デジタル監視法案採決阻止を 3月中に衆院通過狙う暴挙

週刊『前進』04頁(3187号04面01)(2021/03/22)


デジタル監視法案採決阻止を
 3月中に衆院通過狙う暴挙


 3月10日、デジタル監視6法案のうち、5法案の審議が衆議院内閣委員会で始まった。立憲民主党の屈服で拙速審議が進行し、18日には参考人質疑を強行、3月中の衆議院通過を狙っている。絶対許すな。

転職の「自由」までも奪う

 菅政権は2月9日にデジタル監視法案を閣議決定し国会に提出した。これは政権が看板政策として掲げた法案だ。しかし法案提出後、参考資料に45カ所もの間違いが見つかったばかりか、正誤表まで間違うというあまりにもお粗末な事態となった。
 にもかかわらず、菅は3月中に衆院を通過させ早期に成立させることを狙っている。ずさんででたらめきわまりないが、事実上の改憲・国家改造をも意味する重大法案を、コロナ禍を奇貨としてショックドクトリン的に押し通そうとする狙いは何か。
 60本もの法案を一括で変更するデジタル社会形成関係整備法案には「従業員本人の同意があった場合における転職時等の使用者間での特定個人情報の提供を可能とする」という条項をマイナンバー法に付け加える条項がある。
 これは「労組なき社会」にすることで労働者を虫けらのようにこき使って解雇自由を狙う日本経団連の強い要望で付け加えられたと言われている。「本人同意」を要件とするなどというが、転職時の面接で本人同意を拒否することなどできるわけがない。拒否すればその段階で即不採用になる。
 こんなことがまかり通れば、労働者は転職しても前職の評価や勤務態度、さらには労働組合の活動歴までもが転職先の資本に丸ごと知られる。これは労働者が離職することすら不可能にするものであり、労働者の職業選択の自由、転職の自由すら奪うものだ。
 デジタル監視法案は、コロナ禍で追い詰められた労働者の必死の反撃に恐怖する国家権力と資本が監視国家化で延命しようという焦りに満ちた攻撃である。労働者が団結して反撃すれば必ず粉砕できる。
 本紙3183号、3186号などで暴露してきたようにデジタル監視法案は、自治体・教育・医療の現場で働く労働者の労働環境を一変させ、働くことの意味を根底から問い直させる大攻撃である。まさに労働組合運動の正面課題だ。

メール傍受居直る防衛省

 デジタル監視法案が監視国家化を狙うものであることが審議の過程で完全に明らかになった。
 野党の議員が中山泰秀防衛副大臣に「インターネットのメールの情報は見てないですね」と質問した。これに対して中山は「インターネット上のメール傍受を含め一般市民の監視を行っているものではない」と答えた。野党議員が「一般ではない市民はどうか」とたたみかけると、「情報公開が基本だが、それが国家的なリスクになる場合、この部分は差し控える場合もある」と答弁を拒否した。つまり、彼らが「一般ではない」と判断した人物についてはメールの傍受を行っていると認めたのだ。
 アメリカ国家安全保障局(NSA)および中央情報局(CIA)の元職員、スノーデン氏の告発でも「NSAは防衛省情報本部電波部に公使を派遣する。公使には以前提供した(スパイのグーグルと呼ばれている)エックスキースコアというソフトウェアを使っていろいろ講習をする」「内閣情報調査室のトップ北村滋内閣情報官(現在は国家安全保障局長)がネット諜報(ちょうほう)についてディスカッションするためにNSAにやってきた」などという記述がある。
 これが現実なのだ。デジタル監視法で全住民のあらゆる情報がマイナンバーにひも付けされることで、内閣情報調査室をトップとする警察庁、公安調査庁、外務省、防衛省電波部からなる日本の諜報機関がクリック一つで全住民の生涯にわたる全情報を合法的に取得できるようになる。これを仕切るのが公安警察出身で菅首相直属の杉田和博官房副長官であり北村だ。彼らは日本版エックスキースコアを作り上げようとしているのだ。
 デジタル監視法案は労働者階級人民にとって断じて許せない大攻撃だ。職場での討論を巻き起こし、3月衆議院通過を絶対に阻止しよう。
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