デジタル監視法案を廃案へ 国家が全個人情報を管理 監視社会化とGAFA型企業育成

週刊『前進』04頁(3186号02面01)(2021/03/15)


デジタル監視法案を廃案へ
 国家が全個人情報を管理
 監視社会化とGAFA型企業育成

(写真 国会前でデジタル監視法案の審議入りに抗議【3月9日】)

(写真  3月2日夜、東京・亀戸文化センターで現代の治安維持法と闘う会主催で「デジタル関連法案の狙いを暴く」集会が開かれた。同会呼びかけ人の山本志都弁護士が「国民総監視社会を実現させないために―デジタル庁構想の狙い」と題して攻撃を全面的に暴露した。参加した自治体労働者からマイナンバー制度をめぐる職場の実態と闘いの決意が語られた。)


 3月9日、デジタル監視社会化を狙うデジタル改革関連6法案のうち、5法案につき衆議院本会議で趣旨説明と質疑が行われ審議入りした。これに対し国会前ではデジタル監視法案廃案を求める集会が闘われた。法律家の反対意見も続出している。自治体・教育・医療の労働者にとってデジタル監視法は職場のあり方を一変させる攻撃だ。職場からの決起で国会闘争に立ち、廃案に追い込もう。

追い詰められた菅が審議入りを強行

 例年は参議院で予算案が成立してから他の法案の審議に入るのが通例だが、2日に衆議院で予算案が可決された1週間後にデジタル監視法案を審議入りさせる強引さは際立っている。
 これは菅の長男の総務省違法接待問題にとどまらず、NTTの違法接待などが次々に暴露され、海外観客の受け入れもできない東京オリンピックの破産状態、さらにコロナ対応への労働者人民の怒りに追い詰められた菅政権の焦りを示すものだ。
 それは法案の資料に誤記が45カ所も見つかるというお粗末さに端的に表れている。いかに拙速に法案を準備したかということだ。国会闘争を爆発させ実質審議に持ち込めば、廃案に追い込むことは絶対に可能だ。

個人データの保護から利活用へ転換

 デジタル監視法案の内容は、本紙ですでに2度にわたり暴露した(2月1日付第3180号、2月22日付第3183号)。さらに、闘いを通して明らかになった反動性を指摘したい。
 最大の問題は法案の分量の膨大さだ。6法案を合計すると576㌻にもなる(表参照)。最大のものは「整備に関する法律案」で、これだけで364㌻にもなる。これは約60本もの法律を一気に変更する悪名高い一括法案だからだ。
 デジタル監視法にはらまれる多岐にわたる問題を、どさくさ紛れで国家改造的に一気に突破しようというのだ。まさにコロナ下のショックドクトリンだ。
 デジタル監視法案の最大の問題は、個人データについての扱いが一変することだ。個人データは今まではいかに「保護」するかが焦点だったが、それをいかに「利活用」するかに原理的に転換される。
 なぜ今までは個人のデータ保護が課題になってきたのか。個人データの中にはその人の弱みも含めた個人のありようが全て含まれているからだ。個人データを保護することはすなわちその人個人を尊重することを意味する。
 では、それを転換することは、一体何を意味するのか。それは「すべて国民は個人として尊重される」という戦後憲法の建前も吹っ飛ばして、労働者人民を国家と資本が管理し利用し尽くす対象に陥れるということだ。これこそ改憲・戦争攻撃そのものである。
 事実、デジタル監視法で狙っているのは、医療・教育情報を含む個人の生涯にわたる全情報の一元管理である。国家による究極の監視社会化を実現するとともに、デジタル時代の「金のなる木」である個人情報を民間資本に明け渡し、日本にもGAFAのようなデジタル企業を育成する。こうして他帝国主義との争闘戦での敗勢を取り戻そうということなのだ。
 世界の帝国主義の争闘戦でデジタル化に圧倒的に立ち後れた日帝は、巻き返しをかけて、国のあり方を転換しようとしているのだ。
 このデータの利活用への転換によって、マイナンバー制度は「名寄せ」と称するさまざまな個人情報をかき集めるツールとなる。マイナンバー制度の本来の狙いが、住民総背番号制度と監視社会化にあることがあらわになろうとしている。
 さらに、自治体の個人情報保護条例と国の三つの個人情報保護法を一本化することで、地方自治体の個人情報保護の闘いの歴史を否定し、国が一括管理する。これは地域住民と自治体労働者が闘いを通して守ってきた地方自治を、事実上壊滅させるものだ。

監視法案の粉砕は労働運動の課題だ

 3月から医療のデジタル化と称して、マイナンバーカードを健康保険証としても使えるという攻撃が始まっている。これは患者の情報についての医療労働者の守秘義務など吹っ飛ばして、医療情報を全国の行政機関と医療機関で共有し「利活用」するという、デジタル監視法の一部を先取りするものだ。
 さらに現在各省庁や地方自治体でばらばらのコンピュータシステムの統合がデジタル監視法に明記されているが、その受け皿としてAWS(アマゾンウェブサービス)が「第2期政府共通プラットフォーム」として昨年10月に稼働を始めているのだ。
 デジタル監視法案は、自治体、教育、医療の労働者にとって、自らが闘いを通して守り通してきた職場のあり方を一変させる内容をはらんでいる。それゆえ、デジタル監視法案粉砕の闘いは労働運動の正面課題そのものだ。法案廃止の闘いに職場から総決起しよう。

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デジタル監視法案
(最初の5本が9日に審議入り)

■デジタル社会形成基本法案(24㌻)
 IT基本法を廃止。基本原則記述
■デジタル庁設置法案(64㌻)
 首相直轄の強い権限を持つ庁を設置
■デジタル社会形成関係整備法案(364㌻)
 約60本もの法を一括改悪。自治体の個人情報保護を一本化など
■公的給付支給預貯金口座登録法案(84㌻)
 スマホ等で給付の口座登録が可能に
■個人番号利用預貯金口座管理法案(29㌻)
 複数の預貯金口座をマイナンバーにひも付け
 (災害時の利便性を口実に全財産を国が完全に掌握)
■地方公共団体情報システム標準化法案(11㌻)
 地方自治体のコンピュータシステムをAWSに一本化する

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