわれは東京五輪、さらにマラソン・競歩の札幌開催に絶対反対を貫く。
 第三に、今回述べた医療崩壊問題は本紙3170号で報告した「北海道崩壊の現実」とからみあいながら新自由主義・資本主義の問題、すなわち社会体制の問題へと必ず行き着く。
 私たちは今、一つひとつの職場や社会問題を解決するためにも、社会全体の根本的変革を必要とするような地点に立っている。労働組合はそれを成し遂げる力をもっている。
 北の大地において〈コロナ×大恐慌〉に立ち向かう無数の労働組合を組織していこう!
〔革共同北海道地方委員会〕
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